三極の悪友7
舐めた口聞きおってからに。と言うか買い過ぎだろう。こんな量の食事を食べきれる訳……。
「ゴトゥディン。お腹空いてるんじゃないですカ? 早くしないと食べきってしまいまふオ」
すごい食べてる。一皿を一口で食べる勢いでゼクトが食べている。まるで水のように料理が減っていってる。
何だこの子。満腹キャラだったのか。
そう言えば静吉が体の構造がおかしいとか身長に対して体重の比重がおかしいとか言っていたな。やっぱ小さい体にとんでもない質量だとエネルギー補給が大事なのかな。
「それより、この子が帰ってきたなら話の続きだ。静吉。何か案は無いのか?」
「君聞いてばっかりだね。少しは自分で考えたら?」
「うるしぇー! どうにかできる答えが出せるならとっくに出してるっての! 静吉なら何とかできる方法がわかんだろ!」
「無茶振りですヨゴトゥディン。まあ確かにゴトゥディンを引き渡さない方法をしっかり考える必要がありますわナ」
「違う。君を元いた場所に戻す方法だ。僕のことはどうでもイイんだ。君の話をするっていうんだ」
「は? 何言ってるんですカ? サカナを帰す? 嫌だー! 帰りたくないですー!」
このガキ。わがまま言いよってからに。
君は偶像じゃない。この世に存在する、僕に召喚された人間なんだ。
人間召喚でもないけど……多分何かの不手際で召喚されたんだ。召喚してしまった以上元いた場所に帰すのが道理だ。ウン。何も間違ってない。
「いいですかゴトゥディン。サカナは騎士です! アナタを護るために在るのです。帰るなんてまっぴらごめんです!」
「わがままを言うんじゃない! 君はおもちゃ売り場で駄々コネる子供か! 静吉。いい案を出してくれ」
「きーちゃんを引き渡さない方? それともゼクト君を帰す方?」
「引き渡さない方ですヨ」
「帰す方だ!」
「んー帰す方の案は今のところなし。正直いい案が思い浮かばない」
思い浮かばないなんて、そんなぁ。
今の僕の力量じゃWRの契約を解除できる力もないし、一番簡単に元いた場所に帰す方法と言ったらゼクト本人に元いた場所を聞き出してそこに連れていくことだけど、肝心の本人が記憶があいまいとか言って聞きだせないし。だから静吉に頼ったのに。
「思い浮かばないって、こういう時のための静吉だろ。世界最高レベルの魔法(三立)使いなんだろ」
「無理なものを可能とは言えないから。もう一方なら、引き渡さない方なら一応ある」
「それを、是非お願いします静吉!」
「いい返事ねゼクト君。きーちゃんもそれでいいかな?」
それでいいかなと言われても。
でも引き渡されてもそれはそれで面倒だし、今帰す方法が思い浮かばない以上引き渡されない話を聞いて損はないだろう。
僕は無言でうなずく。
「いい子ね。じゃあまず前提としてこれは一応きーちゃんが机上の空論を発動したってことを認めた上で……まあいいか。この案はね、きーちゃんだけじゃなくてゼクト君も絡んでくるのよ」
「サカナもですカ?」
「ほら、言っちゃえばさ。きーちゃんを引き渡せば学校の評価は上がる。逆に言えば学校はそれほどの逸材を手放すことになる。理事長は言ったのよね。この事を隠してきーちゃんを我が学園に置いておいた方がいいんじゃないかってね」
確かに。その理屈は理解できる。手放すことにより利益もあれば不利益もある。天秤にかけられてどちらに傾くかがまだわからないってところか。
「でもそれには障害があるのよ。言っちゃえばきーちゃん、超が付くほど成績不良なのよね」
「そうなんですか? あ、別にバカにしたわけじゃないんですヨ。」
「いいよ。僕の立ち位置は滅茶苦茶ピーキーなのは自覚してるから」
「きーちゃん三立の知識はあるの。座学においてこの学園でも右に出る者はいないほどのね。ただし実践力が皆無。言うなれば野球の審判やコーチとしては優秀だけど選手としてはからっきしってこと。生徒としては置きづらいってのが理事長の意見らしいの。だから、一つの試験を行うって理事長は言ってたわ」
「試験?」
「そう、試験。きーちゃんの今後を左右する超重要な試験」
静吉は立ち上がり、左手右手両方を使って、それぞれ咲人とゼクトを指差す。何その謎ポーズ。
「君たち二人が手を組んで『プログラム』で闘い、勝利を収めること。これが君たちの試験、優秀であることの証明よ」
プログラム。プログラムと来たか。確かに。プログラムならどれだけ三立を理解し、そして行使できるか。ただ知識だけでなく応用力や実践力も試される絶好のシチュエーションだ。
「プログラム? 何ですかそれ」
「それについては追々話す。それより、何でこの子も一緒なんだ? 僕だけじゃダメなの? と言うより優秀であることの証明ってことは……誰かと闘争するってことだろ? 誰が相手だ?」
「理事長殿は召喚した本人だけじゃなくて召喚された彼女も特別視してる。ゼクト君も力次第ではこの件に関して全面的にバックアップしてくれるとのこと。対戦相手はそれこそとびっきり優秀なのを用意したとのことよ」
「だから誰だ?」
「まあ慌てないでよ。形式は2対2で、もちろん一人はこのウチ、口鬼静。そしてもう一人は」
一人は……静吉か。これは確かに……優秀でなくちゃ勝つことはできないな。
二人目を静吉が言おうとすると何ともまあ良いタイミングで校内放送。まるで狙ったかのようにとある女生徒の声が学内に響き渡る。
『あーあーマイテステス。主人公。今すぐプログラムに来なさい。待っている人がいます。来ないと泣くそうなので早く来てください。さもないと泣きます。この放送は上噛神子に頼まれた一生徒の放送です』
ブツリ、と放送は切れる。
放送の内容は……何ともまあ情けないような喧嘩腰なような間の抜けたものだった。放送している時に沈黙していた食道内だけど、またしてもいつも通り昼休みの喧騒に戻る。
隣で買ってきた学食を頬張るゼクト。にやにやと悪い笑みを零す静吉。物が言えない僕。
「二人目は、理解したわね」
「あいつも大概バカだな」




