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第26話 俺は、栗栖に服の好みを訊かれる。

二人が宣戦布告した後、姉が涼しい顔で、二人に名前を名乗るように迫る。



「あなたたち、宣戦布告をしたけど、そういえばあなたたち、まだ名前を名乗ってないよね?

人に話しかけるときは、名前を名乗れって、言われなかったのかな?で、あなたたちの名前は?」



姉の凍てつくような声に怯むことなく、栗栖と綾瀬先輩が名乗る。



「あたしは、栗栖麻衣です」

「私は、綾瀬桔梗と申します」



栗栖は刺々しく、綾瀬先輩はきちんと礼儀正しく。



「そう、二人の名前はわかったわ。で、二人は一体どういう関係なのかな?」



姉は更に、二人に俺との関係について聞いてくる。



「あたしは、"今は"ただのクラスメイトです」

「私は、彼が通ってる高校の、生徒会長です」



それぞれ俺との関係を、簡潔に言う。何も間違ってないな、うん。



「ふぅん、なるほど」



すると、栗栖が突然、姉を煽るようなことを言う。



「静さん、まさかその年で弟離れできてないですか?重度のブラコンですね」

「ブラコン?あなたは何言ってるのかな?わたしは、健くんのことは弟じゃなくて、一人の男として好きなの。

昔からずっと、健くんのことしか見てないし、見えないの。あなたたちみたいなぽっと出とは違うから」



栗栖の煽りに、姉は威圧的な顔と声で煽り返す。

え、てか姉は一人の男として、俺のことが好き?

昔から?どういうこと??

姉の次から次に出てくる発言に、俺の頭の中が疑問だらけになる。


俺の頭の中を疑問が埋め尽くす中、綾瀬先輩が、何か思いついた、と言う顔で姉に対して言う。



「そう。ならお姉さん。あなたに私は聞きたいことがあります。

先ほど、健一郎くんは私以外に振り向かない、そう言いましたよね?

振り向かせられるものならやってみろと、はっきりそう言いましたよね?」



綾瀬先輩の質問に、姉はええ、と答える。



「仮に、本当にあなたが健一郎のカノジョだとしましょう。

なら、私や栗栖さんも健一郎くんのカノジョになったとしても、最終的には別れるとお思いなのですね?」



綾瀬先輩の確認に、姉はキリっとした笑顔で答える。



「ええ」



姉の回答に、綾瀬先輩がしてやったりという顔をする。



「であれば、健一郎くんが同意するなら、私や栗栖さんも健一郎のカノジョになっても、いいですよね?

健一郎に同意をとってもよろしいでしょうか?」

「どうぞ」



綾瀬先輩の提案に、余裕の笑みで姉が答える。

横で姉と綾瀬先輩の問答を聞いていた栗栖は、姉の答えにうれしそうにする。

すると、綾瀬先輩と栗栖が俺の前に来る。



「伊良湖」

「健一郎くん」

「私」

「あたしの」

「「彼氏になって!」」



二人がリエゾンして、俺に言う。

俺は、姉の発言によって生じた疑問を解決できないなか、二人からそんなことを言われ、どうすればいいのかがわからなくなる。


姉のほうを見ると、姉は今まで見た中で一番な笑顔をしている。

姉は、そこまでの自信があるのか。

そして、目の前を見ると、二人の期待に満ちた顔がある。


俺は二人の顔に負け、二人の申し出を了承する。



「わ、わかった」

「やった!これからよろしくね、伊良湖」

「よろしくお願いするわね、健一郎くん」



俺の答えに、二人はにこやかな顔をする。



「そうそう、健くん。わたしのことも、これからは"カノジョ"としてよろしくね」



二人が喜びを露わにする中、姉がニコっとして俺に言う。



「ああ、わかった、静」



俺が返答したところで、会話が止まる。

会話が止まったところで、俺は三人に話しかける。



「あの、いい?」



そう言うと三人は、こちらに顔を向けて俺の話を聞く素振りを見せる。



「とりあえず、今日は栗栖と遊ぶ約束だから、それを果たさせてくれ。

"カノジョ"との約束を反故にするようなことは、したくないから」



俺が言うと、栗栖はうれしそうな顔をし、姉と綾瀬先輩は納得した表情をする。



「そ、そうね。約束を守らない男は、男の風上にも置けないものね」

「そうだね。約束を平気で破るような子に、わたしは健くんを育てたつもりはないもんね」



姉に育てられた期間なんてないんだが、と心の中で俺は姉につっこむ。

だが、これで栗栖と遊びに行く約束を、ふいにしてしまわずに済みそうだ。



「じゃあ、わたしは本来の用事を済ませるために、目的の場所に行くね」

「困らせてしまってごめんなさい、健一郎くん。私も帰るわ」



そう言って、綾瀬先輩は一般車待機場のほうに、姉は駅の方向に行くのかと思ったら、俺の左側まで来て耳打ちをする。



「今日からは、四六時中カレカノとして、いーっぱい、イチャイチャしようね」



そう言ってから、姉は駅の別の出口の方向に去っていった。


今日、どういうわけか、俺にカノジョが3人も同時に、しかも相互合意のもとでできてしまったよな?おまけに衆人環視のもとで。

一体これからどうすれば、そんなことを考えていたら、栗栖に体を揺らされる。



「ねぇ、邪魔もなくなったし、早く行こうよ」



栗栖がそう急かすので、俺は返事をする。



「あ、ああ。で、忘れてたが結局、どこに行くんだ?」



俺は栗栖にどこに行くのか、再度尋ねる。



「ふふん、行ってからのお楽しみ!」

「え?」



俺が栗栖の答えに拍子抜けを食らっていると、栗栖は俺の左手をつかんで引っ張ってくる。



「こっち」



俺は栗栖に連れられて、栗栖が目的とする場所を目指す。



「まずはさ、伊良湖の服の好みが知りたいんだよね」



栗栖がそう言って連れてきた場所。

そこは、女性用の服を売っている店だった。



「どした?伊良湖」

「いや、俺は今、来てはいけないところに来てるなと思って」



俺が戸惑っていると、栗栖は俺を店の中に引き込む。



「そんなキョドらなくてもいいって。カップルなら、彼氏連れてこういうとこ来るなんて、珍しいことでもないんだし」

「そ、そうなのか?」



栗栖が俺の言葉に、平然とそう答える。

すると栗栖が俺を更に引っ張って、試着室の前まで連れて行く。



「じゃ、あたし服選んでくるから、ここで待ってて」



栗栖はそう言って、俺を置いて店内を物色し始める。



「お、おう」



どこかにいく栗栖に俺はそう返事する。

が、正直今俺の心は、針のむしろ状態だ。

周囲の女性からの刺すような視線に、俺は居心地の悪さが止まらない。



「待った?」



しばらくして、栗栖が数着の服を持って戻ってくる。



「伊良湖?もしかして」

「大丈夫大丈夫」



栗栖が俺の顔を覗き込みながらみな言う前に、俺はそう返事する。

すると、栗栖が俺の目をじっくりと覗き込む。



「そっか、わかった。じゃ、着替えるから試着室の前で待ってて」



栗栖は結局そういって、試着室の中へ入っていく。

少しして、栗栖が試着室から出てくる。



「へへ、どうかな」



試着室から出てきた栗栖は、お姫様っぽい格好だった。



「おお、似合ってるぞ」

「むむ。ちょっと待って、着替えてくる」



そう言って再度、栗栖は試着室へと入る。



次に出てきたときの格好は、今どきなかわいい感じの服装だ。



「これはどう?」

「それも似合ってるぞ」

「もう一回着替えてくる」



栗栖はそういって、また試着室に入る。

次に出てきたときの服装は、清楚という言葉がぴったりな服装だった。



「どう?」

「すまん、栗栖。正直、栗栖にそういう服が似合うと、全く思ってなかった」

「え、何それひどーい!でもそっか、そっかそっか」



そう言って栗栖は試着室に戻り、元の服装に着替える。



「伊良湖、会計してくるから、入口で待ってて」



栗栖がそう言うので店を出て入り口で待っていると、栗栖がこっちに来る。



「お待たせ」

「ああ。今日試着した服のどれかを買ったのか?」

「うん」



そう言って、栗栖が大きな紙袋を見せてくる。



「どれを買ったんだ?」

「次の時のお楽しみ。さ、次行こ」



俺は栗栖にまた手をつかまれ、どこかへと連れて行かれる。

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