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年下のねーさん 〜歪んだ瞳に映るもの〜   作者: 太ったカッパは川底を歩く


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第4話

新入生の入学式が終わり、学校行事も一段落したある日。

僕の教室には、その静けさを一瞬で壊す存在が現れた。


ドタバタと走る足音が止み、少し間を置いてドアがゆっくりと開いた。

軽くお辞儀をしながら一人の少女が教室へ入ってくる。

真新しい制服に身を包み、胸元には一年生であることを示す真っ赤なリボンが揺れていた。


教室に差し込む光を受けて、その瞳は子犬のようにぱちぱちと瞬き、きらめいて見える。ふわりと揺れた髪は光をまとってほどけるように広がり、少し日に焼けた肌が周囲の空気まで明るくするような健康的な印象を残していた。

その整った顔立ちは、美少女と呼ぶにふさわしいものだった。彼女が姿を現しただけで教室中の視線が一斉に集まる。騒ぎになるのも無理はない。


彼女は両手に弁当箱を抱えながら、教室の中をきょろきょろと見回している。

そして僕と目が合った瞬間――にこりと微笑んだ。


――やばい、見つかった。


彼女は迷いなくこちらへ歩いてくる。


「今日はお弁当作るって言ったよね?」


そう言うなり、彼女は僕が食べていたパンをひったくった。


「いらないって言っただろ、美咲」


「ねーさん、だよね?」


感情のこもらない声で訂正される。間違っているのは分かっているが、訂正しないと後が面倒だ。


「……いらないと言いました、ねーさん」


言い直した途端、彼女は満足そうにうなずいた。


周囲からは、「あの子、一年生やばくない?」「理久の彼女って結城だろ」「別れたって聞いたぞ。じゃあ今のは?」などのひそひそ話が漏れ聞こえてくる。


そんな空気など気にも留めず、ねーさんはクラスメートたちへ向き直る。

「一ノ瀬理久の双子の姉、美咲です。弟ともどもよろしくお願いします」

本人は満足げだったが、クラスメートたちは呆気に取られていた。


「ねぇ、クラス違うの?」探るように尋ねるねーさんに、僕は適当に言葉を濁した。


少しむっとしたねーさんの顔が、どこか可愛らしく見えた。


美咲は、本当の姉ではない。はずだ。

僕と美咲は、四月一日と二日に生まれた双子だ。

日付と学年の区切りのせいで僕は二年生、美咲は一年生になった。


「後から生まれた方が姉になる。私は理久のねーさん」


そう主張し始めたのは、いつだっただろうか…。


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