「私は、罪滅ぼしのため」
帰り際、二人に祝福の言葉をかけ、
彼女はご祝儀を、僕は粉末だしセットを手渡した。
中身が見える包装になっていて、
それを見た二人は大層喜んでくれた。
出汁はある意味、二人を繋ぐきっかけだったから、と。
帰り道、由野さんは祝福のブーケを抱えながら、
複雑な表情を浮かべていた。
「どうしたんですか、由野さん。
ブーケトス取れたのに、嬉しくないんですか?
幸せの兆しですよ?」
「いや、そんなことはないが、
ただ、私なんかが幸せになってもいいのかと思ってな」
ニカッと白い歯を見せて笑う彼女だったけれど、
上手く笑えていなかった。
だから、僕は溜まらず、こんな質問を投げかけたんだ。
「どうして、由野さんは色んな人を救っているのに、
幸せになっちゃいけないんですか」
疑問形よりももっと、重くのし掛かる思いからだった。
「私はね、自分のやっていることを
善行だと思っているわけではないんだよ。
あくまでエゴだと自覚してやっていることなんだ。
決して他人のためなんかじゃない、自分のためだ。
そこをわきまえないと、
全ては狂ってしまうんだよ、全て、ね」
ククッと高笑い気味に彼女は声を上げて笑う。
全然答えになっていないのに、
何かを教えてくれているような気がした。
「つまりそれは、
由野さんがしたいようにしている、ということですか?」
しかし、僕の問いに彼女は首を振る。
「いや……そうではないんだよ。
私の場合は、エゴでやっていることではあるが、
やりたいことをやりたいようにやっている、
というのとも違っていてね。
私は、罪滅ぼしのためにやっているのだから――」
彼女はそう言うと、俯いたまま、
矛盾しているかもしれないがね。
と、呟くように、嘆いていた。
そして、本来の質問に対する
答えを思い出したかのように、答えてくれて。




