第4話「やすらぎファンド爆誕!」
【冒頭:しらぎく信金・支店内】
朝のミーティング。誠が報告書を提出している。堀内支店長が斜めに笑う。
「ほう、“高齢者の投資体験が前向きな結果に”?……ずいぶん楽観的な書き方だな」
「はい、損はしましたが、それ以上に反応が良かったので……」
「フーン。じゃあ今度は、君の責任で“儲けさせる”番だな」
堀内は書類をパタンと閉じ、椅子を回転させる。
「……失敗したら、君の評価にも関わると思っとけ」
誠、無言で一礼。
***
【やすらぎ荘・ロビー】
前回の損失騒ぎがウソのように、老人たちは元気だ。
「よし、次こそは銘柄ちゃんと選ぶぞ」と山根。 「もう“夢”には投資しない」と笑う。
中西が将棋を指しながら、「わしらで“ファンド”作ったらどうだ?」と口にする。
「“やすらぎファンド”だ!」とトミが受けて立つ。
誠、ふと掲示板の「地域イベント 出展者募集」の紙を見る。
「……それ、出してみます?」
一同、「面白いな」とうなずく。
***
【中盤:作戦会議】
会議室代わりの食堂に老人たちが集合。ホワイトボードに「やすらぎファンド戦略会議」
それぞれが投資テーマを出し合う:
・山根:未来のギャンブル(eスポーツ系) 「若いやつらが金使うのはここや!ゲーミングチェアから株価が動く時代や!」
・トミ:高齢化社会(介護・薬) 「自分たちの世代が主役になる業界ってのは、堅い。あたしら、未来のヘビーユーザーだよ」
・中西:国際分散投資 「為替リスクもあるが、リスクヘッジは複数通貨で。インドとベトナムに注目してる」
・小倉:女性向け金融商品 「女性が自分で資産を管理する時代。実用性とデザイン性の両立がキーワードです」
誠は必死にホワイトボードに書き留めながら感心している。
そこへ名倉がカレーの鍋を抱えて乱入。
「ファンド名は“カレーの恩返し”でどうだ?」
「名倉さん、それ完全に著作権ひっかかります」
「じゃ、“スパイスファンド”。人生の味は一つじゃない」
みんな爆笑。
しかし次の瞬間、名倉が真顔で鍋を置く。
「……でもよ、スパイスってのはな、調和が命。足しすぎてもバラけるし、抜けば薄まる。個性を活かしながら、まとめる……それが、ブレンドの妙だ」
全員が静かになる。
「ファンドも同じだろ?バラバラな銘柄でも、意図と比率で“味”が決まる。俺はそう思うね」
誠が感嘆の声を漏らす。「名倉さん、それ、金融研修で話してもらいたいくらいです……」
名倉は「じゃ、ギャラはビリヤニで」と笑う。
***
【後半:プレゼン準備】
イベントに向けて、施設内で模擬プレゼンの練習。
中西が緊張してどもる。「こ、これは、グ、グローバルな……そ、それで……」
山根が勝手に早口で喋り出す。「要するにだな、今は株よりゲーム、ゲームより課金だ!」
小倉が完璧すぎて逆に無表情で怖い。「本商品はPBRとIR観点に基づき……」
トミは声が通るが内容がざっくり。「とにかくね、高齢化はチャンスだってこと」
春香が発表練習を見て一言。 「皆さん、自分の言葉で話した方が伝わりますよ」
誠が、小さな模造紙を一枚ずつ配る。 「皆さん、自分の“なぜこの銘柄を選んだか”を、短く書いてみてください」
全員、真剣な表情でペンを握る。
春香が誠に近づいて、そっと言う。 「……すごいですね。佐藤さん、皆さんにすっかり好かれてますね」
「え?そうですか?」
「ええ。なんか、ちょっと妬けます」
誠、目を丸くして春香を見るが、彼女はにっこりとだけ笑って去っていく。
***
【ラスト:夕方、やすらぎ荘の外】
誠が施設を出ると、空に夕焼けが広がっている。
隣にいた春香がぼそっとつぶやく。
「すごいなあ……最初、誰も興味なかったのに」
「ですね。でも、なんか今日、“本気の目”してましたよね、皆さん」
「……佐藤さんもね」
誠、少し驚いて春香を見るが、彼女はもう前を向いて歩いている。
──次回へ続く。




