第15話
天井からは眩い光が降り注いでいる。
聞き覚えのある電子音と、誰かの叫び声が僕の耳に染み込んでくる。
硬い感触の下で、体が左右に小刻みに揺れていた。
喉の奥から吐しゃ物がせり上がってくる。
目の前に差し出された袋へ、勢いよく吐き出す。
口に残る酸味に耐えられず、何度も唾を吐き出した。
気持ちが悪い。
ゆっくりと暗い暗い闇へ、意識が溶けていく。
次に目に入ったのは、白く輝く一室だった。
白衣を着た人々が動き回り、命を知らせる電子音が小さく、ゆっくりと刻まれている。
「目覚めました」
看護師の声を聞き、医者が駆け寄ってくる。
手に持った小さなライトを僕の目に当て、何かを確認している。
「お名前はわかりますか?」
白衣の男性の言葉に、全身から生暖かい汗が噴き出した。
「……わかりません」
「何か覚えていることはありますか?」
万力で締め付けられたような頭痛を感じ、両手で頭を抱える。
「無理しなくていいですよ」
優しい声に答えられない自分が、もどかしかった。
荒々しい息遣いが聞こえる。
前髪から水滴がしたたり落ちている。
「僕は……雨の中、自転車を漕いでいました……」
サイドテーブルの上には、ふやけたボディバッグが置かれていた。
顔にかかる髪の感触で、僕は目覚める。
また、病院に運ばれた時の夢を見ていたようだった。
間近にある恋人の顔と目が合う。
彼女の瞳の中に映る僕は、驚きと悲しみを抱えた顔をしていた。
「おはよう」
恋人の声は、いつも以上に弾んでいた。
「ああ」
何だろう、この嫌悪感は。
「ごめんなさい。今日は用事があるから、帰るね」
彼女の言葉に、僕の口角が上がった気がした。
恋人は名残惜しそうに、ゆっくりと部屋を出ていった。
口元に当てた手の甲に、ぬるりとした感触が残った。
洗面台で何度も口を洗い、何度も何度もタオルで口元を拭き続けた。
気が付くと、タオルは赤く染まっていた。
窓際に飾られた一輪のヒマワリが、僕を見つめていた。




