【閑話】帰ってきた転生twins
今回登場するのは前作の登場人物です。
……あとで大改稿するか、もしかしたら削除するかもしれません。
なので……読んどくなら今のうちですよ!w
その時。
伊藤千奈は、心中複雑だった。
基本的にめんどくさがりである彼女。
趣味や好きな仕事では恐るべき情熱を見せる千奈ではあるのだが……人に指示された仕事では途端にその情熱を失う。
まあ誰しもそう言う部分はあるのだろうが……千奈の場合はそれが極端に顔に出る。
そして口にも出た。
「…うー……何だかなあ。 今からでも、引き返そうかなあ……」
疲れたように、ため息交じりに言う千奈……まだあと少しは一四歳だというのに、おばあちゃんのような口調で、千奈は誰に言うともなく呟いていた。
同じ口調のまま、千奈は続ける。
「やー……いくらお母さんの墓参りって言っても……地図上の話なんだけどなあ。
ここ、異世界だし。
確かに、頼りになるオートマッピング様を頼りに頼りに頼りに行けば、日本の実家にも戻れるし、うちの菩提寺の墓地にも行けるんだけどさ。
けど……あくまで、地図の上で、なんだよね。」
呟きながら千奈は、視線で操作してマップを起動した。
そこにあるのは……まさしく、地球で言うところの世界地図。
それと寸分違わぬ地図……ただしそれは、『この異世界の世界地図』だった。
「全く……なんでこの世界と地球って地形が全く一緒なんだろね……」
静かに呟く千奈。
いつの間にか、妙に真剣な表情になっていた。
数百年前の神官の衣装……古代の魔法の力により経年劣化を封じられたその神官衣。
若干加工はしているが、古竜のドロップ品であるそれを強い風に躍らせながら、真剣な表情のまま千奈は続ける。
「一年半前にこの世界に転生してから、世界中回ったけど……と言っても、亜音速で雲の上を飛び回っただけだけど。
けど……オートマッピング様が作った地図は、どう見ても地球と同じなんだよね。
まあそりゃ、海岸なんかの埋め立て地は全然違うけどさ……けどそれが却って別の事を連想しちゃうんだよね。
例えば……この異世界は『人類がいなかった場合の地球』であるとか、『別の歴史をたどった地球』であるとか………。
……どういう事なんだろ。
何か理由があるんだろうけど………それにどういう意味があるんだろ……」
いつになく、平素では考えられないほど真剣な表情で、千奈は呟いていた。
このように。
いつも筆者に代わって地の文の代わりに口で状況などを説明してくれる頭の優しい転生少女ティナ・イトーは、現在、本拠地のアメリカ大陸西海岸から日本列島に向かって、絶賛飛行中なのであった。
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「まっ、いっかあ。
この世界と地球が同じ地形をしてる事なんて、半年以上前にわかってたことだし。
今さらどうだっていいやー。
さっさとお母さんのお墓参りに行こっと」
平素通りの口調で、あっけらかんという千奈。
その軽い言葉に、応じた者がいた。
「ええええええーーーーっ?
何の話ですかあああああーーーー?」
よく聞こえなかったという体で、丁寧な口調を大きく声を張って問い返したのは伊藤千佳であった。
千奈の双子の姉。 一卵性双生児らしく、全く同じ顔がそこにあった。
全く同じ顔どころか、全く同じDNAをもつこの二人。
この一年半……それが原因で数奇な運命を辿った二人だが、今はその説明を割愛する。
この二人の見分け方は大きく二つ。
一つは髪型で、漆黒の垂髪が姉の千佳、ショートが妹の千奈。
もう一つは(一卵性双生児ではあるが)身長で、大きい方が姉の千佳、いろいろと成長していないほうが妹の千奈。
その二人のうち、おっぱいが大きくないほうが、千佳の言葉に応える。
「なんでもないよーーーー!!!
はやく日本にお墓参りにいこーーーーって!!
ただそれだけーーーー!!!」
時速三〇〇キロを超える強烈な風の中、千奈の返答に納得したのか千佳はOKサインを軽く振ってみせた。
それを確認し、千奈はもう一度千佳の身体を後ろから抱きかかえた。
抱きかかえたなどと言うと『┌(┌ ^o^)┐』でおなじみAAが『レズゥ…』と改変された姿を連想されるかもしれないが、さにあらず。
それどころかこの二人は……頑丈な革製の拘束具でがっちりと拘束されていた!!
……と言っても、グライダーやパラセーリングの二人乗りを連想させる姿ですわ。
要するに、日本で言う育児用の『抱っこ紐』を丈夫な革製に変えた感じである。
で。
千奈がお母さん役になって、赤ちゃん役の千佳の身体を革製の抱っこ紐で抱えているとして……どうしてそれで会話が困難なほどの時速三〇〇キロの風に晒されているかと言うと……千奈の身体にはさらに別の『抱っこ紐』がかけられており、そのお母さん役が時速三〇〇キロで空を飛んでいたからだ。
そのお母さん役の名は……イッコ。
生後一歳半の古竜であり、割愛するが、縁あってイッコは千奈に育てられている。
で。
現在の状況を説明するに……時速三〇〇キロで飛行する古竜イッコに抱っこ紐をつけて千奈が懸架され、その千奈に千佳が懸架されている形だ。
つまり千佳と千奈は、時速三〇〇キロで飛行するドラゴンに吊下げられる形で、飛翔していたのだ。
そして向かうは……日本列島。
名前からしてどう考えても日本からの転生者な二人……現在、地球で言う北米大陸に拠点を置いているのだが、家族の命日を思い出した千佳が、その墓参りをしたいと言い出し、千奈はそれに応じたのだ。
と言ってもここは異世界……なぜか世界地図レベルで地形が同じ異世界。
地図上の座標が同じでも、そこは同じ世界ではない。
それは分かっていたが……めんどくさがりの千奈も人の子。
多くは言わず、千奈はパーティメンバーを総動員して日本に向かう事になった。
「『あれ? 千奈、千佳、もっと急いだほうがいい?』」
千奈と千佳の会話に割り込んだのは古竜イッコである。
ちなみにこれは……音声による意志疎通ではなく、文字による伝達。
要は、RPGのようなメッセージウィンドウを相手の目の前に表示させるのだ。
現実離れしていると思われるかもしれないが……実はこれは、発声器官を持たないが高い知性を持つと言う矛盾した生命体がいる(かつ魔法バンザイである)この異世界において、割とメジャーな意思伝達手段である。
それ以外では、冒険者たちが使うハンドサインもあるが……情報伝達量が限られるし、また生物によって指の本数が違う事もあり、簡単なものを除いてあまり一般的ではない。
イッコから送られたメッセージに目を通すと、千奈は優しい声で応じる。
「んにゃ……大丈夫だから。
ただでさえ、アメリカ~日本なんていう西まわり逆風航路で苦労をかけてるんだから。
……いっそジェット気流捕まえて東まわりの方が早かったかな?
ま……ともかく。
イッコのペースでいいよ」
「『サー・イエス・サー!!』」
最敬礼、という感じで千奈に応じるイッコ。
まだ幼いとはいえ古竜であるはずのイッコだが……半年前に比べ、身体の方もだいぶ大きくなっているのだが、千奈の鉄拳を交えた『しつけ』により、その威厳は全く失われていた。
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その千佳と千奈を後方から眺める者が居た。
イッコを先頭にきれいなデルタ飛行を見せる古竜ニコと古竜サンコ……それぞれに懸架された、二人の少女であった。
一六歳にしてこの世界における法皇の二個下のクラス『司祭長』の巨乳に、勇者よりさらに激レアなジョブ『古竜の守り人』のツインテール。
ジェーンとシャルロットであった。
パーティ『ティナ孤児院』結成時からの主メンバーである。
この二人は千佳と千奈が別離から再会を果たすまでの長い道のりを知る者であり……ともに歩いた者である。
その再会の瞬間にも立ち会い……現在、千佳と千奈が他愛のない会話をしているだけで、心の中を熱くさせることができる二人だ。
ジェーンとシャルロットは、千佳と千奈を柔らかな視線で眺めながら……安らかな表情を見せていた。
そして無言のまま、先のイッコのように、静かにメッセージウィンドウを交換していた。
「『どどっどどどどうしましょうシャルロットさん!!
ティティティティナさんとティティティカさんがああああああんなになに密着して!!』」
「『ジェジェジェジェーンさん、おおおち落ち落ち着いてくださいな!!
わたわたわたわたくしたちはティナさん一筋だった筈筈筈でですわ!!
なのなのなのにいいいい今ではティカさんと言う存在にもこここここ心を動かされて!!』」
「ししししかも……異教の墓所とはいえ、私たちをごごごっご家族に紹介してくださるなんて!!」
「『だだだだ大御馳走過ぎですの!! ごごごごご褒美が過ぎますわ!!』」
「『ししし幸せ過ぎてどどどうにかなってしまいそうです!!』」
絵画のように静止した聖母の表情のまま、二人はテキスト量と心の中を熱くさせていた。
『┌(┌ ^o^)┐』……それは『純粋に大好きなものを求める女の子の図』らしい。
腐っているという噂のある人が、ネットでなんかそんなことを言っていた。
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