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三極の幕開け1

 昼休み。そう、昼休みだ。


 午前中の苦行を終え、学生にとっての天使の降臨の時間。

 友と語らい笑い。バカしあい。殴り合うのも自由な時間。


 もちろん教室のみならず廊下や食堂などなど様々な場所に学生が分散するのだが、今ボクたちがいるのは多目的室の扉の前の廊下。誰もいない。ゴーストタウンのように閑散としている。

 

 こんなところを休み時間に来るもの好きなんて相当な変わり者としか言いようがない。



「それじゃあウチたちが変わり者ってことじゃないの」

「どっからどう見てもスプーキー一座だろう。入んぞ」

「ハイです」



 多目的室は薄暗かった。もともと日の当たりのいい場所じゃないし棚とか教材とか色んなものが壁際にぎっしりと敷き詰められているからだ。

 そんな埃臭い目的室に来た理由は一つ。今の時期使われていないあるコンピューターが置かれているからだ。


 だけど困ったことに今の時期は使われないコンピューターを毎日使う輩がいるという事実があるんだよなぁ。


 そんな雑多な部屋に異様な存在感を放つのは中央の机に置かれた三つのパソコン。それらの前にはこちらに背を向けているが背後からでもわかるあからさまな仁王立ちのシルエットの女史が一人いた。


 もしかして僕たちが来るまでそうやってスタンバってたの?



「フ。来たわね主人公。アンタとこの部屋で雌雄を決し始めて早一ヶ月。周りからⅤ持ちとかなんとか奉られてるけど、どうしてもアンタにだけは勝てない。だから! 今日こそ! 勝ってやるぞ主人公ィ!」



 ビシィ! と思いっきり体を捻って指差しながらの上噛神子からの宣戦布告。この部屋にいるこいつのテンションはこんなもんだ。


 そう、同じだ。僕だけでなく、ゼクトと静吉がここにいる以外は。


 振り向いたカミ子はもちろん二人の存在に気づく。いつもならこのまま会話を続けるカミ子だけど今日は固まっていた。イレギュラーな存在に恥辱を覚えたのかな?



「テンション高いですネこの人」



 ゼクトの言葉が追い打ちとなったのかカミ子は茹蛸のように赤くなり後ろを向いてしまった。

 人との出会いは第一印象できまる。入学して暗い雰囲気なら学校生活は一人ぼっちになってしまう。そういう経験がありました。


 いつもは傍若無人のくせに時たま常識的なそぶりを見せる。いつもの暴君ぶりはどこに行った暴虐王。乙女チックな側面を見せるな。



「もうちょっと周りを見るってことを覚えないとなカミ子……どうした静吉」



 静吉……何でそんな愉悦にも口角を吊り上げて日から光を放っている。まるで新しいおもちゃを見つけたようなその眼光。


 まあ、その気持ちわからなくもないけどな。むしろ、この状況に笑みをこぼさない方がおかしいか。僕も静吉につられるようにニカァと口角を吊り上げる。



「おいおいカミ子君何顔真っ赤になってるの! でもそれがいーよいーよ超かわいいよ!」



 パンパンと手拍子をしだす静吉。合間合間に僕に目配せをしてくる。ああそう言うことか。今回はそう言う弄り方か。


 僕は静吉の意図を察して合いの手をする。



「超かわいいよ!」

「カ・ミ・子! カ・ミ・子! 調子乗って誤爆する。そんなところ大好きだよ! 萌え要素! みんなの憧れドジっ子カミ子!」

「萌え萌えにゃんにゃん!」

「可愛いよ! 可愛いよ! 目に入れても痛くないよ! みんなから愛されてるよ! カーミカミカミ子! 可愛い選手権があれば一位だよ! 世界一位だよ! カ・ミ・子! カ・ミ・子! ウィーラヴアイラヴカ・ミ・子! みんなのアイドルカ・ミ・子!」

「カーミッカミ! カーミッカミ!」

「ほらゼクト君も手拍子手拍子!」

「え? あ、はい」



 三人そろっての手拍子込みで思いっきりからかう。

 狭い教室に反響する音にカミ子は身を震わせている。


 ああ愉悦。思いっきり誤爆して恥ずかしがっているやつに死体蹴り同然の追い打ちにこれ以上ないくらいの快楽を得ている自分がいる。

 だってからかいやすいカミ子が悪いし


 しかし我慢も限界点に達したのか顔を真っ赤に、涙目にして手を拳銃の形にしてこちらに向けてきた。

 マズい!



「おっと待つんだカミ子! なぜ主犯の静吉を差し置いて僕に指を向けている?」

「ウチは逃げる!」

「何僕の後ろに隠れようとしているんだ静吉? お前は僕よりでかいだろ。逆に僕の肉壁になるんだ」

「いやよ。男は女を守って、女は男に守られるってのが世界の常識でぇっしょ?」

「待ってください。その理論だとサカナがゴトゥディンに護られるってことですよネ? 撤回してください。そんなの認めません!」

「じゃあ今だけあの悪の大王から僕を守るんだ」

「分かりました! ゴトゥディンの命とあらば!」



 三位一体三連結三人寄れば文殊の知恵とでも言おうか。一番小さいものから順に一列に並んでカミ子に向かって構えている。

 滑稽な姿だろう。間抜けな姿だろう。現にカミ子の目は確実にアホを見る物になっている。


 そんな目で見るなとは言わないさ。自覚しているのだから。

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