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三極の機甲少女8

「あ、あ……」



 その突然突き付けられた現実に、カミ子は言葉を詰まらせて何もできずにいた。

 今まで目標としていた人物が目の前にいる。その人物に自分の全てを否定されたどんな気持ちになるだろう。

 僕はその気持ちがよくわかる。ただ、間違ったことは正さないといけない。


 だから言葉を緩めない。



「無色透明の龍は人知を超えた存在だ! 一つの街を一瞬で消し去るほどのな! 何で無色透明の龍が俺の言うことを聞かなかったか、街一つ飲み込んだかわかるか? 人知を超えた存在が人間に付き従うわけがない! 偶像召喚はあくまで力量以下の存在しか扱えない、俺の落ち度で起きた人災だ! 正しい力も何もない。あれはただ暴れるだけのモンスターだ!」



 現実を教えなくちゃならない。この子も、静と同じ。天童源次郎に人生を狂わされた一人。


 天童源次郎に囚われた呪縛から解放させなくてはならないんだ。



「誰が望んだんだ? 誰に言われたんだ! 俺の後を継ぐ必要なんてない。俺はここにいるんだ! お前は頑張りすぎたんだ。もう気張る必要もない」



 繋ぎ止めていた手を優しく頭にもっていき、柔らかく撫ぜる。

 カミ子の表情はもはや弱々しくもう、心身ともに僕に屈服しているのが目に見えてわかる。


 そろそろ頃合だ。蕩けたように放心している神子を尻目に、僕は撫ぜた手を振り、情報のディスプレイを展開する。


 消滅情報。カミ子の情報を開示しろ。そして静と同じく、ネクスト・プライマルと僕についての情報を消し去る。

 ディスプレイから一つ一つ情報を抜き取る。



「これで全部抜き取った。あとは消滅するだけ、」

「待って! 源次郎!」



 僕の手をカミ子が握る。その眼、必死に何かを訴えかけてくる眼だ。



「なんだカミ子。言っとくがそんなに時間をやるつもりはないぞ」

「教えて。私は……間違ってたの? アンタの後を追ったのは間違いだったの?」



 弱々しく問いかけてくる。


 その問いの答えが欲しいのか? そんなの簡単だ。間違ってたさ。全てがすべて。憧れる相手を間違えたんだ。



「答えてよ! 私は何のために頑張って来たの! 何のために全てを犠牲にしたってのよ!」



 だけど間違っていたなんて言うつもりはない。

 だってそれと似たようなことはもう散々吐いたし、それを言ってしまうと、今までの全てを否定してしまうから。

 

 今彼女の中にある些細な小枝よりも細い自尊心が折れてしまうから。


 心のほとんど折れている彼女にこれ以上の追い打ちをするつもりはない。



「お前も頑張りすぎたんだ。もう、休んでいい」



 この子も長い夢を見続けていたんだ。

 開放する。解き放ってあげよう。長い長い、悪夢から。

 

 僕は項目に手を伸ばす。


 だけどさらにカミ子に握られている手に圧迫感が。また何かカミ子が訴えかけている。



「なんだカミ子。もう君は頑張らなくていいんだ」

「いや。私はまだ頑張る。頑張らなくちゃいけない。頑張って、アンタみたいに誰からも認められる魔法(三立)使いにならないといけないの。ねぇ教えて。私は、アンタみたいな魔法(三立)使いに、なれたの?」



 その問いかけに何と答えろというのか。そんなの決まっている。


 知るかボゲェー! と一蹴してやりたい。


 僕は今までの君の全部を知っているわけではない。始原情報を使って今までどんな風に生きてきたかを覗き見することもできるけどそんなことをしている時間もなければ、人の人生を覗き見するような出歯亀を働かせる気も更々ない。


 それでも、何か言葉をかけてほしいというのなら、僕はこう答えよう。



「君はもう立派な魔法(三立)使いだ。それこそ、俺すらも超える、大魔法(三立)使いっていってもいい。今までよく、頑張ったな」



 だからもう、お休み。


 僕は今度こそ消滅情報を発動させて、カミ子の中の情報の一部を握りつぶす。

 その副作用によりカミ子の瞼が閉じ、力なく僕にもたれ掛ってくる。


 君も長い夢を見ていたんだ。

 今まで頑張りすぎた。今はゆっくり眠っていたらいい。



 僕はカミ子を抱きかかえ、ユーフォリムスで静吉のいる保健室へと連れていく。


 先に寝かせてある静吉は優しい寝息を立てて静かに寝ている。

 カミ子をその隣のベッドに横にする。


 これで二人。



「これで、あとはゼクトだけ」



 僕はすぐに保健室を飛び出し、ゼクトの元に向かう。

 ここからはイージーゲームだ。ゲンガーをつかせているけど、大丈夫だろう。


 もうゼクトに戦う意味はなくなった。カミ子を鎮圧したことを告げたらゼクトはその拳を下げるだろう。だって彼女の目的はあくまで僕を護ることだ。危害を加えてくる輩がいなくなったのならこれ以上、攻撃対象はいない。


 僕は世界を救ったんだ。そう思った。そう思いたかった。だがそれは甘い考えだったとすぐに気付かされる。

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