神止め
感想、ありがとうございます(・∀・)
アニメやゲームのキャラクターに憧れていた。
特に世界を救った正義の味方やヒーローみたいな主人公に。
皆を守って、敵を倒して。
そうして皆から感謝されて、めでたしめでたし。
そんな簡単に物事が終わる事に、憧れていた。
実際は、その物語の後が描かれていないだけで、もし仮に描かれていればそんな簡単な話じゃないかもしれない。
けれど、頑張った事に大小関係無く何かしらの見返りがあるのは……少し、嫉妬してしまう。
だが、現実は違う。
守っても非難され、敵を倒して、更にはそのボスまで倒してしまえば世界のパワーバランスが崩れてしまう。そうなれば、何が起きるか予測がつかない。
ボスの敵討ちに、世界中で暴れるかもしれない。そのボスを倒す事で、抑えていた他の勢力が活発化してしまう可能性は極めて高い。下手すれば、その勢力のボスに成り上がろうとする者や新たな勢力が生まれれば事態は最悪だ。
誰もが一度は平和について、思うことはあるだろう。
平和とは、“バランスに保たれている”事だ。
勢力均衡、と言えば分かりやすいだろうか。
正義も悪も、バランスが取れている状態が“世界にとっての平和”だ。その各勢力のバランスを保つ為には、互いが互いを監視し合うこと。
そのバランスを崩そうとする勢力があれば、力を削ぎ落とす。倒す事は余計なバランスを崩し、最悪な展開に成り得る。
そんな事はない、と言い切れるか。
自己満足な正義や悪こそが、バランスを崩壊させる要因だ。その自己満足な事を仕出かした後の尻拭いこそが、対極する存在であったりする。
この世は、善と悪は共存しているのだ。
人の世で生きていくのならば、現実を生きていく内はそれを理解しなければならない。
大抵その悪は、必要悪。
無くてはならない人類の影。
光の下、影が生まれる様に必ず必要なのだ。
その光が強くなれば、必然的に影も濃く広がっていく。
――――――――あぁ、面倒だ。
正直、[深淵]としての本音はこれだ。
何せ、“バランスは崩れるもの”。
故に平和なんで続く筈がない。
バランスが崩れる要因なんて、些細な事が始まりだ。それは敵の勢力や己が所属組織だけではなく、それ以外の要因もある。大抵、予想がつかない事が殆どだ。
世界も情勢も、そして己自身も。
バランスは何れ崩れるものだと考えるしかない。
だけど、まさか自分がこんな事になろうとは予想すら出来なかった――――――。
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《神止め》
それは封印の中でも超次元である存在、神をも完全に封印してしまう最高位封印の名である。しかもその封印の方法はシンプルではあるものの、非常に厄介であり手間がかかってしまう。
故に、戦闘向けの封印ではない。
一般的に使える者は殆ど存在せず、神であっても数える程。
神話や伝説で描かれている神・妖精・英雄であれば自ら《神止め》を行い引き籠もったという馬鹿げた使い方をした『天照大神』を初め『女神モイラ』や『タルタロス』、『ヴィヴィアン』、『ヘラクレス』、『スラエータオナ』等が有名である。
しかし、《神止め》という封印は神や妖精、英雄によって規模や効果には差がある。無論、神・妖精・英雄の《神止め》はそれぞれ長所短所がある為に簡単に優劣は付けられない。
そして《神止め》は主神でも扱える者は殆ど居ないが、数少ない使い手には『ヘスティア』も含まれていた。
「本当に……いいの?」
「お願い、します」
現在、シキとヘスティアはシキの自室にいた。
シキの自室は資料や本等が置かれた書斎みたいな場所だが、その中心の床には複雑な魔法陣が描かれていた。
その魔法陣は西洋風ではなく、東洋風にも混じっている。魔法陣というべきか、それとも神法というべきか。
魔法陣の上にシキが立っており、その外にヘスティアが空中にも数多の大小様々な魔法陣を展開していた。そして魔法陣の左右には大人一人分は入れる小さな白き鳥居が立っていた。
白き鳥居の前には、天使と悪魔。
シキの分身であり、『天人族』と『魔人族』の姿。しかもその種族そのものの力を有した姿でもある。しかし、その『天人族』と『魔人族』の分身は自らの身体を拘束されていた。
拘束と言っても、両腕を前に鎖でぐるぐる巻にされた上にそれを覆い隠す封印の符によって封じ込められている。加えて翼も同じく符で開かない様にされていた。
しかし、無理矢理ではなく『天人族』と『魔人族』もシキ本人であり自らの意思で力を封じ込めていたのだ。
理由は、やはり前の出来事が関係している。
シキは、恐れていたのだ。
一時的ではあるが、意識を乗っ取られたのだ。一度や二度、と思われてもシキにとっては一度だけでも致命的。それが他者に被害を与えてしまうなら尚更だ。
故に、即断した。
己の自我を乗っ取ろうとする可能性がある危険な己の一端、『天人族』と『魔人族』の力そのものを封印するしかない、と。
シキは、魔法による封印は使えはするだけで得意としていない。いや、そもそもシキは魔法を得意としていない。故に己自身での封印はあまりにもリスクがある。
完全に封印出来るかどうか、も含まれているが己自身が封印した際に“『天人族』か『魔人族』によって小細工をされる”可能性が捨てきれない。
故に、“神止め”を扱えるヘスティアに頼んだのだ。本来ならばそんな事をする事はないが、唯一の眷属であるシキであるからこそ、受けたのである。
「…………わかっ、た」
ヘスティアは“神止め”を発動する。
白い鳥居の入口が、突如渦巻いていく。その行き先は不明だ。しかし、その渦巻き歪んだ空間はまるで中央に座るシキに繋がっている。
「――――――――神域、展開」
歪な音を鳴らしながら、ヘスティアは目視でシキに合図を送る。それを理解したシキは、白い鳥居前に力を封じていた『天人族』と『魔人族』を動かすのだ。
具体的には、『天人族』と『魔人族』をそれぞれ目の前にある白き鳥居を潜らせる。しかし、それはシキ自身の身体に封印するということ。
どちらも抵抗なく白き鳥居を潜った瞬間、『天人族』と『魔人族』のシキの姿は消えてしまう。それと同時に白き鳥居は崩壊していき、そのまま微粒子となる。それだけではなく、そのまま砂のようになった白き鳥居はシキの身体へ入っていくのだ。
「――――――――っ!?!?」
封印とは、簡単ではない。
それはその封印の手法だけではなく、その封印となる器が耐えきれるかどうか、という二つだ。しかし、シキに関しては問題は無いと思われていたが、悲鳴も上げられない程の激痛が襲い掛かる。
「――――――ヤッ、これっ!?ぐぅっ!?」
予想外の激痛に、その場で苦しみ悶えるシキ。
既に《神止め》による封印は完了しており、シキが悶え苦しむ床には魔法陣などが綺麗さっぱり消えていた。
「だっ、だいじょ……………ばない?」
「ぜっ、全然、大丈……ばないで、す…………か、からだが、ぐちゃぐちゃ……なんと、いいますか…………作り変えられている、感じ……ぐびゃぁ………っ」
「つくり、変えられてる……?もしか、して……」
「もっ、もぅっ、げっ、げんか………………………きゅぅっ」
「あ……………気絶した」
痛みと苦しみにより気絶したシキ。
目を回しながら倒れるシキに、ヘスティアはピコピコと揺れる黒い狐耳を突くのであった。
因みに、この後異変に気付いたリゼットが乗り込みこの現状に困惑するのは言うまでもない。




