服の中身が知りたくて……⑤
朝のアラームで康太は目を覚ます。5時50分。すっかり彼の中で習慣となった目覚ましを慣れた手つきでとめる。不思議といい寝ざめだった。
康太は、昨晩どうやってベッドに戻って来たのか記憶をさかのぼるが、どう頑張っても思い出せなかった。あの怪物はすべて夢だったのではないかという希望が彼の中で湧いてくる。
夢だと思うことにした彼は、いつも通りに窓まで近づく。双眼鏡もいつもの机の上だ。カーテンをしめ、いつも通り6時のアラームを待つ。
しかし、アラームが鳴ってもサキの部屋の窓が開くことはなかった。康太の背後ではアラームが鳴り響いている。どれだけ待っても窓は開く気配を見せない。
「今まで通りの関係ではいられない」
ふいに康太の頭の中で言葉が響く。最悪の予感が思い起こされる。
康太はすぐに部屋を飛び出すとサキの部屋へと駆ける。やっぱり夢なんかではなかった、なんとなく思っていた予想が確信に変わっていく。秘密を見るべきではなかったのだ。小学生の時に読んだ昔話が康太の中で思い起こされる。覗いてしまったことに対して康太の中を後悔が襲う。
サキの部屋の鍵は開いていた。
部屋の中には生活感が見られなかった。しわのないシーツのベッド、からのごみ箱に中身のないクローゼット、どれも身支度を済ませた後のようだった。
「サキ…」
人気のなくなった部屋を見て、康太は静かに床に膝をつく。目には涙が浮かんでいた。康太の中にあった、昨晩の恐怖の記憶はすっかり寂しさに押し流されていた。自分の失ったものの大きさに彼は気づいた。
ひとしきり泣いたのち、ようやく立ち上がった。もう一度彼女を探そうと彼の中で新たな決意がわいてきた。サキのすべてを受け入れよう。まだかすかに残るサキの残りがをめいっぱい吸い込むとドアに手をかける。
ドアは開かなかった。
カギは確かに開いている。しかし、押しても引いてもドアはびくともしない。気が付けば足も何者かにからめとられていた。昨日の見えない糸だ。何度も何度もドアを動かそうとするがドアは音一つ立てずに何かに固定されている。焦る康太。
その背後でギシギシと足音が聞こえる。人間のものとは思えない冷たい空気が後ろに漂っている。
確かに彼の後ろに何かがいる。康太の耳元で足音の主はそっとささやきかける。
「捕まえた」
ドアはもう開かない。乾いた声が部屋の中で鳴り響いた
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