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生まれ変わったら『悪役令嬢』でした。  作者: 黒い猫
第四章 お茶会にて
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第2話


 そうして乗り込んだのだけど……。


「……」


 私も前世の小さい頃は「馬車に乗ったお姫様」に憧れたどこにでもいる女の子だった。でも、子供だった故に気がつかなかった事もある。


 いや、体験する事がなかった故に全く知らなかった。


 ――まさか、馬車の乗り心地が最悪で……こっ、ここまで痛いだなんて!


 思い返してみると、この世界の道は前世の様なデコボコもない綺麗なコンクリートの舗装されている道ではなかった。


 それは屋敷の前に広がっている道を見ればよく分かる。


 しかし、頭では分かっていても、実際に体験してみると想像以上に座っている部分に来る衝撃が凄い。

 多分、馬車を運転してくれている人は出来る限り衝撃がないようにしてくれているのだろうが、それでも痛いモノは痛い。


 ――前世はとても快適で便利だったのね。


 こういった場面に出会う度につくづくそう思う。


 この世界には『魔法』はあるものの、電気も車もない。移動手段は基本的に馬車しかなく、電車なんてモノも走っていない。

 しかも、この『魔法』を誰にでも日常的に使える様に「魔法道具」として流通させている。

 そしてこの「魔法道具」がこの世界の人々の生活に根付いているために、電気もガスもこの世界の人々には必要なかったのかも知れない


 ――あの時は「この世界に行きたい」とか「行ってみたい」なんて思っていたけれど。


 いざ来てみると、それが「ないものねだり」だったという事に気付かされ、今ではあの時の快適さが無性に恋しくなる。


「どうした、カナリア」

「いえ、少し窓の景色が気になりまして」


 誤魔化す様にチラッと外を見ると、たくさんの人が行き交っているのが目に入った。


「ああ、ここの近くに市場があるらしいな」

「市場……ですか」

「ああ。今度行ってみると良い」

「え、良いんですか?」


 そう言いつつパッと顔を向けると、父は「ああ」と穏やかに笑う。


 ――うっ! なんと言うイケメンスマイル!


 前もって行っておくが、私は決して枯れ専でもなければおじさん好きでもない。それでも私は「イケメン」に弱い。


 ――自分のあっ、兄と話す時も直視出来ないというのに!


 内心「もったいない!」と思いつつ、どことなく「直視してはいけない!」と本能が言っている様に思う。


 ――それこそ、たまに危機感を感じるほどだし。


 しかし、私としても「このままではいけない」と思っている。


 ――たまに、申し訳なさそうな顔をする事があるし。


「そう言えば、アルカから聞いたのだが……」

「はい?」


 別の事に気を取られてしまい、私は思わず声が裏返ってしまった。


「いや、自分と話をする時、あまり顔を合わせてくれないと言っていたと思ってな」

「え! あ、それは……」


 そう、私がそんな態度を取ってしまったが故に兄に誤解を与えてしまっていた事を既にディーンから教えてもらっていた。


 ――うぅ、本当に申し訳ない。


 たった今、その事を考えていた事もあり、私はさらに申し訳ない気持ちになる。


「無理に……とは言わないが、何かあったのか?」

「いえ! お兄様は何も悪くないんです。ただ……」


 ここまで言ってふと考えた。


「ただ?」


 ちょうどそこで言葉を句切ってしまったがために、父は興味深そうにこちらの方を見ている……いや、視線がそう言っている。


 ――と言うか。あれ、このまま「兄が格好良すぎて直視出来ない!」なんて……言いにくくない?


 でも、すぐに「でも、このくらいの年の女の子なら」とも取られるかも……と考えた私は意を決して……。


「おっ、お兄様が格好良すぎて顔を見て話せないんです!」


 私としては、サラリと言うつもりだったけれど、どうやら恥ずかしさも相まって思っていた以上に大きな声になってしまっていたという事を……父親の驚いた顔を見てようやく気がついた。


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