「浪川透夜」
――私が物心つく頃には既に、
母親は病気で他界していた。
父と二人暮らしだったが、
私の学費を稼ぐために父は必死に仕事をしていたため、
私はよく祖父母の家に預けられていた。
そこに彼がいた。
今は亡き、「浪川透夜」だ。
小学校に入学するくらいからの
付き合いでよく遊んでいたよ、
幼なじみと言える仲だった。
彼はとても心優しくて、
穏やかで温厚な性格をしていたよ。
私ともすぐに打ち解けて、笑顔で接してくれた。
だが、打たれ弱いところもあって、
私が彼を励ますこともあったんだ。
彼が私の言葉で元気になるのがとても嬉しかった。
彼の傍にいるのがいつしか当たり前になっていたよ。
それから中学生になる頃、身長が伸びて、
顔立ちも引き締まってきたせいか、彼がモテ始めた。
中身を知っている私としては、
些か不思議だったがな。
でも、放っておけない存在だった。
そうやって過ごしてきたせいか、
彼は他の女子とはあまり親しくなろうとせず、
いつも私や男友達といた。
そして中学生の途中で、父も他界した。
私にお金を沢山残すために過労死してしまった。
私は父親を亡くし、
今度こそ祖父母の家に引き取られた。
そのときも彼は私の傍に居てくれて、
ずっと励ましてくれたよ。
でもその頃の彼は心が弱くて、
ストレスのせいで体調を崩していたりもした。
彼を助けたいと思い、
私はカウンセラーを目指すようになった。
だが、彼は自分のことよりも私のことを優先して、
私の世話ばかり焼いていた。
これ以上、無理はさせられないと、
奮起して言ったんだ。




