「ーーでは、紐解こう」
田所さんの部屋は八階の角部屋だった。
線香を上げに行ったときは、
お姉さんが育てていたであろう
ハーブのプランターが入り口を彩っていた。
死という重い気持ちを抱えていたのに、
ハーブ特有の清涼感ある香りにお姉さんを感じて、
泣いてしまったのを覚えている。
けれどエレベーターに乗って、
彼の部屋の前に着いてもハーブの匂いはしなかった。
あるのは枯れ葉のように朽ちた
何かが植わっているプランターだけ。
育てられないくらいなら捨ててしまえばいいのに。
「佐藤、何してる」
感傷に浸るのも束の間で、
気を取り直してインターホンを鳴らすと、
さきほどの押し問答が
嘘のように間髪入れずに扉が開いた。
「……どうぞ、上がってください」
まだ二十代であるはずなのに、
目の前にいる彼はとてもそうは見えない。
憔悴しきっていて頬もこけて、
まるで廃人のようだった。
歓迎の雰囲気はない。
それよりも、
家に上げる代わりに真相とやらを解明しろよ?
と脅迫的な眼をしていた。
「ああ」
しかし由野さんは別段気にする様子もなく、
ずかずかと上がり込んでいく。
僕もそれに倣う他なかった。
「コーヒーと紅茶、どっちがいいですか?」
「必要ないよ。
あなたも私たちも、
とっとと事を終わらせたいと思っているだろうからね」
由野さんの歯に衣着せぬ物言いに
渋面を浮かべる彼だったが、
いがみ合っていても仕方ないと諦めたのか、
はーっと溜息を吐いた。
それを肯定と取った由野さんは
胸元から水色の小瓶を取り出し、それを胸に当てる。
小瓶の中ではビー玉のようなまあるい種、
「心の種」が自分の出番を待ち望んでいた。
「――では、深山さゆりの死を紐解こうじゃないか。
彼女の死から順を追って話すのもいいが、
ここは佐藤の視点から物語を語らせてもらうとしよう」




