甜言蜜語
か、可哀想だ相手の男性。
さっき、ストーカーチックだとか言って、
すみませんと思うほどに彼はひたむきだった。
そんなに甲斐甲斐しく世話したり、アプローチしているのに、
その好意に気づかれていなかったなんて、
ご愁傷様としか言い様がない。
でも、彼女の口振りから察するには、
その努力自体は彼女の心に響いていると見受けられる。
色々深く掘り下げてみたい箇所はあるけれど、
それらを抑えて、この言葉だけを彼女に宛てた。
「彼のことが好きですか?」
ゆっくりと唾を飲み込むように、彼女は答える。
「…………はい……好き、です」
また彼女は深く深呼吸をして次の言葉を準備する。
「彼が、彼のことが好きです」
すっと見上げた彼女の瞳には強い意思が現れていた。
由野さんはそんな彼女の背中を押すべく、
勇気を必要とする提案を彼女に持ちかける。
「そ、れは」
彼女の後ろ向きな言葉を封じるように、
由野さんはその続きを言わせない。
また、あるヒントを与える。
あれーおかしいな、
僕のときよりも随分
サービスがいいような気がするんだけれども。
女性に対しての方が優しい。
少しだけ、嫉妬感。
「大人になると、
好きという気持ちだけでは行動できませんよね。
でも、彼にそれらを話して、
一条さんをまるごと受け入れるとしてくれたら、
大人も納得する打算的な理由にもなりませんか。
あなたのことが好きで、寛容で、優しくて、
面倒見がよい彼なら、
あなただって彼を受け止められませんかねー」
由野さんは彼女を甜言蜜語のような言葉で、攻め倒す。
ある意味、言及している。
由野さんは少し意地悪っぽく、
けれど一つの道標を与えて。




