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僕の海馬を君に贈りたい  作者: ハイドランジア&シーク
【第三種「受容の種」―自分を受け入れる―】
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クリスマス・イヴ

 それから季節は巡り、世間はクリスマス・イヴ。


 さらに、凍てつくような外気にさらされた屋外では、

 カップルたちが人目も憚らず愛し合い、

 互いの愛を確かめ合っている。


 近所にホテル街がなくて、

 本当によかったと思う一番の季節だ。


 今夜は雪が降り積もりそうだけれど、

 だからと言って、はしゃぐような年頃でもない。


 寧ろ、バイトの後、自転車で帰られるかなぁ、

 はあぁ、という気持ちになる。


 ここまで言えば、言わずもがなであるが、

 僕は今日も明日もバイトだ。


 カップルたちを羨む気持ちはないでもないが、

 今日ぐらいはそれをめでたく思える。


 クリスマス限定メニューに加え、

 今日は予約で埋まっているんだ。


 商売熱心な由野さんにとってのクリスマスは

 書き入れ時でしかないように見える。


 僕はクリスマスの熱に浮かされる単純な奴だから、

 由野さんにクリスマスプレゼントを買ってしまっていた。


 おとなしめのベージュマフラー、

 羽織ったり、毛布にもできるという優れものだ。


 ただのバイトと雇い主なのに、

 こんなものを渡すのは少々気が引けてしまうけれど、

 それだけではない関係に変わりつつある日々。


 まあ、と言っても、ほんの僅かな変化でしかない。


 満員な店内に賑やかな笑い声と、

 せかせかと動き回る僕らの足音と共に時は流れていく。


 ようやく一息吐けるようになった頃には、

 八時半になっていて、

 ラストオーダーを締め切り終えたところだった。


 今日は明日の仕込みもあり、店を九時に閉める予定だ。


 少しずつ、店内は静かになり、

 八時五十分にはもう客は全員帰ってしまっていた。


 これなら九時半には片付けを終えられそうだ。


 今日は、盛況だったため、まだ夕食を摂っていない。


 空腹を通り越した僕のお腹は、

 何も文句を言わなくなっていた。


 店も閉め、後片付けも終えた九時半、

 着替えを済ませた僕に、由野さんは唐突に尋ねてきた。





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