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ただ、祈るばかりだ。
「でも、」
またもや、彼女の負の言葉を制する。
「あなたの好きなものはなんですか。
それがあなたの願いを叶える鍵となるでしょう」
彼女の目から不安の色が消えて、清々しい色が射していた。
「はい、話してみます。
それでダメなら、それまでですからね」
そして、決して商売も忘れないのが由野さんだ。
「ところで、飲み物でも飲んでいかれませんか?
どうぞ、メニュー表です」
彼女はメニュー表を快く受け取り、
ドリンクのページを開くと、
大した時間をとることもなく、注文する。
「ラズベリーと甘夏蜜柑のスムージーお願いします」
由野さんは爽やかな笑顔を見せ、
颯爽と厨房に消えていった。
それから五分と経たないうちに、
由野さんは涼しげなグラスを手に、
フロアに戻ってきた。
美味しそうだ。
「いただきます」
キラキラした眼差しでスムージーを見つめ、合掌すると、
それに刺さったストローに口を付けて、一言。
「んー、美味しい!」
女性は、やっぱり笑っている方が綺麗で、いいな。
特に、美味しいものを食べて、笑うところはツボだ。
彼女は会計を済ますと、今日も笑顔で店を後にした。
今度こそ本当に、
彼女が次回店を訪れるときは笑顔でありますように、
ただ、祈るばかりだ。




