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星の巨人、日本(列島)へ行く

「……ん? ていうか……ちょっと待て。


 この辺りが火山による降灰で風景が変わってるって……それ、地球も『この世界』も?」


 ワダヤマヒロシの問い返しに、野分は無言で、うん、と頷く。


 それに、ワダヤマヒロシの表情が妙に真剣なものに変わる。


「それって……『地球とこの世界が同じ地形』はいいとして、噴火なんかの『気象現象』も『同じ事が起こっている』ってことか?」


「ふむ……そういう事になるかの。


 『比翼連理』で得たお前さまの『知識』と我の『経験』を比べれば……確かに一致しておるな。


 たしか一五〇〇年ほど前だったか……地球で言うところの六世紀辺りか。


 確かにこの辺りは噴火と地震で騒がしかった。


 その後の数年は、妙に寒くての。


 お前さまの『知識』で今から考えれば、成層圏まで達した噴煙が日光を遮っておったんじゃのう……」


  応じた野分の言葉に、一瞬ワダヤマヒロシはうさん臭そうにジト目を見せるが……やがてあることを思い出して表情を改める。


「……そういやお前、一八〇〇歳っつってたな。


 あー……お前が言ってること、思い出したよ………社会科教諭の授業の余談だわ。


 なんで日本に仏教が広まったのかって話だ……」


 そう言いながらワダヤマヒロシは、ぺちんと自分のおでこを叩く。


「日本に仏教が伝来したのは……ここ二〇〇〇年で一番平均気温が低かった時期だって。


 天候不順による不作と飢饉がひどく、国も荒れ、それで時の朝廷が仏教の輸入を決断したとか。


 それって、この辺の火山が影響してたのか……テストには出ないっつってたけど、まさかこんなところで役に立つとは。


 ……感心してる場合じゃねえ!!


 やっぱり、地球とこの世界は、地形だけじゃなく気象現象まで同じってことじゃねえか!!」


 それがどうしたと言わんばかりの野分に構わず、ワダヤマヒロシは続ける。


「……どういうことだ?


 地球と同じ地形と気象現象を持つこの異世界……それはつまりポストアポカリプス(人類滅亡後の世界)やその逆って訳じゃなさそうだけど。


 そもそも『地形が同じ』という事は、万年単位のタイムトラベル後の世界じゃないってことだ。


 直近のタイムトラベルにしては文化や文明が違いすぎるしな。


 じゃあ……平行世界(パラレルワールド)


 それにしたって文化や文明が違いすぎるし……いや、断じるにも情報が少なすぎるな……」


 ぶつぶつ呟き続けるワダヤマヒロシに……野分は全く興味なさそうに、欠伸をしながらポケットの中に引っ込む。


 日課の、ヒカリモノ観賞の為と思しかった……毎度ドラゴンは金貨なんかのヒカリモノが好きすぎる。


 そしてワダヤマヒロシは、神妙な表情で顔を上げた。


「とりあえず……『世界地図』を作ろう。


 地形が似てるのがこの辺りだけかもしれないし。


 まずは……『日本』へ行くか。


 正しくは日本列島へ、という事になるんだろうけど……」


 そしてワダヤマヒロシは例の『半球』を上昇させた。


 ちなみに、先の真の金オリハルコン真の銀ミスリルで出来た反射率一〇〇パーセントの『鏡』は、リストバンド状に冶金し直し、腕に巻いてある。


 ワダヤマヒロシは『半球』で上昇しながら、そのリストバンドを撒いた手で右のポケットを開けて覗いてみた。


 その中の様子に、ワダヤマヒロシは静かにため息をつく。


「ルビは、また寝てんのか。


 しょうがないやつだな……まあいいんだけど」


「………」


 返事をしない(することが出来ない)ルビンスキーおあールビンスカヤ……とりあえず彼女は怒っても逃げ出しても告訴してもいいはずだった。


 とりあえずこの世界に労働基準監督署も児童福祉センターも子供一一〇番の家もなくて良かった……あればとっくにワダヤマヒロシは堀の中の人になっていただろうから。

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