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黄金のアテナ  作者: 綾波幻在
14/14

傷痕の■

あの後、手頃な革星機関(ディフェクトライン)のメンバーの一人を捉えて引っ張った後、尋問を手慣れているであろう元刑事のクルエに任せ、生徒一同は事務所で集っていた。ちなみにセラは事務所のソファに寝かせている。

「と言う訳、みんな、一旦はお疲れ様ぁ」

と、ステラが言うが、一同はじとーっとステラを見ていた。

「・・・えーっと、何?」

「お前、向こうの委員長と知り合いみたいだな」

「ぎくー・・・」

篝に指摘されてステラは気まずそうに視線を逸らした。

「向こうの委員長を呼んだのは先輩なんですか?」

ロロにそれを言われて、ステラは気まずそうに頭を掻いた。

「いやぁ、実はここ数年ずっと会ってないし連絡も取ってないから、向こうから来たんだと思う・・・」

「まあ、でなきゃあんな反応にはならねえか・・・まあいい。とりあえず今は集まった情報の整理に入ろう」

そうして、篝たちはロロの方を見る。

そこではパソコンに向かって凄まじい勢いでキーボードを叩くロロがいた。

「先ほど、シン委員長から言われた『傷跡(スカー)』という人物について、警察のデータベースから探してみたんですけど」

「うん何か聞いちゃいけない事聞いた気がするから無視するねぇ」

革星機関(ディフェクトライン)幹部の一人であり本名は不明。その見た目から『傷跡(スカー)』の通称で呼ばれ、彼女の行う全てが凄惨な血の道となるからも、そう呼ばれているようです」

「まさに傷痕(きずあと)って訳か。なんでそんな危険な奴がこんな所に・・・」

「そいつの強さとか分かるか?」

篝がロロに尋ねれば、ロロがすぐさま検索をかける。

「・・・少なくとも、並大抵の相手ではありません。警察でも、警察官が何人も殺害されているようです」

「なるほどな・・・・」

「篝くん、まさか戦おうとしてないよね?」

「避けられなくなったらな」

釘を刺そうとしてくるステラに篝はそう返し、考え事に耽る。

「幹部クラスまで出てくるなんて・・・私たちだけでは、もう・・・」

「そうだね・・・」

状況の悪さに、ノリアが暗そうな表情を浮かべ、ステラが険しい表情を見せる。

傍観するしかなかったユウゴには何も言えず、篝もまた状況の前に閉口せざるを得ない。

そこでクルエが戻ってくる。

「先生・・・!」

「セラの様子はどうだ?」

「まだ目覚めない」

「そうか・・・」

「尋問はもう終わったのか?」

「ああ・・・といってもまともな事は言わないからな。ある程度情報を私なりに繋げてみた」

「情報?」

クルエが事務所の椅子の一つに座り、話し始める。

「奴らの狙いは、ここクローラルに存在するリコレクトリンカーらしい」

「リコレクトリンカー?」

「その正体までは分からなかったが、その起動に大量の生贄が必要になる、らしい」

「そこまでって、どんだけ強力なリンカーなんだよ・・・!?」

「そこまでは分からん。だが、阻止しなければクローラル、ひいてはこのプトレマイオスの一角が破壊されるかもしれない」

「そうなりゃまさに大惨事。俺たちだけでなく、ここで暮らしてる奴らが軒並み殺される」

全員が頭を悩ませる。

「敵が拠点にしている場所は分かったか?」

「そこは無理だな。話が通じない」

「だろうな・・・聞き込みしようにも、リミットがいつまで近付いていることか・・・」

そこまで言いかけて、篝は考える。

「・・・・頭下げるか」

「「「え?」」」

突然、変な事を言い出した篝に、事務所一同、ぽかんとする。

「いや、ああ言った癖にあれだが秩序委員会の連中に頭下げようかなって」

「いやそこは大人を頼れ!?」

「警察は信用ならん。現にあんたがやめてる」

「ぬぐ・・・」

一旦、沈黙する一同。

「・・・・ちなみに、手助けしてくれそうな奴に心当たりは?」

篝がそう尋ねると、

「今更実家に助けを求めるのは・・・」

ノリアが苦笑いをする。

「過去の依頼人に頼むのも・・・」

ロロが申し訳なさそうに項垂れる。

「男街の奴らは・・・論外だな」

ユウゴが頭を掻いてそうぼやく。

「・・・・」

繋がりが、無い。

ここに来て閉鎖的な活動が裏目に出てしまう。

「せめて、敵の目的が分かれば・・・」

「・・・待て」

ノリアがそう呟いた所で、篝は思い出す。

「ここの図書室か資料室は?」

「「「・・・・」」」

そもそも、ここは旧クローラル学園。であるならば、クローラル関連の資料がまだあるかもしれない。

その無言の答え合わせをするべく、視線がクルエとステラに集まる。

対して答えたのはステラ。

「うん、全部あるよ」

爽やかな笑顔だった。

「よぉし今すぐ行ってくる!お前らは休んでてくれ!」

「あ、私も行きます!」

「私も!」

ユウゴ、ロロ、ノリアの三人が元気よく事務所を飛び出した。

「やれやれ、アスカの忘れ形見がこうして役に立つとは」

そんな三人を見て、困ったような顔をするクルエ。だが、ラーズはふと出てきた知らない名前に反応する。

「アスカ?」

「ああ、そう言えば、お前は知らなかったな」

「もしかして、例の生徒会長のことですか?」

「そういや俺も名前までは知らなかったな・・・みんな辺り前見たいに語るから、すっかり名前聞きそびれてたな」

「まあ、篝くんの場合はずっとアイリスさんの所で修行三昧だったからね」

「人を修行が趣味の修行オタクみたいに言うな」

閑話休題。話を戻してステラが懐かしむ様に話し出す。

「アスカ・フォルネエロ先輩。まだここがクローラル学園と呼ばれてた時の最後の生徒会長だよ」

「最後の・・・」

「うん、もうほとんど転校していっちゃって、残ってた生徒は、私と飛鳥先輩、そしてゼファー先輩含めたほんの数人だけ。教師もほとんどどっか行っちゃって、校長ですらいなくなっちゃっててさぁ。いやぁ、本当にあの時は参ったよ」

「ついでにここも過疎化状態・・・よく復興させようと思ったよな」

「最後までなんとかしたいって言うのが、アスカ先輩の方針だったからね」

「何か、写真とかはないのですか?ラーズも知りたいです」

「え」

何気ない質問だったはずなのに、何故かステラの反応は芳しくなかった。

「え?何が?」

「どうした?写真ぐらいいくらでも取っていただろう?」

「・・・・・えっとぉ・・・・」

ステラが非常に気まずそうに顔を逸らし始めた。

「・・・・先輩、まさか写真全部ねえのか?」

「・・・・・・・い、一枚だけ」

「「「一枚だけ?」」」

ステラは取り出す。一枚の写真を。

まるで断腸の思いとでもいうかのような表情で取り出したその一枚の写真を、篝は受け取って見てみる。その両脇から、ラーズとクルエものぞく。

そこに映っているのは、どこか知った顔の小さな少女二人と、年上の少女二人の四人が写った写真だった。

前に立つ小柄な少女たち。片方はまるでうんざりしたような目つきの悪いピンク髪の短髪の少女。その隣には快活に笑う白髪の制帽を被った少女。

後ろ側では、ピンク髪の少女の後ろに、苦笑いをしている薄い水色の長髪の少女。その隣には黒髪で規律正しく立つ黒髪の少女が立っていた。

「・・・・誰?」

篝は自分の目を疑った。

「いや、待て。分かるぞ。でも誰だ。このいつかだらけて居眠り常習犯になる間抜け面のアホ毛女の隠された過去が如きクソガキは!?」

「篝くんそれ以上言ったら流石に空の彼方まで吹き飛ばすよ?」

「いえ、篝さんの言う通りです。いつも怠けて眠っているアホ面先輩の過去の姿が真面目をはき違えた何かで煮詰めた汁を飲んだような少女だなんて、そんなのステラさんではありません」


げんこつ。


「失礼だな!私にだってやんちゃしてた時ぐらいあるよ!」

「「はい、すみません・・・」」

「やれやれ・・・昔のこいつが尖りに尖っていたのは私が保障する。何しろよくこいつが起こす騒ぎにいつも私が駆り出されていたからな」

「先生、私の黒歴史掘り起こすのやめてくれません?」

「そんなことより、ステラ、これいつとった写真だ?私の記憶にある限り、こっちの娘は見た事ないんだが・・・」

クルエが指差すのはステラと思われるピンク髪の少女の後ろに立つ水色髪の少女。

「その人がアスカ先輩ですよ」

「は?」

「え、その人って男なんじゃ・・・」

「女装してるんだよ。この写真を撮るために」

三人は今一度写真を見る。

「・・・・確かに女装だな」

篝はそう言った。

「え、分かるのか?」

「よく見ると厚化粧、あと、目元や頬の形変えてんな・・・テープか?」

「写真でなければ解析も通るんですが・・・」

「も、もういいでしょ!」

ステラが写真を奪い取った。

「これは先輩の名誉の為に隠しておかなきゃいけないの!」

「隠さなきゃいけないのは女装してるって事だろ。おおかた、持ち歩くのに男が写ってる写真は何かと面倒だから、気を遣われて女装してきたって所だろ」

図星なのか、ステラが顔を逸らした。

「も、もうこの話はおしまい!さ!ユウゴくんたちを手伝うよ!」

そうしてずっかずっかとわざとらしく足音を立てながら、事務所を出ていくステラ。

それを苦笑いをするクルエと呆れた様子の篝ときょとんとしているラーズが見送る。

「やれやれ、ああして怒る所は変わっていないな」

「昔はそんなに凄かったのか?」

「ああ、今はああして安楽椅子所長となっているが、昔はバリバリの行動派で、敵対した相手の所に殴りこんでは縦横無尽に飛び回って潰し回ってたぐらいだ」

「戦闘種族か何かか」

どうやら篝とラーズは想像できない様子だ。

「まあ、あの頃のあいつは知らない方が良い。良くも悪くも、黒歴史に等しいからな」

「チッ、弄り倒してやろうと思ったのに」

「やめろ、意地の悪い」

そこでふとソファの方で呻き声が聞こえた。セラの目が覚めたのだ。

「俺たちが見てる。先生はユウゴたちを手伝ってくれ」

「分かった」

クルエが事務所を出ていく。それを見送って、篝は呻くセラの元へ向かう。

「よう」

「大丈夫ですか?」

「ぅぁ・・・あんた・・・・っ!?あいつは!?」

「もうとっくに帰ったよ。ったく、勝手に暴走しよってからに」

「そう・・・」

セラが胸を撫でおろしたように見えた。

「・・・・お前、あのイオってやつ知ってんのか?」

「・・・苗字は、シュピーゲルだった?」

「知ってたのか?」

「あのコードスキル、見た事あるの」

セラは片足を抱えて、ぽつりぽつりと語り出す。

「暴化・・・私の『狂化』と似たコードスキルだから、良く覚えてる」

「良く制御されてたよな。お前確か限界出力が二十パーセントだったけど、たぶんあっちは五十だな」

「みたいね。ただ、実際に見たのは別の人」

「別の人?」

セラは抱えた膝に顔をうずめながら、肩を震わせながら言う。

「・・・・地下闘技場。私のお母さんはそこの闘士だった」

「地下闘技場だぁ?そりゃまたとんでもねえ所にいたもんだなお前の母親」

「まあ、一応命のやり取りまではいかないレベルの所だったんだけどね。ただ、その地下闘技場、変わった所があって」

「変わったところ?」

「育てるの。闘士を闘技場が」

言われて、篝はふと考える。

「・・・・まさか、産ませてるのか(・・・・・・・)?」

「正解。私はそこで産まれたの(・・・・・・・・)

「そんな!?」

ラーズが目を見開いて声を挙げる。

「子供を戦わせているんですか!?」

「そう。そこで育った闘士が人工授精で子供を産んで育てて、そして育てた子供がまたその闘技場で戦う。そこはそういうシステムで回ってるの」

「どんだけ長期的育成計画型の闘技場だよふざけてんのか?」

「負けても殺されないだけマシ、十歳まで訓練させて、誕生日になったらデビューする。でも、私が十歳になる前に、その地下闘技場は見つかって潰された。理由は単純、男の闘士もいたから」

「まるで女だけなら黙認するとでも言いたげな理由ですね・・・」

「そ・・・でも、それでも死人が出ないわけじゃなかった。打ち所が悪くて死んじゃったり、逆にやり過ぎて後で死んじゃったり。私のお母さんがそうだった」

「・・・相手はまさか、イオ・シュピーゲルの母親か?」

「本当、察しが良くていやになる。お母さんも私と同じコードスキルを持ってて、あっちも似たようなコードスキルだったから、スキルダダ被りマッチってことで、結構盛り上がってた」

「見てたんだな」

「ええ、見てた。そして、お母さんが死んじゃう所を見た」

セラの声が震えていた。どうやら、その時の事を思い出しているようだ。

「嫌なら無理するな」

「はっ・・・はっ・・・ううん、大丈夫・・・」

「・・・それで、母親が死んだあと、お前はどうした?」

「施設に預けられた。けど、馴染めなくて、暴れてたところをステラ先輩にぶちのめされてクローラルに来た」

「めちゃくちゃざっくりと言ったな」

「こっから先は何の関係もない私の無駄話、今は必要ないでしょ」

そう言って、セラがソファから降りて立ち上がる。

「みんなどこに行ったの?」

「クソ野郎どもの目的探しに資料室に」

「資料室?」

「向かいながら話します」

「そう、それじゃあさっさと行きましょ」

セラが篝とラーズの間を通って事務所の出入口へと向かう。そんなセラの背中に篝は声をかけた。

「セラ」

「何よ」

「ここに来て良かったな」

「・・・・ふん」

セラはそっぽを向いて事務所を出ていった。それを、一度顔を見合わせた二人が追いかける。




クローラル学園旧校舎資料室にて。

「・・・で」

そこには、凄まじい量の資料冊子があった。

「一体どれだよ!?」

「これ、虱潰しに探さなきゃいけないんでしょうか・・・?」

「来ることは無かったが、ここまでとはな」

ユウゴが叫び、ロロが慄き、クルエが冷や汗を掻く。

資料室は、想像以上に広く、そしてぎっしりだった。棚という棚に今まで溜め込んできたであろう資料が敷き詰められ、それらがあろうことか読書スペースであろう机と椅子だけを

「先輩、いい加減に見えて綺麗好きだったんだけど、ここまで量が多かったなんて・・・」

「ここには良く来たんですか?」

「なんとか出来ないかなって良く入り浸ってたよぉ」

「・・・・」

ステラがノリアからの質問に答えつつ昔を懐かしんでいる傍らで、篝はその資料室を黙って見渡していた。

「ラーズなら、ゴライアスの機能で速読できますが・・・」

「じゃあそうするか?」

「全部引っ張り出すだけでも大変だけど、頑張るしかないね」

ラーズの提案に、ユウゴとノリアが頷き、他の面々も応じて動こうとしている中で、篝だけは一人資料室の奥へと足を進めていた。

(ラベルの並び、アスカ先輩の性格、この部屋の清潔具合、床の足跡、資料の傷み具合、棚の傷、この部屋全ての経年劣化・・・)

そうして視線を走らせていると、ふとある資料が目に付く。冊子のそれを一冊手に取り、開いて中身を見る。

ぺらり、ぺらりと一頁ずつめくっていく。それは手書きの資料だった。どこで調べたのか様々な伝承やリンカーに関しての情報が事細かく書かれている。

(おそらく経年劣化で限界寸前だった資料を、パソコンとか無いから手書きで書き写したものだな。しかも要点とか分かりやすくしてやがる・・・)

「篝、何してんだ?」

「何か見つけたんですか?」

そこへユウゴとラーズが来る。

「ああ、ちょっと待て・・・」

篝は、ページをめくる手を止めずに応じたが、ふとあるページでその手を止めた。

「・・・篝?」

「・・・見つけた」

そのページのとある文字列を、篝は指先でそっとなぞった。

「・・・『リブラ』」



「これ、先輩の字だ・・・」

その資料を見て、ステラはそう呟く。

「カテゴリーIXリンカー『リブラ』。ゾディアックシリーズと呼ばれるリンカーの一つですね」

ロロが資料を元にネットに上がっている情報から、そう呟く。

「ゾディアックシリーズ・・・全部で十二個存在するカテゴリーIXリンカーの一つ・・・」

十段階存在するリンカーのカテゴリーにおいて、カテゴリーIXは確認されている全てのリコレクトリンカーの最大地位に位置する。

最上位たるカテゴリーXは『机上の空論』と呼ばれる未知の領域に位置するものであり、あくまで理論上は存在するとして設定されているだけで、それ故にその存在は誰も確認していない。

だから、カテゴリーIXは文字通り、確認されているリンカーの中で最も強いと呼ばれているカテゴリー群なのである。

その危険度は、例えるのであれば『神域』と呼ばれており、とても人には扱えないレベルと言われている。

「そんなリンカーを起動する為に、大量の生贄が必要なのか?」

「そもそもが『神』と呼ばれるレベルのリンカーだ。たかだか人ひとりのエーテルで起動できるほど柔なものじゃない・・・その為、起動した例というものがそれこそ稀有だ」

クルエは冷や汗を掻いていた。

「まさか、ここクローラルにカテゴリーIXのリンカーが存在しているとは・・・!」

「発動すれば、一体どれほどの被害が・・・」

「それ以前に、あんなカス集団がそんなもの持ってるなんて信じらんないんだけど!?」

戦慄を隠せないクルエに、怯えるノリア、そして怒りを示すセラ。

「けど、これが本当に彼らの目的だとも限りません・・・もしかしたら、別の可能性も・・・」

「ロロ」

いつの間にか変身していた篝が、ラーズの能力『複製』で作ったドローンを用意して声をかける。

「こいつをここから南へ飛ばしてくれ」

「え、またなんで・・・」

「いいから。俺の予想が正しければ、おそらくそいつらはその進路上にいる」

「・・・・分かりました」

ロロは、自分のパソコンとそのドローンを同期させて飛ばす。そのまま篝に指示された通りにこの校舎から南に向かって移動させる。

しばらく、移動していくと―――

「「「あ」」」

見覚えのある集団が、南に向かって移動しているのが見えた。

革星機関(ディフェクトライン)!?」

「マジかビンゴじゃねえか!?」

「そのまま追っていけば、たぶん・・・」

そこでセラが立ち上がる。

「じゃあ今すぐ行きましょう!」

「待てセラ」

すぐさま事務所を飛び出そうとするセラを、クルエが止める。

「でも、早くしないと誘拐された人たちが・・・!」

「まだ準備が出来ていないのに突撃するのは愚策だ!それに私たちは戦闘をした後、疲労もある。敗北すれば元も子も無いんだぞ」

「くっ・・・」

クルエに諭され、セラは悔しそうに顔を歪ませる。

そんなセラの様子を見た後、篝が指示を出し始める。

「ロロはこのまま追跡して、敵の拠点を割り出しておいてくれ。ユウゴ、今日はお前はゼルメルトの所で寝泊まりしろ。あとのみんなは明日に備えて休んだ方が良い。出発は明日十時。それでいいか?」

「ああ、お前たちもそれでいいな?」

篝の提案に、クルエが頷いてみんなに確認を求めると、全員それに頷く。セラは渋々だった。

「良し、今日は解散だ。皆、明日に備えてくれ」

「よし、皆、明日頑張ろぉ」

「最後に気が抜けるからやめろ」

「理不尽だよぉ」





「はあ・・・」

「今日は随分と忙しい一日でしたね」

帰り道、バイクに跨って移動する篝とラーズ。

「全くだ。ここまで予想が当たると、いっそのこと外れて欲しいって思ってしまうよ」

「それはそうと、どうして敵の目的がピンポイントで分かったんですか?まるでわかってたみたいに・・・」

確かに今日の篝の勘は冴え過ぎている。手がかりもほとんど無い状態で、何故あそこまで予想して敵の目的を言い当てられたのか。

「別に、ありゃアスカって人のお陰だ」

「アスカさんの?」

「ああ、良く入り浸ってたっていったろ。しかも綺麗好きで几帳面。そうであるなら、もしここで事件が起こった時に備えて危険だと思う要素をピックアップして準備していると思ったんだ。それをステラが知っていなかったことは気になったが、たぶんそんな余裕が無かったんだろ。それと人を大量に誘拐する理由。これはたぶん、その分のエーテル量が必要だから。エーテルってのは、この万象全てに宿るエネルギー。まともに扱えるのは女ってだけで、男にだって大なり小なりエーテルを持っているのは当たり前だ。それで、奴らの目的が大量にエーテルを使う何かだと踏んでいたんだ。そこにクルエが得たリコレクトリンカーの情報・・・あとはまあ、諸々の状況証拠と勘で、リブラを見つけたって訳だ」

「・・・・」

ラーズは思う。この男が、一体自分が何を言っているのかをどこまで理解しているのか。

(篝さんは、人の意図に気付くのに非常に鋭い。今回の計画に対しても、計画者の顔も見ないで部下の動きで目的を判別した。理論だてて説明しているけれど、実際には対象の考えを読んで、どうやってじゃなく、どうしてそうしたのかを察知して計画を看破したんだ・・・)

思い返してみれば、逃げたジェスターを追った時も、すぐに場所を割り出してそこへ迷いなく突撃していた。

それは、きっとジェスターという人格の(さが)を見抜いたからではなかろうか。

「あなたは、一体・・・・」

「ん?何か言ったか?」

「いえ、ただ明日も頑張りましょうと言っただけです」

「おう、そうだな」

そうして二人は家に着く。

篝がバイクを置きに行っている間に、ラーズが先に家の中に入ろうとして、ふと扉の前に張り紙がしてあることに気付く。

「ん?」

それに気付いたラーズが、それを剥がす。それはトランプのカードだった。

「これは・・・・!?」

ラーズは、そのカードを見て、血相を変えて篝の元へと向かう。

「篝さん、篝さん!」

「ん?どうした?」

「これを・・・」

慌ててやってくるラーズが持っていたカードを受け取り、篝はそこに書かれている事を読んだ。

「・・・・」

篝は、外したイグニッションキーを再び差した

その星、調停者。故に―――

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