つい強力な技を……
ガラガラと崩れおちる氷の壁。
轟音と共に姿を現したそれは、大きな茶色の鳥に四本の象の足を付けた怪物だった。
所々に氷の様な装甲がついており、見るからに固く、冷気を放ちそうな雰囲気である。
周りで悲鳴が上がる。
幾人かの冒険者がこの場から逃走しようと走り出している。
そこで火瑠璃が、
「ちょ、何でこんな所に“冷鳥”がいるのよ」
「? そんな強いのか?」
「強いなんてものじゃないわよ! あれくらいならまだ小さい方だけれど、あの鳥が本当に恐ろしいのは……」
火瑠璃がそこまでいいかけてそこで、その“冷鳥”なる物が大きく首の部分を天に向けて、
「ぎょぎえごいええええ」
耳をふさぎたくなる咆哮を発する。
空気の震える音がびりびりとすると同時に悲鳴が上がった。
「逃げ場が塞がれた!」
名前もしらぬ冒険者が絶望した様な声を上げる。
見るとこの広い場所にあった出入り口の様な物が氷でふさがれている。
つるつるとした表面の氷でふさがれているのを見る限り、ここにあの怪物が現れると出入り口が封鎖される仕様なのだろうか?
俺が、よくありそうな設定だなた一人で感心しているとそこで氷子が、
「戦闘の準備をしないと、一杯来るから……」
「一杯? これから何か来るのか」
俺が問いかけると同時に、風が吹く。
羽の音がするから、この怪物が羽をばたつかせているのだろう。
同時に何かが転がってくる音が聞こえる。
ごつごつごつと堅そうな岩が転がる、そんな音が響く。
それも一つや二つではない。
風の強さに俺は目を閉じていたがそれが収まったので開くと、そこには辺り一面にあの大きな怪物の小型化した様な、俺の足の膝くらいまでの大きさである。
そこで、先ほど助けた絵里と三郎が走りだす。
次々と弓で仕留める三郎、絵里は剣で倒している。
すでに他の冒険者達も覚悟を決めたらしく応戦を開始している。
火瑠璃は数匹に向かって炎の攻撃を喰らわせて、氷子は氷の槍で串刺しにしている。
俺も何かしないとなと思って、放出系の炎の魔法を探す。
紙が濡れてはがしにくいが、作った魔法は固定されているのか紙がよれても特に影響は無いらしかった。
そして濡れていてもそこまで問題はなさそうだ。
とりあえずこれだったよなと俺は冒険者達がいない方向で、本体も含めた広範囲に向かって紙を自分の前に掲げて、
「“発動”」
その一言で紙が赤く輝き、放出し増幅する為の魔法陣がその掲げた手の前に四つほど赤い光の魔法陣が浮かびあがり、その中心部から徐々に大きく広がる炎が一気に噴出する。
あまりの炎の眩しさに目を開けていられないので俺はつむる。
ごうんっ
凶悪な炎が噴出される魔法だ。
広範囲攻撃の魔法である。
周辺を一掃する魔法であって、ゲーム内ではそこまで感じなかったが実際に自分が使って見ると、これはやりすぎたかもしれないという気持ちが生まれる。
だがやってしまったので、もうどうにもならないと俺はすぐに開き直ったが。
そしてこの炎の爆風が収まると同時に、俺はようやく目を開く。
目の前には何もなかった。
よく見ると橋の方にそれらが残っているが、先ほどの大きな怪物は見当たらない。
何処に行ったのだろうと思って俺は天井を仰ぐが、何処にもいない。
妙だなと思って目を凝らすと、その“冷鳥”がいた場所に水色の塊が落ちている。
……。
俺は沈黙して、近くにいたはずの火瑠璃と氷子を見ると二人共凍りついたように固まっている。
しかも、周りの冒険者もだ。
これはもしややり過ぎたのだろうかと焦っているとそこで、いち早く立ち直ったらしい火瑠璃が、
「そ、そうよ、とりあえず強力な技で倒したから、残りの雑魚を全部倒すわよ!」
火瑠璃の号令に各々が動き出す。
じゃあ俺ももう一発と思って紙を取り出すと、そこで火瑠璃達の動きが一瞬止まるも、火瑠璃が俺の傍に来て手を握って、
「大丈夫、ここまできたらそこまでの技は必要ないわ。こまめに一つづつ倒していけばいいから」
「じゃあ俺も……」
「アキトは疲れただろうからここでお休みしていてね。……他の人達がさっきの技で警戒しているから」
最後の方で小さく小声で付け加えられた言葉に俺はなるほどと思う。
火瑠璃はそういった点も考えてくれたのかと俺が思っている内に手をはなし、残りの敵を倒しに向かう。
それを見送りながら俺は、このままぼんやり立っているのはどうだろうと思っているとそこで先ほど助けた冒険者の絵里が、
「アキトは戦わないの?」
「魔法で疲れてしまったのと、小回りがあまり聞かないので」
「そう? だったら襲ってきた魔物様に剣を一本化してあげるわ。後で返してね」
そういって鞘に入ったままの短剣を俺の方に投げてくる。
茶色い革製の鞘に入れられているが、金属のずしりとした重さがある。
つかは青色で、そこを握り引き抜くとギラリと銀色に輝く刀身が現れた。
実物を見ると結構怖いなと俺が思っているとそこで、何故か三匹ほど取りこぼしたらしい魔物がこちらに来る。
「アキト!」
焦った様な火瑠璃の声が聞こえた。
それを聞きながらも目の前の魔物を見ながら俺は、剣を凪いだ。
なかなか使いやすい剣だなと思いながら、倒されて小さな魔石に変わったそれを見る。
「ふむ、なかなかな切れ味っだ。でも以外に出来るものなんだな」
俺がそう一人で頷いていると火瑠璃が俺に走ってきて、
「アキト、剣を使うのが実は得意だったとか?」
「いや、学校の授業で剣道をしていただけで、俺自身はそんなに強くない」
「そうなの?」
「ああ、兄さんなんかは、向かい合った次の瞬間相手が倒れているのが普通らしいし」
「……」
火瑠璃に俺は変な物でも見るように見られた。
何故だと俺は思うけれどそこで、再び何かがやってくる音が聞こえたのだった。




