三極の選定天子6
「お前が……三立なんて言う悪を広めたのか三本柱の総御大将なのか」
「……君はずっと、三立を悪だと言ってたよね」
ああそうだ。三立は悪だ。三立を使っている人たちの意志の有無は関係ない。
ただ、善か悪かを分けるのならば三立はこの世に悪しき風潮をもたらした『根本的な存在悪』だ
人の優劣を簡単に数値化できるようになってしまい差別的観念の助長。個人に無限の危険性を与えるようなものだ。その最たるが崩街。
行き過ぎた力は脆く崩れる砂の城のように身を滅ぼすことになる。
何より今、校舎を片手までぶっ壊すことのできる少女が存在する時点で手に余るものだとわかるだろうが。
「何で、何で三立を広めたんだ!」
「存在の三本柱、ウチの一族は人類が誕生して、文明を築き始めたその時から存在する秘密結社。情報を管轄する世界の黒子。ウチたちは問答無用と無尽蔵を求めているのよ」
秘密結社だと? そんな陰謀論臭いことを信じろというのか。それに問答無用と無尽蔵って。
「三立の公約文の一部か。問答無用と無尽蔵ってのは……机上の空論ってわけか」
「三本柱は古くから絶えなく世界に情報を回し続けた情報の一族。ほら、日本で言う……邪馬台国の卑弥呼。彼女は予言を流布して女王として国を治めた。そう言った人たちの大本がうちの一族ってわけ。世界中に潜伏して陰から世界の流れを握っていたのよ」
話が……見えてこない。
突然に告げられた世界の陰謀論の全容とも言える壮大な事実に虚偽かどうかを問いただすのも億劫になるほどだ。
と言うか、三本柱がその、情報を裏から統括する黒子。陰から操る黒幕。ハータス無き今静吉画素の首領であるということは、ハータスがもともと三本柱のトップだったってことか?
何でそんな奴が僕みたいなそこら辺にいるが気なんかを弟子なんかにして……いや、都市を一つ消滅させているけど最終的に机上の空論を召喚したんだ。だからこそハータスは僕を引き取ったのか。
「三本柱は情報を扱うことに長けた一族。長い年月をかけて定向進化が起こり、三立のプロトタイプとも言える『始原情報』を体得したのよ。私の始原情報は『再生情報』。事象に起きた過去の出来事や情報を呼び起こすのよ。今の君は赤ちゃんの時の身体能力を思い出してもらってるの。インスタントシールを使えばいちいち思現する必要もないしね」
ピラピラとシールを見せつけてくる。
そうか……さっきゼクトが瞬間移動をしたのも……居た場所をその再生情報とやらで再生したというわけか。
「随分とおしゃべりだな。今までかたくなに隠してきた自分の三立をこうもあっさりネタ晴らしするなんて」
「言ったじゃない。君には知る権利があるって。むしろウチのことは何が何でも知ってほしいわね」
嘘つけ。今の今までハータスのことも教えてくれなかったくせに。白々しいにもほどがある。
「始原情報を使って三本柱は未来永劫、世界の影を暗躍するつもりだったみたいだけど、何世代前かのご先祖様が欲を出しちゃったわけよ。この世界の資源は限られている。必ず滅びを迎える。それならば『滅びない世界』が欲しい。始原情報で世界を作り、渡り住もう。それが次なる原初計画」
「ネクスト・プライマルは3Vの育成プログラムじゃなかったのか?」
「本当はする予定じゃなかったのよ。崩街を起こして君が行方不明なったせいでいろいろと計画がとん挫して、急遽育成プログラムが差し込まれたのよ」
と言うことはやっぱりカミ子の現在の人格の形成は僕のせいにあるってわけか。
「計画の核になるはずだったきーちゃんが行方不明ってことで代替としてカミ子君が選ばれたってわけ。結果的に君がネクスト・プライマルの触媒から外れることになっだ。ウチとしては君を計画の核に据えるのは大反対だったから外れた時はほっとしたよ」
「お前の父親がネクスト・プライマルの立案に関わっているって言ったよな? ハータスは、本当に死んだのか?」
「死んだよ。それも昨日」
「昨日!? 昨日って、そんなに急に死んだのか!?」
話が急すぎるだろう。あのハータスが昨日死んだなんて、口頭で言われただけだと信じられない。あのハータスが死んだなんて。
「私もよく知らない変な実験をしててその事故に巻き込まれて死んだらしい。死んだ時は驚いたし悲しかった。それに急に三本柱を継ぐことになるなんて思いもしなかった。父さんは君を計画の核に据えていたからソリも合わなかったけど、死ぬなんて思いもしなかった」
ハータス。まさかハータスが静吉の父親なんてな。おかしな運命を感じる。よくわからない理由で僕を引き取って、世界中を転々としては地獄のようなシゴキを受けて。それでもまあ気付けば世界最高の魔法(三立)使いなんて呼ばれるようになってたんだ。
才能を見抜く眼力と教える手腕は見惚れるレベルだったけど、なるほど。三本柱の……三立の開祖の一族なら納得だ。
今の静吉の話を聞くに最初からネクスト・プライマル計画に組み込むために僕に三率を教えていた、そのつもりで僕を引き取ったってことか。
なんでだよハータス。僕をハータスを、本当の父親のように信じてたのに。
「父さんは革新的な改革を行った。ネクスト・プライマルは一族の中で完結させようと考えられてたんだけど、それには限界があるって父さんは世界に協力をさせようと発足させたのが三立。三立は特殊な力なんかじゃない。私たちの先祖が始原情報を手にしたように人間の中に眠っている未知の部分を引き出しただけ。父さんは力の引き出す方法を世界に公布して、ネクスト・プライマルの躍進が始まった」
「それって……世界のオカルトブーム?」
これは『世界を幸せにするための魔法の偽物』だ、から始まる文章。
世界はあたかも古き言い伝えからその不可思議な力を呼び起こそうと一大ムーブメント引き起こしたけど、それの発祥は三本柱にあった、つまり最初からネクスト・プライマル計画のために世界に三立が生まれたのか。
語られる真実。本当に現実離れしている。
世界が魔法に憧れたのではない。憧れたという情報を広められただけ。草の根をかき分けて探したって見つかるはずがない。見つからないことは最初から決まっていた。
全部が全部嘘だったんだ。手のひらに踊らされていた愚かな家畜。
だけど、それ以上に僕にとってのショックはハータスの死だ。本当に死んじまうなんて。




