クロエ、暴走6
何それ。
「仲良くって、私、普通に接してるだけですが。目黒さんとは友達ですけど、家政婦として雇って頂いたからには友達という立場に甘える気持ちもありませんし。真面目に、普通にしているだけです」
「あんたはそうでも、あにきは違うだろ。あにき、あんたの事を異様に気に入ってる」
「そうでしょうか?」
「不愉快な話だが、そうだ。たった一日でも見てりゃ分る」
不愉快な話って……。
血管が菊子の額に浮かぶ。
「あんたの話は、あんたが家に来る前から、ちょくちょくあにきから聞いてた。あんたの話をするあにきはいつも楽しそうで……」
そう聞いて悪い気はしない菊子だった。
「あんたが家に来ても、あにきはあんたの事を贔屓する事ばかり言う」
確かに日向の言う通りではあるが、雨は冗談が好きな事を菊子は知っている。
なので菊子は雨が言う事全てをまるっと真に受けたりなんかしていない。
菊子は日向もそうだと思っていたがどうも違う様だ。
「さっきもクロエの前で、その、あんたの事を大好きだ……とか」
実に言いにくそうに言うウブな日向であった。
「いや、友達としてって事でしょ」
菊子が言うと日向は、「だとしても、クロエには耐えられない事だ」と話す。
なるほど。
しかし……。
「日向さん、その、私が協力するんじゃ意味がない事では無いかしら? 目黒さんに……何て言うの? はた目に勘違いされる様な事を私に言わない様に忠告するのが妥当だと思うんですけど。目黒さんだってクロエさんの自分に対する気持ちを知ってるんでしょ。だったらなおの事、クロエさんを傷付ける様な行動を慎む様に目黒さんに言うべきじゃあないでしょうか」
「俺に出来るかよ! 楽しそうなあにきに水を差す、何て事が!」
「はっ、はぁ?」
何それ、目黒さんの事、甘やかしすぎてる!
何処までも兄貴贔屓か!
菊子は呆れてしまう。
「ま、まぁ、クロエがあんなになってるんだ。あにきも分かってると思う。でも、あんたにも分って貰わなきゃ、意味が無い」
ちょ、何か、私が目黒さんの事を誘ってでもいる様な言い方!
むかっと来た菊子だったが、ここで暴れてもどうしようもない、と拳を抑える。
「分かりました。協力はしますけど、私は普通に目黒さんに接しているだけなので。どう協力したら良いんですか」
冷めた口調で菊子が言うと日向は、「兎に角、あにきと妙な雰囲気になるのは止めてくれ」とびしりと言った。
菊子の額にもう一つ血管が浮かぶ。
「何よそれ。私が目黒さんに気があるそぶりでも見せているとでも?」
「誰もそんな事言って無いだろ。面倒くさい女だな」
「はぁ? 面倒くさいって何? そっちじゃないですか、面倒なのは!」




