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第38話 俺は、久しぶりに姉の部屋で姉と一緒に寝る。

自分の部屋に入った瞬間、部屋の中の光景に戸惑いが隠せなかった。



俺が寝間着をとりに部屋を戻ったときは、布団は敷いてなかったはずだ。

なのに今、真っ暗な部屋の中に、なぜか俺の布団が敷いてある。

しかもそれは、不自然にふくらんでいる。

明らかに誰かがいる。誰なのかは見なくてもわかる。

掛け布団を払いのけた瞬間、と姉が言う。



「わたしだ」

「お前だったのか!?」



わざとらしく、俺は驚く。



「て、そうではなくて。

なんで静は俺の部屋に来て、俺の布団を敷いてその中で待ってたんだ?」

「今日、一緒に寝たいから」



姉は俺の布団に入っていた理由を、すさまじく簡潔に言う。



「そう……」

「でもよくよく考えてみたら、一緒に寝るときって、いつも健くんのお布団だよね。

いつも健くんの布団ばかりだとマンネリになるから、今夜はわたしの部屋のベッドで一緒に寝よ?」



姉にそう誘われる。

俺は、姉の誘いに乗る。



「いいよ」

「本当?じゃあ、今からわたしの部屋に来て」



俺は姉の後ろについて、部屋に入る。

姉はベッドに入ると敷布団を捲り、俺に入るように催促する。



「健くん、おいで」



俺は黙って姉のベッドに入り、隣に行く。



「電気消すよ」



姉が照明のリモコンを操作して、電気を消す。



「健くん。おやすみのキスをして」



姉がまたも、俺にキスをねだる。

俺は、姉の唇に軽くキスをする。



「ふふ、お休みなさい」



そう言って、姉は俺のことを抱きしめながら眠る。



「こんなこともすぐに終わるだろうし、

今はとりあえず、いいなりになっておこう」



姉に抱き枕にされながら、俺は思う。

俺は姉が完全に寝たことを確認して、眠りについた。




/////////////////////////////////////////////




翌日。

目覚ましの音で、俺は目が覚める。



「……?」



目覚まし?

誰がセットしたんだ?

時間は……7時。



「なんでこんな時間に」



確かに今日はバイトがある日だが、こんなに早くはセットしてない。

そこで俺は思い出す。

そういや俺は昨日、姉のベッドで寝たんだった。

すると、アラームをセットしたのは姉だろう。



「んん~」



目覚ましの音で起きた姉が、手を伸ばしてアラームを止める。



「健くんおはよ~」



そう言って、姉は俺に頬ずりをする。



「静」

「ん~?」

「もしかして、今日は俺のことを起こすつもりだった?」

「そうだよ~」



俺が姉に問いかけると、間延びした声で姉は答える。



「でも昨日は一緒に寝たから、この時間に設定した意味がなくなっちゃけどね」



姉は体を起こす。



「さ、下に行って朝ごはん食べよ」



姉のその言葉に従い、下に降りて朝食をとる。

そしてバイトに行く準備をする。



「行ってきます」

「待って」



俺がバイトに行こうとすると、姉が俺を止める。



「?」

「行ってきますのキスして」



姉が要求するので、大人しくキスをする。



「ありがとう」

「どうしてまた」

「なんだかね、今日健くんが遠くに行っちゃう気がして」



俺が理由を聞くと、姉がそう返す。



「俺はあれでも、あの事故から、何とかですが、生きて帰ってきた人間ですよ?

そうそう死にませんし、今はまだ、死ぬわけにはいきません」



俺が事実を言うと、姉は不安に満ちた顔をする。



「うん、わかってるんだけどね……でも、ときどき不安になるの。

健くんが、ふとした瞬間に、今度こそいなくなってしまうんじゃないかって」



俺は姉のその顔を見て思う。姉は、なぜそんなことを思うのか、と。

俺にはその真意が、わからない。

俺はとりあえず、姉の言葉に返す。



「静。俺は天寿を全うするまでは死なない。安心してくれ」

「……うん。今日も事故にあわないように、気をつけてね」

「はい」



姉が俺の言葉に納得したので、バイトへと出かける。



「そういや、あの事故から1年経ってるんだよなぁ」



俺はバイトへ行く道すがら、あのときのことをふと思い出す。


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