かつての記憶
遅れた理由……。
FGOのイベントを無我夢中でやってました。
というか、今回のイベントで千子村正出るんじゃないかと予想してます。
理由は、桜と黒桜。そしてエミヤオルタと何か関わりがあった?(多分)キアラ。そして柳生さんは千子村正が初登場したストーリーで敵役としていたから。そして多分武蔵も出そうだし……。
……多分CCCコラボの様な展開になりそうでも?
まっ、とりあえず……遅れてごめんさい!
ではっ、どうぞ!
『雲の柱』の最上階。
そこは最も宇宙に近い存在である。
本来は雲の上は濃い青の宇宙が広がっているが、不自然にも『雲の柱』は星の膜を無視して聳え立つ。雲は上にいくに連れて山のように尖っていた。
『雲の柱』、最上階には一体の黒龍が唸り声を上げていた。
その黒龍の名は『バハムート』。
かつて、『リヴァイアサン』・『ベヒーモス』との海の覇権争いで敗れた存在だ。
敗れた時はまだ巨大な魚であったが、今では少しその名残がある立派な黒龍となった。黒龍となった『バハムート』は『飛大竜』の支配者となり、『雲の柱』の王者として君臨する。例え相手が神であろうとその悉くを討ち滅ぼした。
その為に『バハムート』は神々から恐れられる獣とされていた。
ーーーグルルゥ……。
バハムートは、今にも怒りを爆発しそうになっていた。
前に『リヴァイアサン』が目覚めた時、長い眠りからバハムートも目覚め最大の宿敵を倒そうと『雲の柱』から飛びだった時だ。
あの翡翠の巨鳥が、まるで『リヴァイアサン』と接触するのを阻止するが為に攻撃を仕掛けてきたのだ。そして激戦の末、バハムートが勝利する。翡翠の巨鳥はバハムートの無慈悲な破壊の数々により、身体を塵に返ってしまった。だが、翡翠の巨鳥との戦闘で無傷では済まなかった。
角や牙が折れたり、身体に無数の傷が負わされていたのだから。
しかし、既にその傷や角、牙は完全に治癒されている。
今バハムートが憤怒しているのは、己の巣である『雲の柱』が何者かによって崩されたのだ。直ぐにバハムートの力によって『雲の柱』は修復されたのだが、自分の根城とする『雲の柱』を崩そうとした輩を許すわけがない。
辺りを見渡すが、目では敵らしきものはない。
そして、感覚を極限に研ぎ澄まし、『雲の柱』下にある大地、その大地から更に遠く広く気配を探っていく。
ーーー!
バハムートはある気配を見つける。
気配は無数にあり、どれも桁外れであるがある場所に密集しているのだ。
明らかにおかしい。
その密集している桁外れの気配の中にある存在を感知した時、バハムートが思わず咆哮を上げてしまう。
バハムートが放つ咆哮は飛び交っていた『飛大竜』達の意識を刈り取ってしまう。しかし『|雲の柱』は単なる雲ではなく、魔力の塊・常に真上に舞い上げられる暴風によって重力に逆らって落ちてしまう『飛大竜』達はその様な事にはならずに浮遊していた。
ーーーグギャァァガゴォアアアアア!!!
バハムートは大きなその漆黒の翼を広げ飛び立った。
忌々しい"神"がいる倭国カグヤへーーー。
~~~~~
「みゅー!みゅ~!!!」
「お、おぃ、どうしたんだよ『ミユ』」
『七天魔皇』の娘、エマは『カグヤ』に攻め込んできた女神クシャルとその眷属から避難して腕の中にミユを抱き締めて人目の着かない場所へ身を潜めていた。勿論その場に直属の部下である狐の仮面を被る狐の獣人ジュドーラも辺りを警戒している。
そんな中、エマの腕の中にいるミユは今までにない尋常じゃない程号泣していた。そして身体は痙攣の様に震えている。まるでとても怖い夢を見てしまったかの様な……。
「どうしたんだよ、ミユ……。只でさえ意味わかんねー奴等が攻め込んでくるわ、どうなってんだ?」
「カグヤを攻め込んで来たのは紛れもなく"神"。"神"が一国を攻め込むなど、聴いたことがありませぬ」
「ヘムンドゥの奴も何処に行ってんだ?昨日から姿を見せねぇし」
「……それに先程の地震、あれは流石に堪えた。恐らくカグヤ側や侵略者側にもイレギュラーな被害を受けている」
「だ、な。っちくしょう……地震が無けりゃぁ、鬱陶しい神の眷属纏めてぶっとばしてたとによぉ」
「で、どうするエマ様。このまま身を隠すか?」
「……そう、だな。今はミユをどうにかしなくちゃな」
「御意」
エマは尋常な怯えかたをするミユを包み込む様に抱き締める。このままミユの恐怖を沈めるように。そしてミユがその恐怖によって壊れてしまわないように。
「みゅーっ!みゅぅー……」
「あぁ、大丈夫だ。ミユ」
~~~~~
ヘムンドゥが"波動の撥"による衝撃は倭国カグヤ全域に広がっていた。その衝撃は振動となり、大地だけでなく天や空間をも揺らす大地震となって襲い掛かったのだ。
それは、倭国カグヤやその倭国カグヤに侵略してきた女神クシャルとその眷属にも甚大なる被害を被った。その被害を被ったのは、倭国カグヤで戦う者達。そしてーーー。
《ぐっ……不覚を取った、か……!》
カグヤの南部。
そこでは、最初は優勢であったが今は劣勢になったシャドーの姿があった。
シャドーを取り囲む氷の柱。その氷の柱から蜘蛛の巣の如くを細く、そして幾つもの氷の糸が存在している。その氷の糸や柱からシャドーの鎧を粘着材の様にへばりついていた。他にも氷の針も刺さっていたがシャドーの鎧"影鏡の鎧"を傷一つつけられていない。
「流石に取れないでしょ、それ。貴方専用に今さっき生み出したの。それに相手が例え光そのものでも捕らえるのも生み出したし」
シャドーの目の前に仮面女が現れ、彼女は横目を見ながらまるで闇を宿した粘着材に捕らえられた『神聖帝獣ナテアクナラ』を嘲笑っていた。
この状況になったのは、仮面女の力だけでない。
先程起こった大地震のお陰でもある。
その大地震の影響により、シャドーだけでなく『神聖帝獣ナテアクナラ』の動きを鈍らせたのを逃さずに即席の力で拘束したのだ。
「(それにしても、さっきの地震何よ……?あのクシャルが仕組んだ、のは有り得ない。こんな馬鹿げた自然は、偶然……?にしては、かなり堪えるわ。この戦いをさっさと終わらせて、休もうかしら)」
仮面女は大地震の影響を耐え抜きながらも拘束されたシャドーの目の前に歩んでいく。手には薙刀無く、離れた場所で地に突き刺さっていた。恐らく戦いの中で手を離してしまったのだろう。しかし仮面女は両手に武器がない状態でも全く気にせずに歩んでいくのだ。
「さ、これでもう終わりよ。貴方の次はあの龍ね」
《……ほう、既に勝った気でいるか》
「えぇ。貴方の"影鏡の鎧"と"影鏡の剣"、そしてあの光の龍を拘束したのは光と闇、[神気]を宿した氷。影には全てを照らす光を、光には光を……つまりそういうことよ」
《影を無くし、光を光で捕らえるか……》
シャドーが纏う"影鏡の鎧"と武器の"影鏡の剣"は相手の放った魔法等の影から|鏡の様に同じ力を磁石の様にぶつけ、相殺させるものだ。だが、その影を無くせばいい話。しかしそれを実行するのは安易ではないのだ。『神聖帝獣ナテアクナラ』に関しても光そのものである。光を捕まえるのはほぼ不可能だ。が、同じ光であれば解決すること。しかし『神聖帝獣ナテアクナラ』程の存在であれば同じ光でもそう簡単にはいかない。それは仮面女の光の力ではまだ足りない。だが、それを補う為の闇の力である。これによって、シャドーと『神聖帝獣ナテアクナラ』は見事に拘束されたのだ。勿論大地震の影響も大きい。
「さっさと終わらせるわ。その鎧に憑いたアンタを倒せば終わりよ」
そう言う仮面女は、完全に身動きが取れないシャドーの顔に向けて手を伸ばす。仮面女はシャドーごと凍らせるつもりだ。
しかし、シャドーは余裕の様子で言い放った。
《残念だが、我はそれでは終わらんぞ?》
「は?なにをーーー」
何かが外れた音が鳴る。
それはシャドーの鎧から。
仮面女が気付いた時には、シャドーが身に纏っていた"影鏡の鎧"は綺麗に正面から砕けたのだ。
砕けたといってもバラバラになったわけではない。
解りやすく言うならば、組み立てたプラモデルがパーツ事に綺麗に分解されたのだ。
仮面女は、唐突な出来事に一刻も早くシャドーを氷付けにしてしまおうとする。
しかし、早かったのは……シャドーの中に潜んでいた存在であった。
「ーーーーぁ」
シャドーの崩れた胴体から現れたのは、銀の瞳を持つ全身真っ白な絶世の着物美少女『ユキ』であった。
そのユキを見た瞬間、仮面女は何か衝撃を受けてしまったかの様に動きを鈍らせる。いや鈍らせるのではなく、完全に動きを止めてしまったのだ。
目の前には右手の拳を握ったユキが、彼女の顔面に向けて拳を放った瞬間であった。
ユキが放った拳は、仮面女の仮面を被った顔面に吸い込まれる様に直撃してしまう。
「くっ、あぁ……っ」
ユキの拳で吹き飛ばされた仮面女は地面に叩きつけられる。そのまま立ち上がることなく仰向けに倒れ込んだままだ。仮面は下半分が破損したが、その仮面の力なのか少しずつ修復されていく。
そんな中、仮面女は今にも泣きそうな悲痛な声を漏らしてしまう。
「なん、で……」




