僕の可愛い妻
ルーシャン嬢が王立魔法学園から去った後、多少の問題はあれど平穏な学園生活を送る事が出来た。
そうして迎えた卒業式。
卒業生代表としての祝辞を述べた後、おいで、とシトリーを呼んだ。
「訳あって公表を控えていたが、学園卒業と言う節目にあたり、真実を話そうと思う。
―――僕とシトリーは既に婚姻関係にあるんだ」
婚姻を結んで4年となる事を公表した結果、道理で余裕があると思った、とか、婚約者相手と言うのならば少々距離が近いと思った、と言う声で会場が溢れた。
うん、1部青ざめてる子達がいるね。
魔法研究にかまけて婚約者を放置する女なんて王子妃に相応しくない、婚約を辞退しろ、ってシトリーに言っていた令嬢達だね。
ルーシャン嬢の問題と並行して報告書に上がっていたから良く知っているよ。
「シトリーの魔法研究の成果が実って、昨年のクラーケン討伐は負傷者は出たものの死者はゼロ。優秀な妃を持てて、僕は果報者だ」
確かにシトリーと過ごせる時間が減った事は寂しくはあったけれど、王子とその妃である以上優先すべきは国益だからね。
晴れてシトリーが僕の妻であると公表出来た訳だし、王子宮に戻ったらたっぷり甘やかそう、と考えている僕の隣で、シトリーは耳まで顔を赤く染めながらぷるぷると震えていた。
「殿下、わたしは殿下の妻として当然の行いをしたまでの事ですわ…」
「うん、だからなおのこと皆に僕の妻の優秀さをお披露目しないといけないだろう?」
それから。
「名前で呼んで欲しいな」
僕がおねだりすると、シトリーは虫の様に小さな声で「…ヴィルヘルムさま…」と口にした。
「ありがとう、シシィ」
本当は唇に口付けをしたいのだけれど、卒業式に参列しているラグナート辺境伯の様子を見るに式が終わるまでは4年前にラグナート辺境伯の出された条件の中、と言う事の様だから、頬に口付けをする。
茹だったタコの様に真っ赤になったシトリーを抱きかかえて卒業式の会場を後にする。
「大丈夫?」
「大丈夫に見える様でしたら、腕の良い眼科医をご紹介致しますわ」
頬への口付けでこれだけ動揺するとなると、半年後に予定されている結婚式やその後に控える初夜は許容量を超えてしまうのではないかと少し心配になってしまうな。
「愛してる」
「〜!!」
小刻みに震えるシトリーは可愛くて仕方がない。
この世界一愛しい妻を、決して不幸にしたりはしない。手放すなど以ての外。
「隠れる必要は無くなったんだし、これからは毎日愛を伝えようと思うんだ」
先ずは揃いの指輪を、僕の瞳の色と同じ琥珀色のドレスを何着か仕立てて、それからシトリーが前から欲しがっていた魔道具の本を購入する事にしよう。
嗚呼。
「幸せだ」
心の底からそう思う。




