第9話:『究極の全自動営業(アルティメット・セールス)』! 魔力手相占いで神殿の権威すらもぶっ壊す
「アルス。ドローンによる映像サブスクとVIPプランは大成功だけど……まだ物足りないわね。一般層の財布の紐を、もっと強烈に、根こそぎ開かせる方法はないの?」
リーゼロッテが、ワイングラスを揺らしながら妖艶に微笑む。
商会の利益はすでに国家予算を超えようとしているが、彼女の底なしの商魂は俺の【全自動化】システムと最高に相性が良かった。
「もちろん用意してある。名付けて『究極の全自動営業』システム。……通称、魔力手相占い(デジタル・オラクル)だ」
俺は魔力盤を操作し、全国100店舗の無人魔法店に設置されている端末へ、一斉にアップデート(新機能追加)を送信した。
「占い、ですって? そんな子供騙しでどうやって利益を……」
「やってみればわかる。ほら、王女殿下。ちょっとその水晶板に手を置いてみてくれ」
部屋でくつろいでいた暴走王女フレアが「ん? こうか?」と無警戒に端末に手を置いた。
その瞬間、端末が彼女の魔力の波長と生命線(手相)を全自動でスキャンし、空中にホログラムの文字を浮かび上がらせた。
『鑑定結果:明日の狩りにて、愛用の戦斧が砕け散る【大凶】の相が出ています。また、背後からの奇襲により重傷を負う確率が98%です』
「な、なんだと!? 私の相棒が折れるだと!? ふざけるな、そんな未来、私が叩き割ってやる!!」
フレア王女が激昂した、まさにそのコンマ1秒後。
端末の画面が切り替わり、流暢な自動音声が室内に響き渡った。
『――ご安心ください。そんなあなたに最適な解決策をご用意しております。今すぐ【アルティメットVIPプラン】にアップグレードすれば、絶対に折れない魔法銀の特注戦斧と、自動迎撃ドローンをわずか3秒で上空からお届けします。あなたの未来を買いませんか?
【契約する(白金貨100枚)】/【契約する(白金貨100枚)】』
「買う!! 今すぐよこせ!!」
フレア王女は画面を叩き割る勢いで【契約する】のボタンを連打した。
直後、王女の口座から莫大な金額が全自動で引き落とされ、窓の外から飛んできたドローンが真新しい特注戦斧を彼女の足元に投下した。
「……見たか、リーゼ。これが俺の組んだ『究極の営業』のワークフローだ」
俺は唖然とするリーゼロッテに向かって解説した。
「人は『未来への不安』を煽られた時、最も財布の紐が緩む。手相をスキャンして超精度で危機を予言し、客が絶望した瞬間に、それを回避するための『高単価商材』を完璧なタイミングで提案する。しかも、占いの結果は遠話の魔道具(SNS)で友人たちに拡散させる機能付きだ」
「……悪魔ね。成約率ほぼ100%の、恐ろしい全自動集金システムじゃないの」
リーゼロッテは震える手で額を押さえたが、その口元は歓喜に歪んでいた。
この『魔力手相占い』の導入により、各店舗の売り上げは天文学的な数字へと跳ね上がった。
面白半分で占いを試した一般市民から貴族までが、提示された未来に恐れおののき、次々と俺たちの高額サブスクリプションに加入していく。
――一方、王都の神殿。
これまで「神の啓示」と称して、曖昧な予言で貴族から莫大なお布施を巻き上げていた神官長は、信者が一人も来なくなったガラガラの礼拝堂で泡を吹いて倒れていた。
「ば、馬鹿な……。我々の何十年もかけた神聖な予言が、街角の無人機がやる『無料の手相占い』に完敗したというのか……っ!?」
曖昧な権威にすがり、効率化を怠った者たちに居場所はない。
俺の商会はついに、国家の経済だけでなく、人々の「運命」すらもシステムで支配し始めていた。




