教えてッ!ヘスティア先生ッ!
間に合った、、、かな?(・∀・)?
「……むぅ?」
覚醒にはそれ程時間は掛からなかった。
約ニ・三分程で目が覚めたシキは直様身体に違和感が無いか確認する為に直に起きて立ち上がったのだ。
「うぉっ!?」
「おきた」
「――――――リゼ?」
立ち上がって直に気付いたのは、傍に居たリゼットだ。何やら心底驚いた様子である。リゼットだけではなく、ヘスティアもだ。
ヘスティアに関しては、基本無表情である為、表現以外の声や様子で察するしかない。兎に角、ヘスティアも驚いていた。
「……あれ、目線が――――――低い?」
目線が低い。
それは、つまり、どういうことか。
「まさか、こうなる、んだ……」
「むむむむむっ!?シキ、ちょいと失礼」
「――――――へ?」
ヘスティアが何やら納得している最中、リゼットはシキの身体をじろじろと舐め回す様に見たかと思うと、その刹那大胆な事を仕出かす。
具体的には、シキのズボンをガシッ!と両手で掴んだかと思ったらそのままズボッ!と下へ降ろしたのだ。
つまり、ズボンを強引に降ろしたのである。
更には、ズボンだけならまだしも、下着である黒のボクサーパンツまでも脱がしたのである。
妻の行動に、ヒャッ?と思考が停止してしまうシキ。
そして、そこを凝視する妻―――リゼット(+ヘスティア)。
「……ちゃんと、付いてるな」
「り、リゼさーん?」
「なあヘスティア様。なんで、シキがより女っぽくなってるんだ?」
「いや、あの――――」
「わかっ、た。教え、る」
「あ、このまま放置ですか。ま、いいですケドねー……元々裸族だし―――――(って、処女神ヘスティアの目の前でこんな格好……………死ねる)」
ズボンとパンツをリゼットに剥ぎ取られたシキは、シャツで隠しながら暫く傍観することにする。
ここから、何故か唐突にヘスティアによる講義的な何かが行われる。リゼットは真剣な表情である為、シキは余計に何故か言いにくそうになってしまう。が、ぶっちゃけノリノリのヘスティアに気分を害するのは避けていただけではあるが――――。
「こ、こほんっ!では、な、なぜ、シキがこんな姿になったのか――――――」
「あの、俺自身どうなってるの?鏡を―――――」
「結論を、言うと、シキの『天人族』と、『魔人族』、を封印した事によって、その、二つの種族的な特徴が無くなった、と、いうこと」
「ぁ、無視ですか、ソーデスカ……」
「ん?つまりどういうことだ?」
「今までの、シキは、『天人族』と、『魔人族』、を含めた姿、と、いうことなの」
「……なるほど?因みに今のシキは―――――」
「元々種族的に要素が強い人族・獣人族が強く、出てる。その次に妖人族、かな」
「へぇ。と、いうことは金髪オッドアイは天使?と悪魔?の要素?だったってことか」
「そういう、こと。シキの父親が人間で黒髪だったから」
「なるほどな………………いや待て。シオン達は――――――」
「シキの、子供は、だいじょうぶ。見ている限り、それぞれ二つの種族に絞られてる。シオンは、獣人族と妖人族の要素を強く、引き継いでた」
「…………因みにだけどよ。後学としてシキが有している種族について、教えてほしいんだけど」
「まか、せてっ!人族と森人族に関しては、教える事はないけど、妖人族・獣人族・天人族・魔人族。
まず、妖人族は、一言で言うと、産まれながら環境に干渉する力を、持ってる、の。人による、けど、自身の環境に干渉する力のせいで人に傷付けないか、とかで、心配性な妖人族が、多い。種族的にも、最も、数少なくて、孤独を好んでる…………けど、心を許し、自身を受け入れた相手には、トコトン、尽くす………ヤンデレになりやすい、から、気をつけて」
「……シキ?」
「いや、俺は違うから!ヘスティア様も言った通り、人によるから!」
「ヤンデレってなんぞ?」
「あ、そこから」
ヤンデレとは、と何やら専門用語的な単語にリゼットは首を傾げる。現代的な単語な為に、流石のこの世界の住人には馴染みがないのだ。仕方がないだろう。
だが、知りたそうにしているリゼットだがそれをヘスティアがヤンデレについて教える。シキも止めようとは思ったが、時既に遅し。ヘスティアの暇潰しコレクションにある漫画やアニメなどを観せられるのだ。
その結果、ヤンデレについて理解したリゼットは、シキに向けて優しく微笑んだ。
「―――――シキ、お前ヤンデレだからな?」
「………いや、いやいやいやいや。なんで?」
「だってお前、毎晩そんな感じじゃん」
「はぁっ!?」
まさかの暴露にシキは異議を申し立てるが、ヘスティアは『まあ、そうだよね。うん、知ってた』と何やら察した表情をしている為、今何言っても聞き入れてくれないだろう。加えてリゼットが「なら、アルとリアにも聞いてみるか?多分、オレと同じ意見だぞ」と二人の妻にも確認とっても問題無い、とのこと。
シキは「あれ…?俺、ヤン、デレ、だった……?」とショックを受けてしまう。
だが――――――。
「続ける、けど、シキは獣人族だから余計そうかも、しれない、の」
「どういうことだ?」
「獣人族、は、身体能力が、高くて。そして、種族の中でも、最も、愛情表現が激しい、の」
「愛情表現……あぁ〜〜〜」
愛情表現が激しい。
それはリゼットはバリバリ心当たりがあったのだ。理由は先程の述べた件と同じである。シキを見ていると未だに自身が実はヤンデレ(仮)だったとショックを受けていた。
すると、ヘスティアはリゼットにシキが聞こえない様に耳打ちをしたのである。
「リゼ、いいこと、教える」
「んぁ?なんだ?」
「今のシキ、無防備。首筋を、強めに、噛んでみて」
「噛むのか?」
「だいじょうぶ。むしろ、シキ、よろこぶ」
「―――――――怒られる時は、一緒だぜ。ヘスティア様」
「うぃっ」
ヘスティアの言葉に偽りはない、と判断したリゼットはショックを受けて白い灰と化していたシキの背後にそろり、と存在を消して――――――長い黒髪が垂れるその横、ちらりと見える白い首筋に歯型がつく程度に噛み付いたのである。
その結果――――――。
「あぁ゛っ!?」
「――――!」
シキはビクンッ!?と身体を反らせ、悲鳴にも似た声を上げたのだ。今までのシキには考えられない様な声。
流石にそんなシキの反応にリゼットも思わず驚いて噛み付いた口を離すと、そのままシキはへなへな、とその場に崩れ落ちてしまう。更には身体が痙攣したかの様にビクっ、ビクっと反応していたのだ。
「し、シキ?」
「はぁっ、はぁ……」
酷く病に犯されたかの様に熱の籠もった荒々しい息を立てるシキ。肩を揺すっても、ぐったりしている様子。言葉を掛けてもあまり反応はないのだ。
つまり、失神しているのである。
「ヘスティア様?」
「首筋に噛み付くのは、獣人族にとって、最大の、親愛の行為。つまり、えっちよりも、すごいこと。そこらの、えすえむこうい、よりも、ハードな、やつ」
「……………は?」
「因みに番同士にしかやらない、から。リゼなら問題無い」
「番同士って……待って。それ、オレ―――――」
「うん」
「はぁ……で、天使と悪魔は?」
「『天人族』と、『魔人族』、ね。
『天人族』は、白い翼を持つ―――――かつて、【大天使】と、呼ばれた神々の子孫。種族の中でも、唯一雷を操る種族であり、他の種族の、者が雷を扱えたなら、その者には天人族の遺伝子が引き継がれている証明と、なる。それ以外は、まず、雷は、使えない。
『魔人族』は、黒い翼を持つ――――――“最古のドラゴン”の子孫。姿形は、人と変わりないけど、力とその炎の力を、引き継がれてる。龍人族に、似ている、けど、根本的に姿形が、違うから、混合しちゃ、ダメ」
「――――――何か。シキは、神様の力と最古のドラゴンの力を封印した、のか」
「そう、いうこと。正直、ほかの人や神からすれば―――――強大な力を、姿を自ら捨てたような、もの」
「………………そう、か」
「けれど、弱くなった、と言われれば、それはまた違う」
「と、いいますと?」
「今までがおかしかった、ということ。つ、つまり、種族が安定してなかった、から、むしろ今の方が、安定、してる、の。今の、シキは獣人族と、妖人族が、合わさった【混合種族】――――[妖獣族]、“白妖狐”と人の、ハーフ、だから」
「ほうほう」
「妖人族の、気を許した相手に、トコトン尽くすヤンデレ素質、獣人族の激しい愛情表現……この、要素を兼ね揃えた、のが、[妖獣族]――――今のシキ、なの。だから――――――――」
「………なんか、嫌な予感がバシバシとするんだけどよ」
恐る恐る、失神して倒れ込んでいたシキの姿を確認するリゼットであったが――――――姿がない。そして、背後から、ヒヤリっと悪寒を感じる冷気に身を固まらせてしまうのだ。
何せ、冷気だと思っていたものは――――――白き尻尾。つまり、シキので間違いはない。が、同時に普通ではないことも理解していたのだ。
「し、しき、さん?」
「リゼ、リゼ」
「は、はぃぃっ!?」
背後から抱き着かれたリゼットは、思わず悲鳴を上げてしまいそうになってしまう。完全に尻尾でお腹に巻きつけられ、更にはいつの間にか両手は脇の下から伸ばされたシキの両手で指を絡ませていたのである。
無論、身動きは取れない。
今まで聴いたことのないシキの甘い、甘い声でリゼットの耳に名を囁くのだ。加えて発情したかの様な吐息を出しながらも、囁く耳に舐め上げたかと思うとそのままカプッ♪と甘噛をしてしまう。
「はむはむ……♪」
「し、シキ!?ちょっ、なんか、何時もよりおかし―――――へ、ヘスティア様!?」
「こればっかりは、無理。むしろ、今のシキを邪魔したら……」
「………………また、ヘスティア様か、リゼ。流石にこれ以上無視は、許さないから」
「ヒッ、ひぇッ」
ギロリ、と一瞬主である筈のヘスティアに一睨みするシキに、当のヘスティアは涙目。「よ、余計なこと、言わなきゃ、よ、よかった……」と後悔しているがもう時既に遅し。
リゼットに関しては、「や、や、ごめん、許して」と許しを請うが、それも既に遅し。しかし、これはシキが妖人族のヤンデレと獣人族の激しい愛情表現だ。
今まで、天人族と魔人族の種族を含んでいた為に、薄れていたのだ。しかし、今のシキは妖獣族と人族のハーフ。
濃厚に妖獣族としての特徴をより引き継いでもいたシキは―――――今、正常ではない。
原因は、余計な知識をリゼットに授けたヘスティアと、発情スイッチである首筋に噛み付く行為をしたリゼットなのだが。
余談ではあるのだが、これまでシキは何人かの女性と恋人な関係にはあったが身体を許したことはない。むしろ、シキ自身が貞操概念が高いからだ。しかし、それは理由の一つ。より身体の関係を持たなかったのは―――――種族的な原因。
ヘスティアが述べた様に、妖人族・獣人族のどちらの性質を有するシキは特に独占欲が強い。だが、それはあくまで契りを交わしてからの話。まだ恋人であれば独占欲やヤンデレの兆候、激しい愛情表現は生まれない。
もし、の話。
契りを交わした後に、浮気などをすればどうなっていたのだろうか。
それは神のみぞ知る、としか言いようがないが確かな事は一つ。
「今から、部屋に、行こっか?」
「―――――――」
無造作にリゼットを抱き上げると、そのまま有無を言わさずにこの部屋から退出してしまうシキ。そしてその姿を、怯えた表情で眷属とその妻の後ろ姿を見送ったヘスティアは「り、りりりり、リゼ、ご、ごごごごめ……」と恐怖に染まっていた。
シキは部屋の直隣にある寝室に入り、扉が締まりそうにかる刹那、締まる前の扉の隙間から聞こえてくる。
――――――お、おぃっ!?昨日散々――――って、話を聞けっ!?ちょっ、待……………ッ!そ、そうだ!今日の晩飯、当番オレだからよっ!……ぇ、『俺がやるから心配しないで』って……や、だ、大丈夫だから!ま、待てってッ!今朝も少し―――――は?ま、満足出来ないからって、や、やめろッ。いろんな、こと、しようとか、や、ヤダヤダヤダ、身体持たねぇから!やっ、やめろぉぉぉぉぉお―――――――ッ!!!
バタン、と扉が閉じられた瞬間声はシャットダウン。部屋は防音な為、その後の物音は一切聞こえてこない。
まるで、処刑宣告されて罪人が必死に命を乞う様に、ヘスティア様は静かに両手を合わせて「今度、リゼの、手伝い、しよ」と若干反省の色は見せつつ同時にプライバシーの侵害をする。
具体的には、両手で望遠鏡の形を作ると今、情事が起こっている部屋内を除き見するのだ。そして暫くその様子を観察するヘスティアは見てしまう。
“ヘスティア様、覗き見とは……いい趣味されてますねぇ?”
「ひぇっ!?ッ、ぴぎゃぁぁぁぁぁぁあ!?!?」
問答無用に、除き魔のヘスティアに主は言え呪法により、一時的に目潰しをするのだ。今のシキは神であろうと容赦はしない。
約数分後、目潰しの痛みにのた打ち回るヘスティアを発見した女神達であったが、何となく状況を察して暫くそのままヘスティアを放置するのであった。
シキの最も弱い要素の種族は《森人族》です。が、遺伝子はあるので、、、。
加えて、それぞれの種族に変身できるのはシキの努力の賜物だと思ってください。




