恋をしたら、
「別に紹介してもいいけど、
多分、彼氏にはなってくれないと思うよ」
と悪戯っぽく、微笑んでみせる。
多分、なんて確率ではないけれど、
僕は冗談混じりにそう言ってみた。
彼女たちは不満げに駄々をこねて、理由を要求してくる。
「ええー、どうしてー?
付き合ってる人とか、好きな人いるの?」
「それとも、年下好みじゃないとか?」
僕はにっこり笑顔で言葉を吐いた。
「んー、内緒。
本人に訊いてみたら、すぐに分かることだけどね」
僕がこんなにも意地悪で優しい教え方をするのは、
今、僕の機嫌が頗るいいからで、
この秘密を独り占めしたいからだろうね。
そこに、得も言われぬ優越と特別を感じるんだ。
今すぐにでも彼女を追いかけたい気分だけれど、
それは仕事中のためにできない。
休憩はもう暫く先のことだ。
それに、このことについて言及するのは、
明日のバイト時の方が楽しそうだね。
五日ぶりに会う彼女は、
どんな顔をして僕を迎えるのかな、
それを考えただけで胸の昂揚が治まらないよ。
どんどん、
彼女に傾倒しつつある自分に気づいてはいるけれど、
それはまだ友人や姉のような親しみと憧れで、
恋愛感情ではない。
時々、
ドキドキさせられることもあるけれど、
それだけでは恋には発展しないんだ。
文化祭は無事終了し、結果発表が行われた。
僕らのクラスは食品部門で八店中、
一年生にしてなんと、二位の座を獲得する。
総合では、三年生が表彰されていたが、
一年生でこれは好成績だと言っても過言ではないはずだ。
このままてっきり打ち上げかと思いきや、
それは体育祭を終えた後日する予定らしい。
だから今日は、
文化祭の買い出しの子たちが買ってきてくれていた
ジュースとお菓子で乾杯する程度だった。
体育祭に向けて頑張ろう!
というようなやりとりをしたり、
今日頑張ったことについて励まし合ったりしていた。
そこで、仲が深まり、
カップルが成立しそうだなと
横目に見ることもあったが、割と気にならなかった。
文化祭前後に成立するカップルの寿命は、両極端だと聞く。
長続きするところは何年ももち、かたや、
一ヶ月と経たないうちに別れる
カップルも続出するそうだ。
どちらにしても、
長続きするならおめでたいことだし、
短いならその程度だったということで
それ以上の関心は持たない。
最近は心が満たされる生活を送っているから、
それで十分なんだ。
彼女が欲しいとも思わないし、
いらないとも思わない、どっちだっていい。
恋をしたら、
付き合いたくなる衝動には駆られるだろうけれどね。
と言った具合だ。




