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またもや、死亡フラグ〜!?

「お御髪、整えましょうね〜」


「はい、お願いします」


『お御髪』なんて、大層なものじゃないけど、お言葉に甘えてオムレットに髪を整えてもらう。

ぐしゃぐしゃに掻きむしった髪が、オムレットの手によってブラシでキレイに整えられていった。


夜はお風呂上がりにいい香りのするオイルを着けてもらってるんだけど、おかげでカラーリングで傷んだ髪が、ツヤツヤのキラキラになったんだよ。

これも、オムレットのおかげです!


「なにをそんなに、さっきから悩んでいるのかしら?」


さっきから、唸ったり髪を掻きむしったりし続けてたら気になって仕方ないだろうね。

心配とちょっとの好奇心を含んだ目で、こちらを見詰める。

あっ、違った、ちょっとの心配と好奇心の間違いだった。


「オーブンの試作機で作る、お菓子をなににしようか考えてるんですよ」


ホットに頼んでいたオーブンの試作機が出来たと、魔王に言われたのは今朝のことだ。

実際にお菓子を作ってみて、使い勝手をみることになったんだけど、急だったからこんなに悩むことに。


「あら?オーブンが出来たら作りたいものがあるって、よく言ってたんじゃないかしら?」


確かにオムレットが言う通り、いろんなお菓子をあげてたよ。

だけど!


「実際に作るって決めるのと、妄想とは違うんです!クッキーだけでもたくさん、種類があるんですよ。基本中の基本なプレーンや、ちょっと豪華にバニラビーンズ入り、ハーブを練り込んでもいいし、さっくりした生地に砕いたクルミを入れて焼き上がったら粉糖を振るってもいいし、ローストしたアーモンドやチェリーを飾るだけでもアクセントになるし、人形に型抜きしたジンジャークッキーも可愛くていいし!クッキーだけじゃなくて、こってりしたバターケーキ、ふわふわのシフォンケーキ、濃厚なガトーショコラ!組み立てるのは大変だけど、焼いてスライスしたスポンジのその上にババロ…イターッ!?」


「あらあら、急に動かすから〜」


お菓子に対する熱い思いを語ってたら、ブラシが刺さった。

どうやら、無意識に頭を動かしてたみたいだ。

うぅっ、かなり痛いけど出血してないよね…?


頭を触って確認してると、オムレットがブラシを置いて代わりに見てくれる。

よかった、鏡がないからよくわからなかったんだよね。


「ここにも鏡台があればいいのにねぇ」


今、二人でいるのは屋敷内の魔王の執務室だ。

本日、本来の主は不在につき。


フツー執務室なんて重要な場所、入っちゃいけないはずなんだけど、なぜか魔王公認で使わせてもらってる。

それどころか、ウアラネージュかオムレットが一緒なら、実験室以外は屋敷のどこでも入っていいんだってさ。


いやいや、本当にいいの?

執務室はもちろん、魔王の自室やその横にあるらしい奥さまの部屋は入っちゃマズイでしょうに。

そこも『いい』って、オムレットがすんごい笑顔で言い切ったときは驚いたものたけど、魔王は無言だった。

よく見れば、魔王は遠い目をしている。

…モンブランのときといい、イヤならなにか言えばいいのに。

魔王なのに、変にフェミニストだよねぇ。


あっ、ちなみに私が借りてる部屋には鏡台…ドレッサー?がある。

ドアを挟んだ向こうの部屋もそこにあるベッドも二つ使わせてもらってるし、本当に至れに尽くせりって感じだ。

それだけでもすごいのに、さらに執務室に鏡台があればいいなんて…普段、誰が使うんだろう。


今回は、作るお菓子に悩んでたのを見た魔王が執務室を貸してくれただけだからそんなに使わないし。

鏡台を覗き込みながら、身だしなみを整える魔王。

なぜだろう、鏡ならフツーでも“魔王と鏡台”ってだけでなにかが違う。

脳内に浮かんだなにかが違う、違和感だらけの魔王を首を軽く振って追い払い、執務机に置かれたブラシをなんの気なしに眺める。


なんの変哲もない、髪用のブラシだ。

だけどそれを眺めていたとき、“あるモノ”を発見して狼狽する。


「大丈夫、傷はなかったわ。…どうかしたの?」


「いっ、いえ…」


笑って誤魔化すが、後ろに立つオムレットは気を使ったのかそれともそれに納得してくれたのか、突っ込んで聞くことなく使用済みのブラシを片付けに行く。

あああああっ!待って〜!!


ブラシなんだから、当たり前にそこには髪の毛が絡んでる。

それをマジマジ見ないで、片付けてくれればいいんだけど…絡んだものを見たらさすがに気付くよ。


赤み掛かった茶色、フレーズショコラなんておいしそうな名前の髪色は、姉にムリヤリ染められたものだ。

おかげでヘンタイから逃げられた過去があるものの、しょせんは染めたものだから、いずれは元の色に戻るわけで。

今、ブラシに絡んでた自分の髪色は根っこがすでに元の黒になっていて戦慄する。


ヤバい、ヤバ過ぎるっ!

黒はピエスモンテにとって、特別な色らしい。

瞳だって黒いのに、髪まで同色だとバレたらヘンタイにどんな目に合わせられるのか。

あの塔で見たらんらんと輝く目を思い出し、小刻みに震える。


どうにか、染め直さないとっ!?

でも、どうすればいいんだ?

家になら、買い置きがあったはずだけど、ここにはないし…。


「あのー?シュガーちゃん?」


「ふぁいっ!?」


ギャーッ、出た〜〜っ!?と思ったら心配顔のオムレットだった。

なんども呼んでくれてたらしいけど、震えるだけで反応がないことに心配になったらしい。

まあ、そりゃそうだよね、ははっ…。


「旦那様の部下の方が、お見えですよ」



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