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年下のねーさん 〜歪んだ瞳に映るもの〜   作者: 太ったカッパは川底を歩く


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第27話

夏の日差しを浴びた山々は、美しい緑の葉を輝かせている。


僕は、叔父さんに誘われた旅館の一室から、眼下に広がる景色を眺めていた。


てきぱきと仕事道具を片付けた叔父さんは、座椅子で眠っていた。


幼くはないとはいえ、親戚の子供を旅行に連れ出しているのだから、いつも以上に疲れているに違いない。



彼が目覚めた時、誰もいないのは良くないと思い、ねーさんには先に露天風呂へ行ってもらっていた。


「すまない、小夜」


座椅子で寝息を立てている叔父さんが、小さくつぶやく。


たしか、小夜さんは亡くなった奥さんの名前だ。


いつもより小さく見える彼の頬を、涙がつたう。


夢の中で、小夜さんに何を伝えているのだろうか。


僕には、このまま見守ることが正解なのかわからなかった。


叔父さんは、ねーさんにだけは見られたくない気がした。



入口の方から電子音と、ノブを回す音が聞こえてくる。


僕は肩をたたき、叔父さんを起こした。


その直後、障子がゆっくりと開かれる。


「叔父さん、起きた?」


ねーさんは、静かな声で僕に尋ねる。


「すまない。どっちが保護者かわからないな」


叔父さんは、少し困ったように笑った。


「露天風呂、本当に気持ちよかった」


ねーさんは、水色の布地に藤の柄が入った浴衣に着替えていた。


「ねー、似合う?」


その場でくるくると回る姿は、幼さを残しながらも、いつもとは違う一面を見せているようだった。


「聞いてる?」


ねーさんの顔が、息がかかりそうなほど近づいてくる。


「……うん、似合っているよ」


口に出すまで、少し時間がかかった。


「理久、見とれていたのかな」


ねーさんは、とても満足そうにくすくすと笑った。


彼女からは、いつもとは違う柔らかな香りがした。



一人で露天風呂へ向かって歩いている。


叔父さんを誘ったのだが、まだ休みたいとのことで、一人で行くことになった。


この旅館の売りは、屋外に設置されたガラス張りの浴室だった。


ねーさんがあれほど同行したがった理由が、少しだけわかった気がした。


目的の場所は、想像以上に見晴らしの良い場所だった。


青々とした大空が頭上を覆い、高みから見下ろす山々の木々は、光を浴びて輝いている。


ゆっくりと湯船に腰を下ろし、広大な景色を眺めていると、いつの間にか最高の構図を探していた。


明日の叔父さんとの撮影を想像すると、遠足前日の子供のように眠れる気がしなかった。



屋外と屋内の湯船につかり、サウナを堪能した僕は、部屋へ戻った。


「ただいま。いいお湯だったよ」


中では、地元のお祭りのニュースが流れていた。


叔父さんは、先ほどと同じように座椅子で眠っていた。


「……お帰り。早かったね」


隣に座るねーさんの表情が、一瞬こわばったような気がした。



「好きな方でいいよ」


帰り道に買ったジュースを、テーブルへ並べる。


ねーさんは、アップルジュースを手に取り、一口飲み込んだ。


「それ、新作だよね。一口もらってもいいかな」


「ダメ」


返事は、驚くほど早かった。


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