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僕の海馬を君に贈りたい  作者: ハイドランジア&シーク
【第三種「受容の種」―自分を受け入れる―】
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一目惚れ

 翌日、文化祭二日目。

 

 どちらかと言えば、今日が文化祭本番だ。


 昨日の売れ行きを見るに、

 目玉の「贅沢甘味セット」(二百円)は

 今日の午前の部で早々に売り切れてしまいそうだ。


 中身は、全て市販品のみたらし団子一本、

 三食団子一本、桜餅・きなこおはぎ・つぶあんおはぎの

 三種から一つ選択、

 さらに冷たい缶の緑茶、またはほうじ茶付きだ。


 他のものよりも利益を少なめにすることで、お得感を出し、

 これで客寄せにするんだから、この値段でも問題はない。


 もちろん、

 これでも一セットあたり云十円程度の利益は生じる。


 まあこの利益は僕らにほとんど還元されないけれども、

 それでも売り上げが高いと喜びを感じてしまうものだ。


 調理もほとんど必要なく、

 効率よく作業できることがこれの利点である。


 買い出しに行ってくれたみんな、ご苦労様です。


 そうして営業を開始してから一時間が経過した午前十時頃、

 客席の方からざわめきが起こっていた。


 ちょうど僕が裏方で、

 注文の品の皿に盛りつけている最中だった。


 そのざわめきに興味を示しながらも、

 生憎の混雑で僕は接客の方の

 様子を窺うことはできなかった。


 ところが、

 接客をしていたクラスの女子たちが

 裏方に注文の品を取りに来て、口々にこう話してくれた。


「ねえ佐藤くん、表にすっごく格好いい人が来て、

 贅沢甘味セット注文してくれたんだけどね、

 佐藤くん、知らない?」


「え、どうして僕に訊くの?」


 突然そんなことを言われても心当たりがない。


 すると、

 彼女たちは互いの顔を見合わせて、こう言った。


「だって、その人ここに来たとき、

 『このクラスに佐藤昇汰という少年はいるか』

 って訊いてきたんだよね。


 呼んできましょうかって聞いたら、

 『いや、確認したかっただけだから、いい』

 って断られて。


 身長は佐藤くんくらいで、すらっとした人だったよ」


 僕は彼女たちの言葉の前半部分だけで、

 誰のことだか分かってしまった。


「それでね、よかったら紹介してほしいんだ。


 キュンときちゃった」


 一目惚れということを言いたいんだろうが、

 その恋は成就しないはずだ。


 彼女たちは誤解している。





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