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三極の幕開け2

「アホくさ。萎える」

「そのアホに君も含まれているんだぞ。カミ子ちゃん☆」

「あ? 主人公? え? やっぱ今ここで戦争? お?」

 


 堪忍袋の紐が緩すぎるな。君はただでさえボーイッシュなくせにそんな乱暴な口調で僕に付きまとっていたら他人の目からどのような評価を得られるか。


 流れるような足さばき。おそらく他人から見たら気持ち悪い動きであろう動きで僕はカミ子の後ろに回り、腰に手を当て、手を取り社交界のダンスのようなポーズをとらせる。



「BL好きの腐ったヲ姉さまか、止むことの知らない百合豚が、発狂しちゃーうぞ☆」



 カミ子の声真似をしながら不必要なまでにぶりっ子アピール。


 拳の速度は光速を超える。完全に意識の外からの攻撃だった。弾丸と化した拳は僕を笑顔のままふっ飛ばすにはあまりにも行き過ぎた威力だった。

 僕の体は投げ出されて紙屑のように床を転がる。


 カミ子のやつ。体格に似合わない攻撃力を持ちやがってェ……。



「た、助けて……殺されるぅ」

「ゴトゥディン大丈夫ですカ!? 貴様よくもぉ! その首刈ってやるァ! ギャリリリリリリリリリリリリリリリイリィ!」

「ちょ、ストップ! 大丈夫! 君が来てくれたおかげで救われた気がするから大丈夫! 何物騒なこと言ってんの!? ギャリリリリってなに!?」



 今にも飛びかかっていきそうゼクトを抑える。何いきなり拳握って殴りかかろうとしているんだ!


 そりゃあ僕を護る騎士を自称している以上、こうも吹っ飛ばされたら黙っているというわけにはいかないかもだけど、かと言ってこの子は攻撃的って言うか戦闘意欲がありすぎだろう!

 首を刈るって、いたいけな少女が溢していいセリフじゃないぞ。


 それに首を刈ると宣言されたカミ子はどうなっているんだ。

 僕は恐る恐るカミ子に視線を向けると見るからに怒りを爆発させたカミ子。もはや人間と形容できない雰囲気を醸し出しながら目を光らせこう呟いていた。



「コロス。ガチコロス。ゼンコロス」



 こっちもこっちで攻撃色ありすぎ。吐いている言葉が冗談に聞こえない。



「ほう? ゴトゥディンを殺すと来ましたか。いいでしょう。サカナはアナタを排除すべき敵と断定し今すぐバラしてあげましょう」

「ホント待て! 落ち着け! な! ていうか静吉も静観決め込んでニタついてんな止めろよ! カミ子も一回落ち着け。僕を殺すならプログラムの中にしろっての!」

「……それもそうだな」



 カミ子は納得してくれた。ゼクトも肩を叩いてどーどーと落ち着くように促す。

 はぁ。僕はこんな他人の空気に翻弄される質じゃなかったはずなのに。



「てか、何なのその子? 授業中に窓ぶち破って入ってきてた子よね。アンタの知り合い?」



 投げかけられた質問。まあ当然の疑問か。

 何と答えよう。無難に親戚辺りか……見知らぬ外人とは言えないな。少なくとも僕との関わりを見てしまっているのだから。



「あー……この子はな」

「ウチの愛人、ゼクト君よ」

 


 問題発言ー!? 何僕の言葉遮って問題発言かましているんだ静吉!?

 何を言っているんだと叫んでやろうと思ったけど静吉はゼクトに肩を回して『くぁいいでしょこの子~』と語り始める。



「口鬼静と知り合いなの? 変な名前。主人公と顔見知りっぽかったけど」

「当然。この子は愛人できーちゃんはウチの正妻だから。だから結果的にゼクト君ときーちゃんも顔見知りなのよ。ね、きーちゃん♪」

「やだぁ☆ そんなんじゃないしぃ☆」



 ドロッドロ過ぎてまともに答えたくねぇ。



「ゴトゥディンキモッ」

「おい」

「まあそういう訳でこの子はウチの愛人。キスだってできるわよ。んー」



 口先を窄め、ゼクトの顔面に気持ち悪い形相で近づくこいつはもはや変態のそれ。止めてくれ。一応僕はお前を尊敬しているんだし最高クラスの魔法(三立)使いなんだろ。自分の品格乏しめて他人の評価を下げるようなことをしないでくれ。



「おい静吉。他人に迷惑をかける行為は感心できな、」

「キスをしたいんですカ? なら」

「え?」



 そこの光景はあまりにも予想から外れたものだった。

 ゼクトは顔を近づけていた静吉の首に手を回し、そのまま自身の唇に吸い込むように引き寄せ、静吉が言った通りキスをやってのけたのだ。


 その光景に僕はカミ子と共に言葉を失い、文字通り絶句。お、女同士のキス? ちょっと、過激すぎるだろう。

 静吉本人も口をふさがれているため声を上げられず、目を大きく見開き、丸くしているしかなかった。


 静寂が包み込んだ部屋。何秒かの後に、ゼクトは手を放して静吉は腰砕けに崩れ落ちる。そしてゼクトはワイルドに唇を腕で拭い、こう言い放った。



「結構甘いものですネ」



 あまりにもワイルドな物言いに座り込んでいた静吉が今度はゴトンと音を立てて石造のように地面に倒れ伏せて動かなくなる。


 こいつ、こういったことに抵抗のない、ある意味男らしい性格なのか? 見た目が真っ白な人形みたいなくせに規格外過ぎるワイルドさだろ!



「し、静吉、その……慰める訳ではないが、二人とも顔は美麗なんだ。なんというか、まだ、な?」

「……て」

「ん?」



 倒れ伏せていた静吉は足をがくがくとバンビ状態のまま立ち上がる。

 涙目全開なその顔はあまりにもレアすぎる。こんな表情今まで見たことねぇ。



「な、何だよ静吉」

「慰めて! お願い! きーちゃんのセカンドキスで慰めてー!」

「待て! 止めろ! 近づくな!」



 口を窄めて今度は僕に抱きつこうとしてきやがった! この部屋機材置きまくって狭いんだから追いかけてくんな!



「嫌がんないでよ! ウチが嫌いなのきーちゃんは!? お願いだからー!」

「ゼクトとか言ってたけど、アンタね! 何やってんだよ!」

「何って、ただのキスですヨ。同性のキスなんてあってないようなものです」

「君は純潔がどうとか言ってなかったか!?」

「それはもちろん。異性の方とその……不純ですヨ」

「同性の方がよっぽど不純じゃないか!? 何言ってるかわからない! 僕もうヤダ! 君もうしばらく黙っててー!」

 


 もう収拾が付かなくなりその場で怒声、泣声の大パニック。

 この事態を収拾するのに少々の時間を有したのは言うまでもなかった。

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