第10話:国家の超大型公共事業を「全自動」で即日完工! 利権を貪る貴族たちを完全失業に追い込む
「アルス、王家から直々に『超大型案件』の依頼が舞い込んだわよ」
王都の一等地にそびえ立つ、俺たちの商会の新本社ビル。
最上階の執務室で、リーゼロッテが分厚い羊皮紙の束をデスクに放り投げた。
「内容は、国境地帯の『対魔王軍・絶対防壁』の建設プロジェクト。本来なら王都の建設ギルドと大貴族たちが何十年もかけて税金(予算)をチューチュー吸い取るための利権事業ね。それを、最近台頭してきた私たちに丸投げしてきたってわけ」
「なるほど、厄介払いのつもりか。あるいは、失敗させて商会を取り潰す口実にする気だな」
防壁建設の予定地は、強力な魔物が絶え間なく湧き出す最前線の危険地帯だ。
人間の職人や兵士を派遣しても、魔物の襲撃で工事は一向に進まない。それを理由に、無能な貴族たちは「警備費」や「工期延長の追加予算」を国庫から無限に引き出し、私腹を肥やしていたのだ。
「工期はどれくらいを要求されてる?」
「信じられないことに『3ヶ月』よ。どう考えても不可能よ。最低でも10年はかかる規模の城壁だもの」
リーゼロッテが呆れ返る中、俺は魔力盤を操作して新しい術式の設計を始めた。
「10年? 冗談だろう。そんな長期間のプロジェクト管理なんて、無駄の極みだ。……俺の【全自動化】システムなら、『即日』で終わらせる」
「えっ……即日!?」
翌朝。国境の最前線。
俺とリーゼロッテ、そして「魔物が斬れるから」という理由でついてきた暴走王女フレアは、荒野を見下ろす崖の上に立っていた。
遠くからは、土煙を上げて数万の魔物の群れが押し寄せてくるのが見える。
「アルス! 私が先陣を切ってあの群れを微塵切りにしてこよう!」
「いや、王女殿下は下がっていてくれ。今回は『土木工事』だからな」
俺は指を鳴らし、待機させていた数百機の銀色の輸送ゴーレムを一斉に展開させた。
親機である『GR-J76』から、次々と新たな「重機型ゴーレム」が分離・変形していく。
巨大な魔力ショベル、全自動の岩石粉砕機、そして空間魔法を応用した3Dプリンター型の超大型建築ゴーレムだ。
「全機、並列処理を起動。対象エリアの整地、魔物の排除、防壁の生成を同時進行で開始しろ」
「ズガァァァァン!!!」
数百の重機ゴーレムが、狂ったような速度で駆動を開始した。
向かってくる数万の魔物の群れを、キャタピラ型の防衛ユニットが文字通り「轢き潰して」整地していく。
その跡に、空間魔法のゲートから無尽蔵に供給される建築資材が、俺の組んだアルゴリズムに従って、パズルのように完璧な精度で組み上げられていく。
「な、なんだこれは……!? 城壁が、生き物のように『生えて』いくわ……!」
リーゼロッテが悲鳴のような歓声を上げた。
人間の手なら数ヶ月かかる基礎工事が、わずか数分で完了。
魔物が湧く前に壁を作り、壁に組み込まれた全自動の魔力砲が残りの魔物を粉砕する。
圧倒的な力と、狂気の効率化。
太陽が中天に昇る頃には、国境を完全に遮断する、全長数十キロに及ぶ「絶対に破壊不可能な魔法銀の防壁」が完成していた。
「……信じられない。本当に半日で、国家の歴史に残る大事業を終わらせてしまったわ……」
「おまけに、防壁の維持・管理もすべてサブスク契約にしておいた。これで王家から永続的に保守費用が入ってくる」
――その翌日。
王都では、防壁建設の利権を握っていた大貴族と建設ギルドの幹部たちが、顔面を蒼白にして震えていた。
「ば、馬鹿な!? なぜ工事がもう終わっている!? これから10年かけて、ゆっくり予算を引き出していく計画だったのに!!」
「お、おしまいです……っ! 我々の請け負うはずだった仕事がすべて消滅しました……! 抱えている職人への給料も払えません!!」
国家のインフラすらも全自動化し、旧態依然とした利権構造を物理的に粉砕した俺たち。
俺の商会は、ついに「国」すらも飲み込む巨大な怪物へと成長を遂げたのだった。




