第12話:国家通貨の「全自動」アップデートと、銀色の相棒による世界最速決済
「アルス、大変よ! 魔王軍との契約で振り込まれた莫大な白金貨……これ、今の王都の銀行じゃ、重すぎて物理的に管理しきれないわ!」
リーゼロッテが、悲鳴に近い声を上げて執務室に飛び込んできた。
俺たちの商会が手にした富は、もはや一国の国家予算を超え、物理的な「金貨」という形で保管するには限界に達していたのだ。
「いい機会だ。リーゼ。この世界の『不便な貨幣経済』も、俺のシステムでアップデートしよう」
「……貨幣経済を、アップデート?」
「ああ。名付けて『全自動・魔力決済』。……相棒、メインサーバーを起動しろ」
「ズドドドド……!!」
待機していた銀色の重装ゴーレム『GR-J76』 が、凄まじい駆動音とともに魔力波を放出した。
俺が構築したのは、金貨を持ち歩かなくても、手元の水晶板に触れるだけで、俺の商会の『クラウド』にある資産から即座に決済が完了する、全自動の電子マネーシステムだ。
「このシステムなら、決済手数料はわずか0.1%。銀行の送金手数料よりはるかに安い。しかも、俺の全自動ゴーレムが配達する商品なら、決済と同時に在庫管理まで終わる」
俺は王都の広場に、新たな無人魔法店をオープンさせた。
そこには、店員もレジもない。客が欲しい商品を持って店を出るだけで、全自動で『エーテル・ペイ』から代金が引き落とされる。
「な、なんてこと……! 両替の手間も、偽造金貨の心配も、強盗に襲われるリスクも全部なくなるじゃない……!」
「さらに、このシステムには『自動・税収代行』の機能もつけてある。王家には、全取引の数パーセントを自動で納税する。これで王族も文句は言えない。……むしろ、彼らはもう、俺のシステムなしでは国を運営できなくなる」
圧倒的な利便性の前に、人々はこぞって『エーテル・ペイ』に資産を預け始めた。
もはや、俺たちの商会はただの「店」ではない。世界経済の「心臓」そのものとなったのだ。
一方、俺を追放したブラックギルド。
彼らはまだ、重い金貨袋を抱えて、非効率な帳簿付けを徹夜で行っていた。
「おい、また計算が合わん! 誰だ、白金貨と金貨を間違えたのは!」
「マスター、もう無理です……。世の中のみんな、アルスさんの『ペイ』で一瞬で買い物してるのに、うちだけまだ手書きなんて……誰も取引してくれませんよ……!」
時代に取り残された彼らの足元から、崩壊の音が響いていた。




