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ロシア 7

 トルコが参戦に踏み切ったのは、かつてロシアとの戦争に敗れて失ったクリミア半島を、ドイツが返還するとの密約を受けたためだった。


 予期せぬトルコ軍の襲来で、大混乱に陥ったザカフカス方面軍を尻目に、ドイツA軍集団は反転し北上、ドン川上流に達すると、ロシア軍の補給線を断つべく、東方へ突進を開始した。


 慌てた「スタフカ」は、ロシア第2親衛軍にA軍集団の迎撃を命じる。

 第2親衛軍の北上に気が付いたドン軍集団が、その後を追う。


 包囲されていた第6軍の救出に向かったのは、ペルシア回廊のロシア狙撃兵旅団を武装解除してバクーに入った、ドイツ・アフリカ軍団だ。


 バクーを守っていたロシア第165狙撃兵旅団は、カスピ海西岸に縦深陣地を構築していたが、対戦車砲や重火器を抽出された上、旅団司令部がそっくりアバダーンに亡命したとあって、脱走者が続出し自壊する。


 ドイツ・アフリカ軍団は、残兵を掃討しながら進んだ。


 先遣隊が第6軍の塹壕に達した時、目に入ってきたのは土壁に飾られた粗末なクリスマスツリーだった。

 その傍らには、傷つき、飢えと寒さに憔悴しきった兵士が、壁にもたれてうずくまっている。


 ドイツ・アフリカ軍団の兵士が、声をかけた。

「メリークリスマス」


 第6軍の兵士が応じた。

「サンタがアフリカから来るとは思わなかったよ」


 A軍集団が東進を続け、ドン軍集団とドイツ・イタリア装甲軍が北上することで、ドイツ軍がロシア軍を逆に包囲する形勢となり、戦いの主導権は枢軸国側に移った。


 イランでは親ドイツ派の前皇帝レザー・シャーが復位し、サウジアラビア王国も枢軸国支持に転じる。

 孤立無援となったイラクのイギリス軍と、シリアの自由フランス軍が降伏した。


 ロシア軍最高司令官代理のジューコフがうめいた。

「あと一息でとどめを刺せるところだったのに、何ということだ。こんな途方もない謀略を仕組んだのは誰だ」


 ヴァシレフスキー参謀総長が答えた。

「シライシとかいう、日本の参謀のようです。諜報・謀略の世界では、以前から知られた男です」


「今度はシライシか。ノモンハンでは、それまで完勝だった戦いが、最後にミヤザキが現れたばかりに、画竜点睛を欠く結果に終わってしまった。日本人は、肝心なところで邪魔ばかりする」


「ミヤザキは今、自由友愛同盟軍を率いて、インドでイギリスを窮地に追い込んでいるようです。ノモンハンの頃の彼が、一介の連隊長で助かりました。もし全軍を率いていたら、予断を許さない戦いになっていたかもしれません」


「そんな無駄話をしている暇があったら、目の前のドイツ軍に集中しろ。奴らを倒さなければこちらが倒されるぞ」

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