どうやら罠の原因は
意識を取り戻した冒険者は、片方が茶色の髪をポニーテールにした青い瞳の女性で、賛成の方は黒髪に青い瞳のどちらも30代くらいの人物だった。
女性のほうが二本の短剣、男性の方が弓を持っている。
弓と両手で剣を使う組み合わせなのだろうかと俺が思っているとそこで女性のほうが俺達に、
「先ほどはありがとうございました。突然水が溢れてきて、急いで逃げたのですが間に合わなくて。あ、私は絵里といいます。そして彼が、三郎」
「俺は、アキトです。それでこっちが火瑠璃で、こっちが氷子です」
俺が火瑠璃達を紹介するとそこで三郎が、
「氷子さんですか。先ほどの雷はとてもよかったです」
「でしょう! あれをやるとどんな人でも速攻で起きるんですよ。火瑠璃が朝なかなか起きない時によく使っています」
実はあれを火瑠璃はよく使われていたらしい。
ただ俺には使ってこないのでよかったと思う。
でも雷がとても良かったって、先ほどの実力行使は魔法も一緒に使っていたのだろうか?
そしてそれが気持ちよかったってどうなんだろうと俺が思っていると、そこで氷子が、
「でも最近、朝はなかなか起きない火瑠璃が起きるようになって、使う機会がなくて」
「そうなのですか。何だか体のこりがほぐれてとても良い感じです」
どうやらマッサージ? 効果があったようだ。
異世界の形態はよく分からないが、そうらしい。
ただこの感じではこの世界では一般的だろうと俺は思う。
だが、火瑠璃が起きるようになったというのは初耳だった。
俺が起きるとたいてい二人は起きていたから。
俺もこれから早起きをしないと、あの氷子の謎の攻撃を受けざる負えなくなるかもしれない。
そう考えてこれからは早起きをしようと思っているとそこで、絵里が深々とため息を付いて、
「でもあんな所に罠があると思わなかったよ」
「だから、あんなふうに思わせぶりに氷の魔石が置いてあるのはおかしいって言ったじゃないか」
「でも、三郎。あれ、とっても大きかったししばらく生活に困らないよ?」
「それはそうだが、命をかけても仕方がないだろう。こうやって助かったんだから今日はこのまま帰るぞ」
「うー、はい……」
不満そうに頷いた絵里。
それを優しげに三郎が見ている辺りお二人は……と俺がいろいろ察していたところで気づいた。
もしやこの人達が罠にかかったから俺達は巻き込まれたのだろうか?
周りを見回すと他の人達は聞いていなかったようなので俺はそれ以上突っ込まずとりあえず、
「服を乾かしましょう。とりあえず炎だけを生み出す魔法でいいかな」
そう俺は呟く。
いつまでも服が濡れたままでは風邪をひいてしまう。
先ほどの水も冷たく、この部屋も気温が低い。
そしてこういった温まるのに丁度いい、以前イベントで使ったキャンプファイヤーなる魔法が存在する。
ゲーム内ではそれを使うと唐突に、丸太が組まれて炎が燃え上がるあの、修学旅行などで味わったことのある、炎が浮かび上がるのだ。
それを思い出して選択画面から下の方にカーソルを合わす。
イベント関係の特殊魔法はこのその他の項目だったはずだと思って探すとすぐに見つかる。
取り出した紙に中であまり濡れていないものを取り出して、魔法を選択。
赤い光とともにキャンプファイヤーのような絵柄が浮かび上がった。
これはこれで、そのままなのはどうだろう、ちょっとひねりがほしいと俺が贅沢なことを考えつつ、
「“発動”」
呟くとともに、キャンプファイヤーが現れた。
ぱちぱちといった木の弾ける音と共に温かい熱を感じる。
絵里と三郎が、変わった魔法ねと言っているがそれ以上追求してこなかったのでよかった。
そしてその熱に俺は、段々くらくらしてきて、
「温かい、何だか眠くなってきた」
「! アキト、眠ったら駄目よ!」
火瑠璃が焦ったように俺に言ってくるが、俺はすぐに冗談だよと付け加えた。
そして炎に釣られたのか他の冒険者達が焚き火に集まってくる。
それはそうだろう、全員が先ほどの水にのまれていたのだから。
なので集まってくる彼らを放置して、俺達も服を乾かすために火にあたる。
本当なら濡れた服は脱いだほうがいいのかもしれないが、それはそれで寒い。
そこで俺は遠くのほうで何か振動を感じる。
「火瑠璃、何か大きなものが動いてくる気配がしないか? 振動を感じる」
「アキト、怖いことを言わないでよ。私は何も感じ無いけれど」
「そうか? 俺の気のせいかな」
「気のせいだと思う。氷子はどう思う?」
「私は特には感じません」
そんな二人の答えに、俺は気のせいかなと思っているとそこで、先ほどの全ての元凶であった絵里と三郎の二人がハッとしたように振り返る。
その場所は壁だった。
だが俺もそこから振動を感じるのだ。
壁のはずなのに。
そう思っているとそこで絵里が、
「危険な魔物が来るかも。準備しておいたほうがいいわ」
そう告げたので、俺達とその側にいた冒険者8名は、キャンプファイヤーに背を向けるようにして辺りをうかがう。
そこでようやく大きな振動を感じるようになって、その音が近く、大きくなっていき……そこで、氷の壁が崩れてそれが姿を表したのだった。




