表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/27

第26話 世界一平和なハーレム!(エピローグ)


 夕暮れ時の港町。

 世界滅亡評議会を終えた俺は、自分の町へと帰ってきた。


 海の見える坂道を降りて、途中にあるスクラシスの小さい神殿に寄る。

 祭壇前で手を合わせて祈る。


 ――女神スクラシスさま。繰り返さない一日をありがとうございます。明日もよい時間が流れるようにお願いします。


 もう最初からやり直しなんて、したくなかった。

 ようやく滅亡しない時間を探り当てたんだ。

 守りたい、この世界を。



 その後、神殿をあとにして港に面した屋敷に入った。

 二人で過ごすには広すぎる家。


 ところが、すでに新しい同居人がいた。

 玄関入ってすぐのエントランスで、すらりとしたスレンダーな美少女が黒いツインテールを揺らして片手を上げる。

「あ、帰ったのね。勝手にお邪魔してるから」

「ノクティ。どうしたんだ?」


「試しに住んでみることにしたのよ。邪竜族のみんなはまだ半信半疑だし。アタシたちが安全に暮らせるかどうか調べるのよ」


「俺に任せてくれ! ノクティの安全は俺が守るから!」

「ありがと。まあ、妹の体にとっては地上のほうがいいだろうし」

「だね。――ってことは、ケイも来てるのか」



 すると、二階の廊下からケイが顔を覗かせた。腰まで届く金髪が横に流れる。

 俺を見つけるなり青い目を見開いた。少し小走りになって、とんとんと幅広の階段を下りてくる。

「おかえりなさい、アレクさん。部屋がたくさんありますけど、どの部屋を使えばいいんでしょうか?」


「どの部屋でも使ってくれていいよ」

「でも、どの部屋も、あの……ベッドがないんですが」


「ああ、それは二階の右側にある俺の部屋に、超大きな六人用ベッドがあるからね!」

「ええっ……! やっぱり、一緒に寝なくちゃダメなんですかぁ」

 ケイは両手で口を押さえてリスのように震えた。



 すると、風呂上がりのスクラシスが小柄な裸体にバスタオル一枚巻いただけの姿でエントランスに現れた。なまめかしく濡れた銀髪をタオルで拭う。

「小娘はまだまだ甘いのう。ならば今まで通り、夜のアレクはわらわが独り占めしておくのじゃ」


「「えええええ!」」

 邪竜姉妹が驚きの声を揃えて叫んだ。


「もう同棲してたっていうの!?」

「こ、これはスクラシスさんに後れをとってしまいましたっ。あ、あたしも一緒に過ごします! みだらな女になります!」


「ケイってば、なにを決意してるのよっ! そんなのしなくていいから!」

「いいえ、お姉ちゃん。待ってるだけじゃだめなんですっ。押してだめなら噛み千切る、です!」 

「死んじゃうわよ!」



 ――と。

 俺の後ろに気配がした。


 振り返ると、入り口の扉が開いてドミナさんが入ってきた。

「あらぁ。ちょうどよかったわ。アレクくん、ちょっと手伝ってもらえるかしら?」

「はい、ドミナさんのためなら喜んで! ……でも、なにをするんです?」


「新しく生まれた本を持ってきたのだけれど。部屋に運んで欲しいの。室内で魔法はやめておいた方がいいでしょう?」


「わかりました! 任せてください!」

 俺は忠犬のごとく、ドミナさんの下へと駆け寄った。



 ケイが不満そうに口をとがらせる。

「えー、寝ないんですかぁ?」


「しかたないわねぇ。アタシも手伝ってあげるわよ」

「お姉ちゃんが手伝うなら、あたしも手伝いますっ」

「ふふっ。二人ともありがとう」

 ドミナさんが長い髪を揺らして優しく微笑む。


 俺たちは十箱ぐらいある木箱を、とりあえず二階へ運んだ。

「部屋が決まったら、また呼んでください」

「いえ、それぐらいはできるわ。ありがとう、アレクくん」

「どういたしまして!」



 そのとき、階段の下から音が聞こえた。

 地下室に続く扉が大きく開いて、紅の髪を乱したルベルがエントランスに駆け出した。


 辺りを見回して俺の姿を見つけるなり、手で体を隠して叫ぶ。

「アレク! な、なんだ、この服はっ! まともな服が一着もないではないかっ!」


 ルベルが着ているのは、女学生が着るような白いブラウスと紺色のプリーツスカートだった。

 ゲートを通って裸になった彼女のために、地下室の隅に服を置いていたのだった。



「え~? 他にありませんでしたか? 男物のシャツだけとか、水着とか。あとはバニーガールの衣装も合ったはずですが。ウサギ耳のやつ」

 俺は両手を頭の上でぴょこぴょこと動かした。


 ルベルは顔を真っ赤にして叫ぶ。

「そんなもの、恥ずかしくて着れるかっ!」


「なに言ってるんです! 布面積で言えば、普段の衣装よりも多いじゃないですか!」

「ぐぬぬっ! ――でも、なにか違う! 君の用意した服はなぜか、いやらしいんだ!」


「似合ってて可愛いですよ。俺は好きです。大好きです!」

「くぅっ!」

 ルベルは頬を羞恥で染めつつ、上目遣いで睨んでくる。



 俺は、ふっと頬をゆるませる。

「でも、ゲート使ってくれたんですね」

「ふ、ふんっ! 魔界に通じる危険なものを放置するわけにはいかなかっただけだっ」


「でも、俺を信用してくれた」

「う……あ、アレクが私に危害を加える気なら、いつでもできたはずだからなっ!」


「ありがとうございます」

 俺は恭しく頭を下げた。


 その態度に、ルベルがぎょっとして後ずさる。


 顔を上げるとみんなを眺めた。


 美しい顔をひきつらせたルベル。

 黒髪ツインテールを揺らして首を傾げるノクティ。

 両手を胸に当ててまっすぐ俺を見るケイ。

 俺の視線を奪うかのように、青い髪を色っぽく掻き上げるドミナさん。


 ――見ているだけで胸の内が熱くなってくる。



 そして、スクラシスが銀髪をタオルで拭きながら傍へ来ると、俺を見上げた。

「なにをニヤニヤしておるのじゃ? そんなにわらわたちが来て嬉しいのかの?」


「ええ、みんながいることが幸せなんです。平和的で、たまらなく平和的で……」

 俺は視界がかすむのを感じた。


 こみ上げてくる想いが、目からあふれる。

 ――127万回の果てに、たどり着いた未来。


 長かった……本当に、長かった……。


 一方、俺の中にまだ流す涙が残っていたことに驚き途惑った。

 でも、せっかく手に入れた楽しい雰囲気を壊してはいけない。


 こぼれ落ちそうになる涙を、俺は慌てて手の甲で拭う。



 そして笑顔で手を広げた。

「さあ、夜はまだまだこれから! 平和なハーレムを楽しみましょう!」

「修羅場になりそうじゃがの?」

「うっ」


「そうです! アレクさんの隣はあたしの場所なんですっ」

「ううっ」


「まさか、わたくしに寂しい思いをさせたりはしないわよねぇ、アレクくん?」

「うううっ」

「あ、アタシも忘れないでよっ」


 俺は冷や汗をかきながら階段を駆け降りる。

「と、とりあえず、ご飯をみんなで食べましょう! きっと楽しいですから!」


「あ、逃げたのじゃ」「待ちなさいっ」「待ってください~」「あらあら」



 一階に降りて食堂へ走る。

 ルベルの横を通り過ぎるとき、彼女は呟いた。

「ふふっ。確かに楽しそうだな」


「もちろんだよ! さあ、ルベルも」

「うんっ」

 彼女もなぜか俺と一緒に走り出す。チラッと横を見ると、白い歯を見せて笑っていた。


 振り返れば、魔女も邪神も邪竜姉妹も笑っていた。



 俺は食堂へ続く廊下を走りながら思う。


 ――俺の手に入れた笑顔。助けた世界。失われなかった未来。


 ずっと守り続けたい。


 この世界がいつまでも平和でありますように。


 心の底からそう願った。



 『世界滅亡評議会~五聖勇者アレクは世界一平和な美少女ハーレムを作る!~〈了〉』

 これにて完結です。お読みいただきありがとうございました!

 全部読んで面白かったら画面の下にある☆を5個、つまらなかったら1個ください。次書くときの参考にします。

 あとブクマまでして続きを読んでくれた19人のかた、嬉しかったです! ありがとうございます!


 ※追記

 新作始めました。長いタイトル。

『おっさん勇者の劣等生!~勇者をクビになったので自由に生きたらすべてが手に入った~』

https://ncode.syosetu.com/n8256gj/

 よかったら一話だけでも見てください~。ではでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コミカライズが二巻まで発売中の新作をどうぞ!

追放勇者の優雅な生活 (スローライフ) ~自由になったら俺だけの最愛天使も手に入った! ~【コミカライズ&書籍化!】

勇者をクビになったおっさんが、天使のようなヒロインをゲットして、ダンジョンマスターにもなって、いろいろ自由に生きていくお話です。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ