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彼に告白された
「名札、外し忘れてますよ。
よっぽど、気が動転されているようですね」
にこやかに由野さんが言うと、
彼女は恥じらいの表情を浮かべる。
「最近ずっとこうなんです。
注意力が散漫しているというか、
あることが気になって、仕事が手に付かないんです」
「と、言いますと?」
由野さんはそのまま彼女に話を続けさせようと、
簡潔に返答する。
それに応じるように、
彼女も先に結論だけを簡単に言ってくれた。
「以前お話しした彼に告白されたんです」
なおも由野さんは彼女のペースを乱さないよう、
続きを促す。
「それでどうしましたか?」
彼女は途端に伏し目がちになって、その意味を口にした。
「断りました。
私、好かれる理由が分からないんです。
可愛くもないし、
まだ摂食障害も完全には治っていないのに、
それすらも打ち明けられないままで。
でも、もう一度告白されました、
結婚を前提に付き合ってほしいと。
初めは冗談かと思ったんですが、
二度目で、冗談だとしたら、
『結婚を前提に』なんて言わないはずですから、
本気なんだと思います。
だからこそ、
一度目に相手の好意を素直に信じられなくて
断ったのが申し訳ないとは思っているんですが、
私、どうしたらいいか分からなくて……
相談に乗ってほしいんです」




