表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の海馬を君に贈りたい  作者: ハイドランジア&シーク
【第四種「ミントの種」―死にたがりのパラドックス―】
128/172

「彼女のことを、もう思い出したくないんだ」


 お姉さんが亡くなったのは一年以上前のことで、

 あんなことがあったからもう引っ越していても

 おかしくはないだろうと思ったけれど、

 彼はまだそこに住んでいた。


「……ここか」


 最寄り駅から徒歩三分程度に位置する

 十五階建てマンション。


 オートロック式で築年数は五年ほどとまだ新しく、

 赤色でレンガ調の外壁がオシャレで家賃も高そうに見える。


 彼はどんな気持ちで今もここに住み続けているのだろう?


 アポイントも取らずに、

 しかも元婚約者と親しかっただけの一少年と

 その連れが押しかけては失礼に当たるはずだ。


 けれど由野さんは戸惑う素振りすら見せず、

「婚約者の部屋番号は?」とぶっきらぼうに言ってくる。


 ここまで連れてきておいて、鳴らさないのも収まりが悪く、

 僕は渋々彼の部屋番号を入力し、呼び鈴を鳴らした。


 二、三度鳴らしてようやくだろうか。


「……どちら様ですか?」


 寝起きさながらに気怠い男性の声が聞こえる。


 疲れは感じるが、確かに彼のものだった。


「田所さんの元婚約者の深山さゆりさんの

 お線香を上げさせていただきました、佐藤昇汰です」


「…………帰ってください。


 彼女のことを、もう思い出したくないんだ」


 彼の拒絶を受けて、僕は内心胸を撫で下ろした。


 自分が納得するためだけに、

 残された人の心を踏み荒らす真似はしたくないと思っていたから。


 しかし由野さんは彼の返事を受けて、

 我慢できないと言わんばかりに僕を押しのけ、

 インターホンの正面に陣取った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ