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三極の幕開け4

「ちょっと待て。本気なのか? 本気で君たち二人を相手にしなくちゃいけないのか? そりゃア一度決めたことだ。今更止めるだなんて言わないけど……分かっているのか? 君たちは3Ⅴだろ。勝てるわけがない」

「何ですカ? その3Ⅴって言うのは?」

「3Ⅴって言うのは簡単に言えば満点者だ」



 魔、錬金、召喚の三部門は各々ペーパーテストのように百点満点で評価される。


 九十点までは努力で何とかなるけど、それ以上はレアだ。

 となると満点なんてさらにレアのレア。お国に認められる天然記念物並だ。

 一部門でも満点があればV持ちと呼ばれ、3Ⅴは全部門の満点者ということ。まさに月に足跡をつける並みの存在。世界に三十人といないんじゃないかと言われるほど珍しい存在だ。



「満点者ですカ。ちなみにゴトゥディンは満点者ですカ?」

「……二人とも言うなよ」

「合計で四点。きーちゃんは新しい惑星が誕生するレベルのレアだから」



 言うんじゃない! 僕だって気にしているんだ!


 そうだよ四点だよ! 無色透明の龍を抑えているせいで三部門のほとんどが使い物になってない! 魔が一点で錬金が一点で召喚が二点のごくつぶしの存在価値無しだよ!



「でも、逆におかしい気もするけどな。そこまで低いと、主人公は意図的に数値を落としてるようにも思える」

「ドキィ! 鋭い。じゃない。分かった! この話はおしまいだ! 全力で戦おう、とっととプログラムに……ハンデとかくれないかな?」

「きーちゃんって結構往生際が悪いよね」

「しかしだな! 正攻法のルールで戦って、勝てるわけがない! 本気でやれと言われてもモチベーション上がるわけがないじゃないか」

「安心してください。要はこの二人をブッ倒せばいいんでしょ。ゴトゥディンの分の働きをサカナはしますヨ」



 パシン、と拳で手のひらを叩くゼクト。


 わァ~頼もしい。だけどその言葉に頼るほど信用できないんだよ。と言うか君、闘えるの?



「……私に勝ったら、一つだけ何でも言う事聞いてあげるってのはどう?」



 ん? 僕の耳がピクリと反応する。




「いうことをきく?」

「モチベーションが上がんないって言うんなら、私に勝ったら何でも言うこと聞いてあげる。今の今までの鬱憤を返すのも良し、何でも命令できるってわけ」

「……カミ子。もう一回言ってくれるか」

「何でだよ……私に勝ったら何でも言うこと聞いてあげる。これで満足?」



『私に勝ったら何でも言うこと聞いてあげる』



「え?」



 やまびこのごとくは繰り返されるカミ子の言葉。

 しかし二つ目は機械音だ。その音源は静吉の手に握られている、携帯電話から発する機械音だ。


 きしぃいと悦びのあまり僕の口角は吊り上がる。



「ナーイス静吉! 聞いたか。カミ子なんでも言うこと聞くって! いやっほう!」

「これほど最良の日は無いわ! ほらみんなで踊るわよ! ゼクト君!」

「なんだ静吉! 完全に元気が戻ったな! ほら、手を取るんだ!」

「お、おう?」



 クエスチョンマークを頭に表示した状態のゼクトを引っ張り、僕は二人と手を取り踊り出す。ランランランと室内に陽気な音楽が流れているような気もしてくる高揚感。


 踊りながら少し目をやると蚊帳の外のカミ子の表情はドン引きだった。


 いい表情だ!



「えっと……そんな無理難題は聞けないぞ。その……エロいこと、とか」

「フー! そんなのが出てくる時点で初心と言うには的確過ぎるぞ君ってやつはカミ子ォ! 先に言っておく。僕が君に命令するのは『僕を満足させるコスプレをしろ』だ!」

「え、何それ?」

「言っちゃえばぁ。カミ子君は自分でコスプレ衣装を選び、それを着てきーちゃんに採点してもらう。そしてきーちゃんが納得しなければまた衣装を選びなおすのよ」



 補足ありがとう静吉。さすが僕の悪友なだけある! 意図を完全に汲み取ってくれている!



「それって、言うこと一度だけじゃない気がするんだけど」

「一度だけだ。僕は君に満足するコスプレをしろと命令するだけ。何回もコスプらなきゃなんないかもしれないが、一発オーケーもありうるって話だ。いやぁ楽しみだな」

「つまり、アンタは勝つ気でいるってわけ」



 カミ子の言葉が鋭いものになる。

 そう言われるとビビっちゃうなぁ。



「やる気はばっちりだ。今すぐにでも開始のゴングを鳴らしたいところ」

「上等。口鬼静。今すぐプログラムを起動して。速攻で潰す」

「りょーかい。ルールは理事長から聞いてる通り、二対二のバーサスルール。ウチ、カミ子君ペアときーちゃんとゼクト君ペア。痛みも怪我も無しで、」

「ちょっと待った!」



 そのルールに異議あり!



「何? 理事長に言われたルールに何か不満でも?」

「一つだけ。痛みは有りにしてくれ。その方が緊張感が増すし、何よりお互い本気になると思うから」

「そう? まあ真面目に取り組んでくれるならそっちの方がいいかも。それでいいカミ子君?」

「いいじゃない。お互い本気になるなんて。その要求を飲んであげる。後悔すんなよ主人公」



 お~怖い。後悔するのはどっちかな。



「じゃあ引き続きルール説明。制限時間は基本無し。場所は学校全体。特殊ギミック無いの参加者以外の所有物は投影せず。各々の出現地点はランダム。脱落判定はプログラムが活動不能と判断した時か負けを認めた時。これでいいわね」



 ルールを口早に伝えられて、静吉は三つのパソコンを同時に操作する。



「あれが、プログラムですか?」

「あれって言うより、パソコンの中にプログラムがあるんだよ。プログラムってのは複数の魔法(三立)使いの情報をインプットして、魔部門超特殊不可能三立思念共有型幻想意識空間を作り上げるんだ」

「わかんないです。長いですナ」

「簡単に説明すれば異空間作り出して、意識だけをそこに移すってことだ」



 パソコンから異空間の、参加者の体力の無制限化やアイテムの提供、建物の耐久などの設定を行うことができるいわばゲームのトレーニングモード。それがプログラム。


 そしてこれが、三立が魔法の偽物と言われる所以でもある。

 科学とオカルトの融合。不明な点があるにしろ文明の利器との相性の良さが魔法ではない。


 世界は科学とオカルトは水と油の存在だと世界は思っている。だからこそ、科学との融和性を持つ三立を頑なに魔法として認めていないんだ。



「一応、名目上は君も参加ってことになったけど、おそらく静吉は傍観者を決め込むから僕とカミ子の一騎打ちになる。君は何もしなくていい」

「却下です。危ないならサカナが代わります。正直、ゴトゥディン女々しくてヒョロヒョロで口だけっぽくて、弱っちそうですからネ」

「言ってくれるな君。じゃあ命令だ。「無事帰ってきたら結婚しよう!」静吉!」



 余計なことを言うんじゃねぇ!



「よし! じゃあ皆さん! 今より。プログラムを起動して異空間に飛ばすから、各々の動き方をよく考えるのよ! 相方との合流もよし。単独行動もよし。ただし、ペアのどちらかがリタイアした時点で試合終了ってことをお忘れなく!」


 

 ブォン、とパソコンを中心として床に幾何学的な陣が教室一杯に展開される。陣はじっくりと円運動をしていき少しずつ加速していく。



「静吉! 覚えておくんだな!」

「覚えといてあげるわよ主人公」

「いや、君じゃない。覚えとく必要はないぞカミ子」

「向こうに行ったらソッコーで潰してあげる」



 そう言って向けてくる彼女の笑顔はとても麗しく流麗で華麗で邪悪なものだった。

 もしサングラス付けていようものなら確実に子供が泣く口角の吊り方だ。おー怖い。



「あー……もう始まるんなら覚悟決めるしかないか」

「ゴトゥディン」

「何よ?」

「結婚は……ダメですヨ」

「君って堅物真面目っ子だよねぇ。ワイルドなくせに」



 最後の言葉がそんなんだが。意識が途絶え、新しく目の前にモノクロな、色彩の無い廊下が入ってくる。



「始まったか。こりゃもう、本格的に覚悟を決めるか」



 もう後戻りはできない。今まではプログラム内であろうと現実世界であろうとのらりくらりと柳の葉のように流していたが今回は違う。


 勝たなければ引き渡される。引き渡されれば自身が無色透明の龍であることが白日の下になるやも知れない。


 ならばどうするか。勝つしかない。世界最高峰の魔法(三立)使いに。その力を物理的破壊に特化したカミ子に勝つしかないんだ。

 


 今ここに、運命をかけた戦いが始まる。

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