恐れ続けていたあの件に
高校二年生の秋ともなると、
真剣に自分の進路について考えなくてはならない。
参考までに、紫苑や浩輔に訊いてみた。
「俺は建築士系の大学かな」
「なんか、紫苑っぽいね。浩輔は?」
「俺は、教師になりたいから、
大学の教育学部に行って、教員免許を取ろうと思ってる」
思っていたより、
二人ともしっかりした考えを持っていて、
僕だけが未定だった。
僕は何をしたいんだろう。
言い訳なんてしていてはダメだと思うけれど、
あの日以来、
何かに執着するということが分からなくなった。
恐れ続けていたあの件に、
足を踏み入れなくてはならなくなってきた。
このままでは僕はずっと、
後ろを向いてしか歩けなくなる。
ただ僕は忘れることが怖くて、
真相を確かめることから逃げ続けていたから。
目の前にあるそれから目を逸らしては、
知らないフリを決め込んでいたけど、もう限界だよ。
彼女からすれば、
唐突に爆弾を投下された気分だっただろう。
僕は「心の種」の世話をしながら、
突然成長したそれを理由に
「心の種」の由縁について聞き出そうと目論んだ。
ずっと触れられずにいた「種」の秘密を、
今の縁さんと僕の仲なら、
教えてくれる気がしたんだ。
今までは、彼女を傷つけてしまうと思って、訊けなかった。
相手の過去に触れるのは、
未知に介入するということでもあり、
ただでは済まされないし、
覚悟もなく容易に踏み入れていいものではない。
どんな事実だとしても受け止める覚悟が必要だ。
どんなに辛く、受け入れ難いものでも。
彼女の言葉が僕の心に響いたのは、現実味を帯びて、
感情を持ち合わせていたからだと思う。
それはまるで経験談のように自然で、説得力があったから。
「『心の種』ってどうやって、
誰に作られたものなんですか?」
僕の不純な問いに対して彼女はこんな表情を見せた。
「そう、だな。
君には話しておくべきだったのにな。
君に訊かれるまで話せないなんて、本当に情けない」




