「それは見れば分かるさ」
由野さんの一挙一動に、僕と田所さんの視線が集中する。
「まず、佐藤は彼女の死を
クレープ屋の店長から聞いたという。
だが、たかが客の一人に
そんな事を教えるとは到底思えない。
ならばどうして教えてくれたのか。
答えは簡単だ、
深山氏本人が店長に佐藤を親しい相手だと話していたんだ」
「え、そんな……」
ショックと喜びが入り混じり、驚きを隠せない僕に反して、
田所さんは冷ややかに由野さんを見つめていた。
「そして、深山氏の訃報に接した佐藤は
線香を上げさせてほしいと頼んだそうだ。
それを聞いた店長はさほど迷うこともなく、
彼にあなたと深山氏が
同棲していた住所を教えたという。
この話から察するに、店長は深山氏が、
佐藤とあなたを会わせようとしていたことを
知っていたのではないだろうか。
それとこれは憶測だが、
店長は深山氏の生前に佐藤宛の
何かがあることを聞かされていたのではないかな」
「……そんなことより、
さゆりの死について教えてくれるんでしょう。
早くしてください」
彼の目には怒りよりも焦りが滲み出ていた。
秘められた激情を言葉で隠さんとしているようだった。
「そう慌てるな
――ではここで視点人物の切り替えだ。
あなたは家にやってきた佐藤を見て、驚いたはずだ。
彼女からそんな存在を
聞かされてはいなかっただろうからね。
しかしその少年は彼女の勤め先から訃報を聞かされ、
住所まで教えてもらったという。
普通ならば疑うだろう。
しかしあなたの元には
少年が嘘を吐いていないという証拠があった。
それは何か――見せていただけるかな、
佐藤宛のクレープのレシピを」
「え、クレープ……?
どうしてレシピなんかを……」
彼は由野さんが
お姉さんの死を解明できると信用したのか、
大人しく彼女にノートを手渡した。
「それは見れば分かるさ」




