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問題児



バハムートと女神クシャル等に倭国カグヤに攻められた件は数日後には修復作業に取りかかっていた。犠牲者はゼロ。これはカグヤの王による『王者の導き《キング・オブ・オーダー》』が全国民の痛みと苦しみを全て肩代わりした結果である。当のカグヤの王はあの後直ぐに医師達によって緊急手術し、現在は命の別状は無く療養中だ。


学園も学園長であるビティーカと他の魔王達によって1日で修復されている。だが、急ピッチで修復した為、何処か不具合があるか確認する為に更に1日費やしていた。国民達の住まいも国やギルドによって普及作業を行い、元の状態になるまで約一週間で終わってしまう。


そして、学園は更に一週間後に再開されるのであった。



「───で、お前達。何か言い訳あるか?」



現在、分身ではあるが白衣の保健の先生シキが椅子に座って目の前に正座している生徒二人に対して怒りを露にしていた。


その生徒二人とは、『勇者』の一人朝比奈(あさひな)梨央(りお)と副将軍の息子、『リト』である。



朝比奈梨央とリトは単独で女神クシャルの眷属と交戦したのだ。分身の一人である"六華"が逃げる様に言っていたが、眷属は『勇者』を狙っていた。だからこそ朝比奈を逃がそうとしたのだが、当の本人は頑なに逃げる事はせず戦いに参戦していたのだ。リトも同様で一人で女神の眷属との戦闘を繰り広げていた。しかし、教師であるシキからすれば戦わずに逃げて欲しかったのだ。後からこの事実が判明し、次回から全力で逃げなさいと伝えても快い返事はこの二人から無かったらしい。


その結果、何故かこの二人をシキが面倒を見る事となってしまった。というより、朝比奈梨央は同じ地球人としてどうにかしろと学園長からの御達しである。学園長ビティーカも怪我の影響で暫くは表には出られないらしい。リトに関してはシキしか言うことが聞かないと周囲から知られているらしく、じゃあシキ先生にやってもらおう!という結論になってしまった。



「……もっと、強くなりたいです」


「神の眷属っていっても大した事無いですね」


「反省の色無しか、馬鹿者」



シキは思わず頭を痛めてしまう。


朝比奈は完全に強くなる事しか興味の無い戦闘狂と化していた。リトはリトでシキから教えられた事を忠実に守って鍛練した結果、確実に戦闘能力が上昇している為に少し慢心している。だが、シキはその事に気付いておりどうしたものかと考えてしまう。


朝比奈もリトも、二人とも天賦の才を有している。だからこそ、シキは二人の気持ちが判らない。特訓や鍛練してこれ程、ゲーム感覚で努力を裏切らない様な感覚は知らないのだ。自分はどれだけ努力しても成果が見られなかった事など、ざらである。才能が無いからこその、辛さをシキは知っているのだ。


故に、朝比奈とリトは危うい状態だと判っていた。


これが単なる命に関わらぬ事、殺し合いで無ければ、シキもここまで危険視する事はない。だからこそ、二人には現実を知らなければならない。



「……放課後、第二グランド場に来い」



「え?」


「先生……?」




彼は二人に、身体で叩き込もうと判断する。


命の大切さを。


そして、殺しという悲惨な現実を───。




~~~~~




暗黒に包まれた空間の中、そこには王座があった。


王座は、王が鎮座すべく全て黄金によって作られている。更には大きさも人ひとり座るには大き過ぎるものだ。


そんな王座に座る者がいる───。



その者の名、高頭(たかとう)夕佳里(ゆかり)。



彼女は『報復者(エリニュエス)』のリーダーであり、今ではこの地球では五大勢力の一つとして数えられる巨大組織。服装や武器は今までとは異なり、大人気ゲーム『リンク大戦』の真ボス"フルドン"が装備している《八咫之衣》という黒を基準とし、黄金の紋様が刺繍されたコートと鎧一色である。そして武器はアニメ『奇跡の道』主人公"リリリア"の大剣"断罪剣リッヒテン"と魔法女子高生』の主人公、佐良莉愛の魔装"骸神シュッツガイスト"という、まるで彼女の背後から和の甲冑を纏う巨大な隻眼の骸がゆらゆらと蜃気楼の様に現れていた。


今の彼女は他の組織から危険視される存在となっている。当然彼女が纏め上げた組織『報復者(エリニュエス)』と共にだ。


そんな王座に鎮座する高頭夕佳里の前に、一人の女性が膝を着いて頭を垂れていた。


女性は、この世が生み出したとは思えない程"完成された美"。どんな遺伝子操作しても、これ程完全完璧な女性はこの世にはいない。だからこそ、人によっては人の手によって(・・・・・・・)直接何もかもが作り出されたと思ってしまう。


それは、正しい。


彼女も、高頭夕佳里同様にアニメの存在だ。


名を"サラ"。


『歌姫戦乱極上バトル』でのキャラクターであり、高頭夕佳里と争う程の人気アニメキャラクターである。そして彼女がキャラクターの中で珍しい能力を保有しているのだ。


それこそが、"予知夢"である。


本来は歌と"予知夢"なのだが、高頭夕佳里の力『架空を現実に《アエリアルリアリティー》』によって彼女本来の能力だけでなく他のアニメやゲーム等のキャラクターの力をも含まれているのだ。


所謂、《複数能力者(マルチアビリティー)》だ。


高頭夕佳里はサラから聞かされた内容に興味を示していた。



「───この地球に……覇者が不在、だと?」


「えぇリーダー。この地球にはかつて(・・・)、アビス(・・・)という人間が地球の覇権を握っていました。実質、地球唯一の覇者……ですが、その者が戦死し、今では覇者が不在の様子。がら空きのその覇者の座を他の戦力───≪WAO≫を始め、≪理想(イデアル)≫・≪|《粛清ジャッジ》≫・≪悪戯(フール)≫の面々が狙おうとしています」


「ほぅ……それほどなのか?そのアビスという者は」


「えぇ、それはもう(・・・・・)。失礼ながら今のリーダーでは……」


「わかっているさ。私もあの者達(・・・・)と一戦交えたが……覇者となればそれより上か」


「あの『マリス』と名乗る者達は……?」


「彼等は我々の同志。彼等のリーダーとも話したが……裏切る可能性は低い」



マリス───"ハナ"と"ヤム"とその他の者達。サラはその者達に随分と警戒していた。しかし、高頭夕佳里は彼等マリスを信頼している様だ。だが、だからと言って腹を全て明かしている訳ではない。あくまでも同盟である。どちらが上下は無いのだ。


高頭夕佳里はそのまま脚を組み直して、面白そうな表情をしながら呟く。



「ふふ、私がこの世界の覇者になるのは、面白そうだ」



一方のサラは頭を垂れながら、その美しさは一切崩さぬ意味深な笑みを浮かべた。



「(姫希(・・)、次こそ(・・・)貴方と……)」



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