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「どうしてお姉さんはーー」
「そ、それにだ。
そんなにクレープ屋のお姉さんとやらに
思い入れがあるなら、
また食べに行けばいいだけじゃないか。
なんなら私が奢ってやろう。な?」
いつも冷静でミステリアスな由野さんが、
こんなにおろおろしながら
励ましてくれているというのは珍しい。
普段ならこういう由野さんの不器用な優しさに絆されて、
元気になれていたかもしれない。
だけどこれだけは、
お姉さんのことに関しては、笑えるわけがなかった。
喉の奥から熱が込み上げてきて、
消毒アルコールが鼻孔を突き抜けるように鼻が痛む。
「…………救われていたっていうなら、
恩返しができていたっていうならどうして、」
目頭の水分がぐらぐらと煮えだして
視界が揺らいだかと思うと、
由野さんが険しい顔つきになっていた。
「おい、佐藤もしかして……」
「どうしてお姉さんはもういないんですか、
自殺してしまったんですか、
あんな期待させるようなことを言っておいて
消えてしまったんですか……」
僕はカウンターを頭で強く打ち付けて、慟哭した。
「うぁぁあぁああ!!!」
何度も打ち付けるうちに
額が腫れてきたのが分かったけれど、
それでも一度溢れ出した感情は収まりそうになかった。
「……佐藤」
由野さんはそんな僕の肩を掴んで、
自傷行為を止めさせようとした。




