「私とて例外ではない」
「そんな……それでも僕は――」
「分かっているよ。
それでも人は死を悼まずにはいられない生き物だ。
私とて例外ではない。
だからこそ、
君が彼女の死を悼むのも嘘じゃないと判るし、
残された者が死を暴く権利だってあるのさ。
それが私たちに残された唯一の救いだからね」
氷柱のように冷たい言葉の後にかけられた
それはほろ苦いホットチョコレートのようで、
涙腺が緩みかけている僕はまた泣きそうになっていた。
「由野さん……」
「さ、佐藤……こんなことぐらいで泣くな。
話を続けづらくなるじゃないか――こほん。
最後にずっと気になっていたことを訊こうか。
なあ佐藤、どうして彼女の婚約者とやらは
お前に彼女の死に様や、
ご丁寧に遺書の内容まで教えてくれたんだ?」
「え、それは……
お姉さんが婚約者さんに僕の話をしてくれていたんじゃあ……」
「クレープ屋でバイトしているときに
懐いてくれる男子中学生がいるということをか?
そんなことをわざわざ話すわけもないだろうし、
万が一話していたところで、たかが、
懐いていただけの相手に詳細まで教えるだろうか?」
「うっ、それはそうですけど……」
僕とお姉さんとの関係は
言葉にすれば泡沫のようにあやふやで脆い。
だけど、
それをたかが呼ばわりされるのはショックだった。
「それにだ、佐藤。
君はどうして婚約者に会うことができた?
本来ならば、なんの関係性もない二人だろう」
僕の心を見透かし、
舐めるように訝しむ由野さんの目が痛い。
「ス、ストーカーとかしてないですからね!
クレープ屋に行って、
お姉さんの姿が見えなかったので訊いてみたら、
店長さんから彼女は亡くなった
と教えてもらったんです。
僕が、お世話になったので
お線香だけでも上げさせてほしいとお願いしたら、
住所も教えてもらえたんです。
本当ですよ~、信じてくださいー!」
由野さんの手を握ってぶんぶんと振り回す僕に、
彼女は困ったように身を仰け反らせ、
「いや……
君のようなヘタレ男がストーカーなどしていないとして、
その店長の個人情報の取り扱い方を疑わざるを得ないな。
今時、本人のいないところで本人の許可なく
住所など教えたりするものか…………いや、待て。
私は本当に、
君へ失礼なことを言ってしまったのかもしれない」
「どういうことですか?」
いまいち彼女の思考が読めず、僕は首を傾げる。
「行けば分かる。
とりあえず私をその婚約者の下へ案内するんだ」
そう言うと、彼女はギャルソンを豪快に脱ぎ捨てて、
ジャケットを手に取った。




