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三極の狂走頁2

 バカではないって、そんな言葉残して。何の意味があるというんだ。

 と言うか意味を求めてはいけないのかもしれない。バカじゃないって言う奴ほどバカだからきっと鼬の最後っ屁の要領で謎かけしてきた程度だろう。



「さて、僕もいつ消滅するかわかんないからとっととこの部屋から出て……ん?」

「ん……あれ?」

「なんでウチ……横になって」



 うわマズイ。三人が目を覚ましだした。

 と言うより目覚めるのが早すぎ。もっとゆっくり寝とけよ。さっきまで大激戦をしていたんだから寝ていたって罰なんて当たんないだろう!


 とにかく顔を見られる前にこの部屋から出ないと。


 僕は急いで扉に向かって走り出すと同時にバクン! と空間を抉る音と共に右足が空回りし一気に体勢を崩した。そのまま僕は無造作に置かれた置物に突っ込み瓦礫の山に埋もれる。


 どういうことだ? 何で僕は倒れたんだ。

 それより今の足元の感覚。明らかに高低差がおかしかった。


 僕は埋もれながら、被さっている者の隙間を縫いながら右足に手をやる。

 やっぱり。右足がない。消滅情報で肩が抉れたのと一緒だ。だんだんと僕の存在が消滅してきている。でも消滅するのはいい。問題なのは三人の前で消滅することだ。目が覚めないうちに三人の前から去って、誰もいない所で消滅する。

 そうすることで三人から完全にネクスト・プライマルと僕の存在を消し去る。それが僕の計画だ。


 三人に気付かれないうちにこの部屋から出ないと。

 いや、右足が消滅した今、気付かれずにこの部屋から迅速に抜け出すのは困難! 逆にこのまま埋もれて人知れず消滅した方がいいかもしれない。


 そう考えた瞬間、視界がガラリと開かれる。



「……誰よアンタ」



 僕、カミ子に速攻で見つけられる。

 しかも三人とも目を覚まして立ち上がってやがる。最悪の状況だ。


 どうする、どーする。

 せっかく三人から僕の記憶を消したというのにここで見つかっては一縷にも彼女たちの記憶に残ってしまうじゃないか。



「ゼクトの知り合い? と言うか私は何でここにいたんだっけ? 確かゼクトを倒した覚えがあるんだけど」

「いやサカナがカミ子を倒したはずです。何で闘っていたかは覚えていませんケド」



 ゼクトものぞき込んできた。どうやら二人は僕のことを忘れているみたいだ。とりあえずは効果は出ている。


 なら今どうするか。どうせ見られているんだ。片足が無いとは言え逃げる手段が無いわけではない。最悪の場合偶像召喚か消滅情報を使って何とか切り抜けることもできる。ただし言ノ葉錬金は無色透明の龍がいなくなったから完全に使えなくなったのが難点だ。


 とにかく今はこの場から去ることが最優先。目の前で右足が消滅したみたいに前進が消滅したら強烈な印象が残る。


 頭の回転をフル稼働し、次の一手を考えていたところ、とある光景が目に入った。

 僕のすぐそばにいるゼクトとカミ子ではない。少し離れたところにいる静吉だ。二人が記憶を失っているってことは静吉も失っているはず。だからこそ目にした光景は問題だった。


 頭にもっていこうとしているインスタントシール。

 無色透明の龍が残したメッセージ。この三人は僕のことを決して忘れない。


 そうだ。失念していた。何でそんなことを忘れていたんだろうか。

 無色透明の龍の言った言葉。あれは消滅情報が三人に効果がないということじゃない。再生情報で消滅した記憶を呼び起こせるということだ。

 目が覚めた瞬間に二人みたいに記憶の欠落を感じ取った静吉が記憶の再生をしようとしているんだ。

 

 マズイ。ここで静吉に記憶を再生させられたら全てが水の泡だ。消滅情報で再生情報のことも消し去るべきだった。


 だけどもう遅い。今更静吉に消滅情報は通用しない。僕のことを知らない以上、静吉が僕に弱みを見せるはずがない。


 静吉は額にインスタントシールを押し当てる。僕の方を見た。



「そう言うこと……だったのね。きーちゃん」



 思い出して、しまった。



「あん? こいつのこと知ってるの口鬼静?」

「と言うよりこの人……何か、妙な感じがしますナ」

「静吉……僕をここから連れ出してほしい」



 思い出したんなら、分かってるだろう? 


 思い出したならもうどうすることもできない。ならば、静吉を仲間に引き入れるまでだ。静吉ならわかってくれるはずだ。どうせすでに僕の情報を覗いて眠りについた後も何があったかを把握しているんだろう。


 カミ子との闘い。ゼクトとの闘い。そして無色透明の龍を使ったパンク。プログラム内での苦労を、無駄にするはずがない。ここで彼女たちに事情を察せられたら全てが無駄になる。


 さあ、お前ならうまいこと僕をここから連れ出せるだろう。僕は無言で静吉をにらみ続ける。


 何を察したのか、静吉は二人を手招きする。



「何よ口鬼静」

「二人とも、この人のことを誰だって思ってるでしょ」

「そうなんですケド。何故かサカナはこの人に特別な何かを感じるますヨ」

「誰か教えてあげる。ちょっと二人とも、後ろ向いて」



 今こいつ、なんて言った? 教えてあげる? 本気で言っているのか?

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