第5話「シニアたちの逆襲」
【冒頭:地域イベント会場・朝】
駅前のホールには、地域のブースがずらりと並び、家族連れや学生の姿もちらほら。
その一角、「やすらぎ荘投資ファンド体験ブース」は、他にない異彩を放っていた。
紅白幕の下、テーブルには手作り資料や模造紙、そしてなぜか名倉お手製の“カレー味ポップコーン”。
誠:「……場違い感すごくないですか」
春香:「大丈夫です、今のところ、浮いてますけど」
老人たちは真剣な顔で準備中。小倉が資料を再チェックし、山根は練習の台詞をブツブツ唱えている。
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【中盤:プレゼン開始】
司会者が「やすらぎ荘投資クラブの皆さんです!」と紹介。
トップバッターは中西。
中西:「……我々は、人生経験という“時価総額”を持っております」
客席から笑いと拍手。
続いてトミ、山根、小倉が次々に「自分の選んだ銘柄」と「理由」を熱く語る。
・トミ:「年寄りはね、金を使わないと思われがち。でも、健康のためなら財布は開くのよ」
・山根:「オレは“夢”で失敗したが、今度は“人間”に賭ける。ゲーム企業の“人材戦略”を信じる!」
・小倉:「株は生き物です。人と同じで、浮き沈みの中に規則性があります」
真剣で、ちょっと変で、でも心に残る発表。
会場には笑いと感嘆が混ざった拍手が広がる。
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【後半:ブースに人だかり】
講演後、やすらぎファンドブースに若者や親子連れが次々訪れる。
「おじいちゃんたち、かっこいい!」「なんか元気出た!」
「うちの祖母にも投資勧めてみようかな」
誠と春香が対応に追われながら、嬉しそうに目を合わせる。
そのとき、背後から声がかかる。
「いやあ、立派なもんだ」
自治会長・大竹が現れ、誠に頭を下げる。
大竹:「佐藤くん、正直、最初は“どうせ続かん”と思ってた。でも見てごらん、みんな生きてる顔してる」
誠:「……ありがとうございます。でも、僕より皆さんがすごいんです」
大竹:「その“すごさ”を引き出したのが君だろ」
大竹はポンと誠の肩を叩き、名倉のポップコーンを一つつまんで「しょっぱ……うまい」と呟いた。
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【ラスト:やすらぎ荘・夜】
イベント後のやすらぎ荘。老人たちは疲れながらも満足げに談笑している。
名倉が夕食の鍋を運びながら一言。
「今日はカレー鍋。刺激的な一日には、刺激的な締めが必要だろ」
誠がふとつぶやく。
「なんか……みんな、投資家の顔してきましたね」
春香が微笑んで応じる。
「佐藤さんも、ですね」
──次回へ続く。