表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/99

27話 蜥蜴男の営む老舗床屋でクラシック散髪、髭剃り、極上シェービング 〜それを見つめるもの〜【1】


【木こり:薬草の翁】



 ハッハッハッハ!

 今日も採れた採れた。


 リヤカー山盛りの薬草にワシは恵比寿顔。

 今日だけで最寄り町の冒険者ショップに収めているノルマは確定。

 最近では、中央でも「オキナブランド」の薬草は評判で広告やらスポンサーやらの収入でウハウハ。

 全くもって笑いが止まらんわい。

 これも全て、愛しい愛しいワシの娘のおかげじゃ。

 初めて、娘に会ったのはいつだったか。

 もう随分と昔のような気もする。



 ◇◆◇◆◇◆◇



 かつてワシは、名も無い木こりじゃった。

 日々家からほど近い山に入って、木や山菜をとって日銭を稼ぐ日々。

 それで金が儲かるなら少しは生活にハリが出るというものだが、はっきり言ってジジイ一人が採れる草木なんてたかが知れておる。

 木こりとしての稼ぎは、ヒヨコバードの涙。

 洗濯のパートをしている婆さんの稼ぎと合わせても我が家は二人が食っていくのがやっとという状態で、未来に希望が持てずに、鬱屈して荒らし行為などに勤しんでいたどうしようもない日常。


 そんな最中。

 ふと山の中でワシは出会った。


 その赤ん坊は、大木の切り株に薬草の葉に包まれて置かれていた。

 抱き上げると、泣き声と共に体を覆っていた薬草が光り輝く。

 赤ん坊と共に持ち帰って試食してみると、驚くべきことに体力が全快。

 さらに分析してもらったところ、攻撃・守備諸々のバフが付くという、ぶっ壊れアイテムだったのだ。

 その光り輝く薬草は信じられないような高値で買い取られた。


 これも偶然見つけた赤ん坊のおかげ、これも何かの縁だろうとワシらは赤ん坊を引き取って育てることにした。

 ある日、赤ん坊をおぶって山に入っていたワシ。



「やれやれ、この歳になって子育てをすることになるとは思わんかったわい」



 なんて言いつつも、ちらっと振り返ると赤ん坊のぷにぷに顔があって、ほほほ可愛いの~、なんて目尻を下げていると、



「あば、あば」



 赤ん坊が、バタバタと暴れている。

 おしめか、ミルクか?

 いや、赤ん坊が指さした方を見ると、そこはワシが赤ん坊を拾った切り株。

 その周りに、例の眩く発光する薬草が一面に広がっておった。



 そこからのことは自伝「光の薬草~わが人生~」に詳しく書かれているので、要約して話すとするが、マジでワシの人生は180度変わった。

 光り輝く薬草、通称:光の薬草は、市場を席巻。

 全国から注文が殺到し、バアさんもパートを辞めて薬草の収穫を手伝うようになった。

 寝る間も惜しんで働いたが、それでも間に合わず、従業員を増員。

 さらに機械化も進め、莫大な量の薬草を収穫できるようになった。


 そこまでしてもまだ光の薬草は、汲めども尽きぬ泉のように次々と生えてきて、ワシからすれば金がニョキニョキ顔を出してきているようで笑いが止まらん。

 これも全て、赤ん坊のおかげ。

 ワシとバアさんは、赤子にクサナギという名をつけ。

 大切に大切に育てた。


 彼女を大切にすればするほど、山に光の薬草が溢れた。

 注文は雪崩のごとく止まらない。


 ワシは、光の薬草を「オキナブランドの光の薬草」として売り込みやマーケティングをかけ市場を席巻。

 かつて、


「けっ、なんやじいさんまた薬草を売りに来たんかいな!」「相変わらず、アンタのところは出来が悪りぃなぁ。仕方ねぇ、ほらよ。あん? 買取金額が少なすぎるって? 馬鹿野郎! こっちは、食ったところでHPが減りそうなマズい薬草を仕入れてやるってんだ! 逆に金払って欲しいくらいだぜ! これ以上グチグチ言うってんなら、テメェ、拳を支払ってやってもいいんだぞ!? 俺は元冒険者だ!」



 なんてイキってたアイテム仲介業者の連中が、ワシの薬草が売れ始めた途端。



「いよっ、社長! いつもお世話になってます! はい、これ! 今回の買取金額で! いつもより増額しておきましたさかい。いやいや、なに言ってまんねん。オキナブランドの薬草のおかげで、こっちも儲けさせてもらってますわ。ほんまおおきに!」「それで、社長。ボディガードがいるときは言ってださいよ? いつでも駆けつけますから! なんたって俺は元冒険者……え? なんスこれ、え? チップ? いやぁ、さっすが社長太っ腹! どっかのHPが減りそうな薬草売りつけてくるケチなジジイとはわけが違う……あ、これ前の社長のことでしたっけ? あ、嘘嘘サーセン! チップ没収しないでください! 取り消しますから、チップあざーっす、あざーっす!」



 とまぁ、手のひら返しも甚だしい感じでヘコヘコしてくるもんだから、ざまぁ。

 散々、ワシを見下しおって。

 前に馬鹿にしていた連中の年収を今は瞬きするスピードでワシは稼ぎ出すことができる。


 こうしている間にも、金が湯水のようにワシの懐に。

 おかげで、見ろワシの服を。

 そんじょそこらの貴族でも着ることができないような仕立てじゃ。

 家も新築して、大きな城を立てた。

 メイド、庭師、コックもたくさん雇っている。

 各地に別荘も。

 そしてバアさんには内緒だが、愛人も……。


 これも全て、光の薬草のひいてはワシの自慢の娘、クサナギのおかげじゃ。



 だが、最近どうも気がかりなことが……。



【続く】


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ