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生まれ変わったら『悪役令嬢』でした。  作者: 黒い猫
第四章 お茶会にて
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第1話


 そうして迎えた当日――。


「おっ、おはようございます。お父様」


 緊張した面持ちで玄関に向かうと、先に準備を終えた父が待っていた。


「ああ、おはよう。よく眠れたか」


 普通であれば、ここでは「はい」と元気よく答えるか、待たせてしまった事に対する謝罪などをするべきだろう。


「あ、はっ――」


 私は父の問いかけに答えようとしたところで……。


「……いや、眠れていないな。クマが出来ている」


 しかし、あまりにも眠れなかったため、メイにホットミルクをもらっても私の頭には「どっ、どうしよう」という不安な気持ちから色々なシチュエーションが過ぎってしまい、なかなか寝付けなかった。


「すっ、すみません」


 私は顔を真っ赤にして思わず下を向いたのだが、父はそれでも覗き込む様に私の顔を見る。


 ――ちっ、近い!


 騎士団長であるアリウスはゲームの中で名前だけが出ていただけだった。しかし「さすが『悪役令嬢』の親族」と言うべきか。


 かなり整った容姿をしている上にその役職故に体格も良く、二児の父とは思えないほど若々しい。


 いや「二児」と言う表現も少し違う。


 なぜなら、兄であるアルカは既に父に代わって領地を治めている。確かに、まだ若いかも知れないが、子供ではないだろう。


 ――お兄様曰く、今でもモテモテみたい。


 ただ、アリウス本人は「妻以外の人間を娶るつもりはない」と周囲に断言し、余程の理由がなければ夜会にすら行く事がないそうだ。


 ――そもそも忙しすぎてそんな余裕がないとも言えるんだけど。


 その代わりにアルカが行くのだが、父の若い頃にソックリなため、夜会に帰る度に疲れ切っている姿をよく見かける。


 ――私に気がつくと、そんな姿を隠して笑顔を見せてくれるけど。


 でも、父の事も兄の事も幼いながらに心配ではある。


 ――確かに、五歳の女の子に出来る事なんてあまりないかも知れないけれど。


 父の勤め先でもある『騎士団』は「魔物も攻められる心配がない」と今は言われているが、だからと言って何もしないワケにもいかない。

 それこそ「備えあれば憂いなし」とはよく言ったモノで、万が一に備える事は大事な事だ。


 ――それに、一応名前では「騎士団」ってなっているけど。私の想像している「騎士団」とはちょっと違うみたいなのよね。


 それはここ最近習った事なのだが、実はこの国の「騎士団」は大きく分けて「魔法専門」と「体術専門」の二つに分かれており、文字通りこの二つは攻撃や防御に優れた主に後方支援をする「魔法」と剣や盾などを扱う肉体派が集まるのが「体術」となっているらしい。


 ――そして、お父様はその二つをとりまとめる団長……と。


 巷では「この二つは実は『貴族』と『平民』が分けられている」と言われている。


 そして、その話から「平民に体を張らせて貴族は逃げている」なんて言われているが、そもそも「魔法が使えるのは一部の例外を除いて貴族のみ」とされているため、役割分担としてはどうしてもそうせざる負えないだけなのだが。


 ――それに、平民でも魔法の才能が確認されれば貴族の養子として取られるみたいだし。


 しかし、何かと衝突も多いのは事実である。


 そんな毎日の大変な中でさらに色々と問題を起こす娘は……最初でこそフォローをしても、限度と言うモノがあるだろう。


――散々フォローしてもらっておきながら改める気がなければ最終的に勘当されても仕方ないわね。


 父からしてみれば、カナリアはとても可愛い娘だ。それ故に出来る限りの事をしたかったのだろう。


 ――それは理解出来るけど、だからって咎めようともしないやり方は褒められないけどね。


 ここに来たばかりは父や兄の態度から「責任逃れ」とか「面倒だったから」と思っていた。

 しかし、ここで過ごして色々な人から話を聞いていく内にそれは「カナリアの力になりたかったが故の行動」だと分かった。


 ――今のお父様の耳に、私はどんな風に伝わっているのかしらね。


 ここ最近、私はお茶会でのマナーをもう一度基礎から学び直した。


 家庭教師の先生からは「既に完璧ですよ」と言われていたが、準備を入念にしておいて損はないだろうと言う私自身判断で頼み込んだ。


「カナリア?」

「!」


 声をかけられ、私は思わずハッとした。


「どうした、体調が悪いのなら……」

「いっ、いえ! その、ちょっと緊張しちゃって、その……王宮でのお茶会ですし」


 私が自信なさげに俯きながら答えると。


「大丈夫だ。家庭教師からもマナーなど完璧だと聞いている。私も一緒に行くが、楽しむと良い」


 そう言って優しく笑いかけつつ手を差し出す。


「はっ、はい」


 ――くっ! かっこいい。


 差し出された手を握る。


「もし、カナリアを傷つけるような事を言われたりされたりしたらすぐに言うんだよ?」

「え?」


 私がキョトンと父の言葉に首をかしげると……。


「大丈夫だ。カナリアはただ楽しむだけで良い」


 父にそう言われ、私は「はい」と答えてそのまま共に馬車に乗り込む。


 ――今、なんか物騒な事を言われた様な?


 そう思ったが、あまり深く考えない事にした。


 世の中きっと、知りすぎない方が良い事もきっとあるのだろう。私はそう自分に言い聞かせ、馬車はそのまま王宮へと向けて走り出した――。


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