「ーーだからどうか、教えてください」
「……理由が分かるんですか?」
「いいや。
私に分かるのは君が知る彼女だけだ」
「それなら放っておいてください。
どうせ、お姉さんはもう……」
戻らない。
その言葉を遮るように由野さんは
カウンターから身を乗り出して、
「――ただね、君が知る彼女には
どうしても君の主観が入ってしまう。
こうであってほしくないだとか、
こうあってほしいだとかいう私情なんかがね。
しかし私には彼女に対する先入観が少ない。
その分だけ、第三者視点で
事実から隠された答えを推測できるのかもしれない。
それでもいいなら、聴かせてくれるかい?
彼女の詳しい話を」
優しいのに甘くない答えを聞かせてくれた。
苦くはないけれど、
茶漉しに残った残り滓のような真実を、
爽やかに鼻腔を通り抜ける
ハーブティーのように暴かんとして。
これだから由野さんから離れられないのだ。
僕は未だに甘い物は好きではないけれど、
彼女の作るものなら食べたいと思う。
それと同じように、
彼女が暴いた答えならどんなに苦くて辛くても、
受け容れられるような気がするから。
「……はい。
憶測で構いません。
由野さんの出した答えなら、
受け止められると思いますから
――だからどうか、教えてください。
お姉さんがどうして死を選んだのか」
お姉さんにとって、僕が些末な存在だったとしても、
僕にとっては光だったから。




